授業中、「能動的に」内職をする方法
◎進み過ぎた「予習」
私は今、職業訓練に通っている。
訓練期間は5か月間で、現在、最初の1ヶ月が終わったところだ。
内容としては経理事務の訓練で、授業は簿記の勉強が中心だ。
しかし、私は自分で家で勉強して、独学だけで簿記2級に合格してしまった。
授業ではまだ3級の内容をやっているのだが、私自身はもう1級の内容を学習している。
授業で教わるのはもう知っていることばかりなので、私としては退屈で仕方ない(まあ、自分のせいなんだけど)。
最初は、「職業訓練の授業についていけなくなったら困るから」と思って、予習のつもりで簿記の自習をしていた。
しかし、やっているうちにすっかりのめり込んでしまった。
単なる予習の域に収まらず、どんどん学習を進めてしまい、結局、授業で3級が終わる前に2級に受かってしまったわけだ。
ただ、簿記の講師や他のクラスメイトには2級に受かったことは言っていない。
変にクラスで浮きたくないし、自分から進んで言うようなことでもないと思うからだ。
だから、講師や他のクラスメイトたちは、私もまたこれから3級を受験するものと思っているはずだ。
どこかのタイミングでバレるかもしれないが、まあ、バレたらバレたで、その時はその時だ。
◎授業中に内職がしたくって
ところで、「授業中は退屈だ」という話を先ほど書いた。
1級の勉強をしている人間が3級の授業を受けているのだから、それも当然だ。
私としては、できることなら3級の授業を受けている時間を使って、1級の勉強がしたい。
要は「内職」がしたいわけだ。
しかし、そうは言ってもさすがに3級の授業をしている中、自分だけ1級のテキストを広げるわけにもいかない。
さて、どーしたものか?
そこで考え出したのが、アクティブリコールを活用した内職法だ。
前にも一度、上の記事で解説したことがあるが、アクティブリコールとは「能動的に思い出すこと」だ。
「能動的に」というところがポイントで、「受動的」であってはいけない。
たとえば、テキストをただ機械的に読み込んだり、重要だと思った個所にアンダーラインを引きまくったりするのは「受動的な学習」だ。
本人的には「勉強した気」になるが、あまり記憶には残らない。
こういった「受動的な学習」は脳に負荷がかからないので、せっかく情報をインプットしても、それが記憶として定着しないのだ。
インプットした情報を記憶として定着させるには、能動的にアウトプットすることが必要だ。
脳へ情報を取り込むばかりでなく、折に触れて脳から情報を取り出すことが重要なわけだ。
では、具体的にはどうするのか?
たとえば、「テキストで読んだ内容を誰かに説明してみる」とか、「学んだことを自分の言葉で要約する」とかが有効だ。
というのも、これらは「情報のインプット」というより「情報のアウトプット」だからだ。
普通は「情報を入れれば入れるほど賢くなる」と思うものだが、実際には「入れるだけ」より「適度に取り出す」ほうが知識は記憶に残る。
「あれ、どうだったっけな?」と感じるようなことを頑張って思い出そうとすることで、脳に適度な負荷がかかり、情報が記憶として刻まれるのだ。
アクティブリコール(能動的に思い出すこと)が学習に効果的であるということは、科学的な研究によって証明されている。
機械的に情報をインプットし続けるよりも、インプットした情報を折に触れて思い出すようにしたほうが、記憶の定着には効果的なのだ。
◎「受動的」に授業を受けるより、「能動的」に内職したい
ということで、前置きが長くなったが話を戻す。
アクティブリコールを活用した内職法についてだ。
さっきも言ったように、授業中に授業と関係ないテキストをおおっぴらに開くことはできない。
でも、できることなら授業の時間を使って「自分の勉強」を進めたい。
そういう時こそ、アクティブリコールを活用するのだ。
そもそも、アクティブリコールは情報のインプットではなくアウトプットなので、必ずしもテキストを必要としない。
重要なのは記憶を呼び起こすことであり、テキストを読み込むことではないからだ。
私がやっているやり方はこうだ。
まず、家にいる間に少しだけ準備をしておく。
1級のテキストの目次を開いて、授業で使うノートの中に復習したい章の見出しを書いていく。
たとえば、「有形固定資産」とか「有価証券」とか「デリバティブ取引」とか書いていくわけだ。
復習したい章の見出しをいくつか抜き出して書くだけなので、大した手間はかからない。
そして、授業が始まったらおもむろにそのノートを開く。
