憧れのミロ
私は、ミロに恋い焦がれている。それもずっとだ。はじめて出会ったのは、スペインのバルセロナにあるミロの美術館である。
私は当時、大学生。就職が決まってからの夏休み。ひとり旅だ。
私は、昔から感受性が強くて精神的に弱いところがあった。いまからするとこの時も、心のどこかに不安と恐れがあったと思う。
これから社会に出ていく、難しい世界が待っている。そんな不安を忘れたかったのかもしれない。
ヨーロッパ横断の旅。そのはじめがスペインだった。一番長くいた国で、思いでも色々ある。
私は、マドリッドの思い出が一番鮮明にある。とある場所で、私はスペインの方と知り合った。生まれは、コロンビア。ラテン系のイケメンだった。
すぐに意気投合して、その方の家へ一週間ほど居候することになった。
そこでの生活はとても楽しかった。いろんな文化の違いがある。朝にシャワーを浴びるとか、陽気な音楽をかけながら踊って料理をしたり。
パーティーにもつれていってもらった。パーティーでは、あまり慣れていなかったので、いつもその方の近くにいた気がする。
そんな中、彼が休みの日に(いま思うと休んでくれた!?)私はミロの美術館に行きたいと言った。そしたら、つれていってくれた。
美術館の前になると、彼は1人で行ってきてという。何だか寂しい私だったが、彼も何度もいっているなら仕方がないと一人で行くこと。
美術館の前には、不思議なブリキの人形がある。あの天空の城ラピュタのロボットの頭のような感じ。片方目がでかくて、片方小さいやつ。
あれに似たブリキの人形をみてすごく心が和んだ。
そして、美術館に入っていくが、私はこの美術館では、細かいことはほとんど覚えていない。
ただひとつ覚えているのは、とある抽象画の絵をみたときに、スッと『このままでいいんだ』と感じて肩の荷が降りたように感じた。
なんか色々なものを背負っていた。しっかりしないと、いい会社にはいらないと、頑張らないと。なんかわからないけど、こんな感じの重荷が常にあったように思う。
私は、本当に心のそこからミロが好きになった。というか、恋に近いような感覚だった。私を解放してくれた。楽にしてくれた。自由にしてくれた。
因みに、僕にとってミロはイケメンだった(笑)
結局、顔かよ!って、顔も大事(笑)
でも、冗談抜きにして、絵によってこんなに人を変えてしまうなんて、素晴らしいと思う。
実は今日、ミロ展にいってきた。懐かしのミロ、いとしのミロ。
僕は、ミロ展を回って感じたことは、あの日の感動は、あのドカンとはいってきたあの感覚はなかった。
けれども、絵の前に立つと『難しく考えなくて良いんだよ』とほっとすることが出来た。
この絵は、意味も何もわからないけど、前に行くとスッと力が抜けた。リラックス。
こんな感じで、ひさびさにミロの作品と対面した。念願だったので、満足。
最後にビデオ放送があって、生の彼の声が聞けた。その声は、暖かく力強い声だった。