1級のテキストを開いているわけではなく、ただいつも授業で使っているノートを開いているだけなので、まったく不審なところはない。
だが、そこには1級のテキストの目次(の一部分)が書いてある。
そうしたら、授業を聞いている振りをしながら、頭の中でテキストの内容を思い出すのだ。
たとえば、「有形固定資産について、1級ではどんな論点が出てきたか」を思い出すよう努める。
すると、いくつか論点を思い出す。
「そういえば、固定資産を買い換えした時に、高く下取りしてもらえた場合にはそれを値引きとして考えるんだったな」とか、「減価償却の方法を途中で変更したときには、計算の仕方が変わるんだった」とか、おぼろげに思い出してくるかもしれない。
そうしたら、それらの論点について、頭の中で自分に向かって解説してみる。
まるで実際に誰かに教えているかのように、自分の言葉でわかりやすく説明してみるのだ。
もちろん、うまく説明できないこともあるし、そもそも論点が思い出せないこともある。
だが、それはそれでいいのだ。
なぜなら、「能動的に思い出そうとした」というプロセスそのものに記憶の定着効果があるからだ。
それに、もし思い出せないことがわかれば、それが自分にとって「記憶の穴」だということもわかる。
つまり、能動的に思い出そうとすることによって、「記憶の定着」と「穴の把握」が一気に両方できてしまうわけだ。
◎「思い出せること」を増やす訓練
もしうまく思い出せないことがあった場合は、ノートのどこかにメモしておく。
そして、授業が終わったら休み時間にテキストでその部分を確認するのだ。
ちなみに、私はテキストのデータを全てスマホに入れているので、紙のテキストを広げなくても済む。
休み時間にただスマホをいじっているだけのように見えて、実際には授業中に思い出せなかった1級の内容を復習しているわけだ。
こんな風に「内職」を繰り返していると、記憶は徐々に定着していく。
学習が進むと、章の見出しを見ただけで、論点を次々に思い出せるようになっていくだろう。
さらに記憶が定着すると、「それぞれの論点についてどんな練習問題が載っていたか」まで思い出せるようになる。
もし個々の練習問題の解き方の手順まで含めて思い出せるようなら、「その単元はもうOK」と見ていい。
まあ、そこにいくまではいささか大変なのだが、思い出せる部分が徐々に増えていくので、やりがいもある。
「テキストを読んでも読んでも頭に入らない」という人は、情報を入れるばかりでなく、時には出すことも試してみるといいだろう。
◎アクティブリコールはいつでもできる
いかがだっただろうか?
以上が、私の考えた「授業中に効果的に内職をする方法」だ。
この方法は、テキストを開かなくても実践できるので、暇な時にはいつでもおこなうことができる。
たとえば、すぐにテキストを開くことのできない状況で、空き時間ができたとする(満員電車の中とか)。
そうしたら、頭の中で学習した内容を思い出せるだけ思い出し、説明できるなら自分の言葉で説明してみるのだ。
その上でもしわからないことがあったら、後でテキストで実際に確認する。
まあ、すぐにテキストを確認できない場合には、そのまま忘れてしまうこともあるが、腰を据えて勉強している時間ではない以上、ある程度は仕方ないだろう。
いずれにせよ、こうやってアクティブリコールを繰り返すことで、記憶の定着が促される。
私は暇な授業中だけでなく、用事があって出かける時などに、道を歩きながら頭の中で実践していることもよくある。
とにかく、「頭の中だけでできる」というところが手軽でよい。
◎学べるうちに学びたい
ひょっとすると、「そんなに勉強が進んでいるなら、もう職業訓練はやめて就活したら?」と言われるかもしれない。
だが、私が進んでいるのは簿記の勉強だけで、他の授業はもっと学びたいことがそろっているのだ。
もし今職業訓練から抜けてしまうと、簿記の知識は身についていても、他の学習が中途半端になってしまう。
たとえば、パソコンの授業とか税金や保険に関する授業などは、もっと受けていたいものだ。
それに、職業訓練中は時間にゆとりがあるので、1級の勉強時間も捻出しやすい。
働き始めたら今と同じだけ勉強するのは難しいだろうから、職業訓練期間中に、学べるだけ学びたいと思っている。
そんなこんなで、簿記だけ「ゴール」した状態で、職業訓練に通っている。
とはいえ、「職業訓練上のゴール」に達しただけで、「私にとってのゴール」はまだ先だ。
少なくとも、簿記1級を取得するまでは止まるつもりはない。
1級の受験は来年の6月になる予定だ。
それまでにきっちり仕上げていこうと思っている。