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【本】「嫌々ながら医者にされ」(『モリエール傑作戯曲選集2』モリエール/柴田耕太郎 (翻訳))/鳥影社)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

今日は『モリエール傑作戯曲選集2』より、「嫌々ながら医者にされ」を読みました。喜劇です。なにしろ、医者の無能さと見掛け倒しをあげつらうのはモリエールの十八番です。

今回「嫌々ながら医者にされ」でも、主役のスガナレルが服装だけ医者にして、ラテン語っぽいゴタクを並べ、いい加減な「薬」を処方して、非常にありがたがられる、といった滑稽な場面がありました。

でははじめに、あらすじをご紹介します。

薪作りのスガナレルは、喧嘩が昂じて、妻のマルチーヌを殴ってしまいました。二人の仲裁に入ったロベール氏のことをスガナレルばかりか、マルチーヌも罵ります。

やがてスガナレルは、マルチーヌに仲直りを持ち掛けます。マルチーヌは表面上は受け入れますが、心の底で復讐を誓います。

お金持ちのジェトロの下男たちが名医を探していると知ったマルチーヌは、わざとスガナレルを紹介します。

ただの薪作りにしか見えない男だが、それは世を忍ぶ仮の姿で、実は名医であること。そして、思い切り殴れば、医者であることを認めるはずだ、と嘘を教てやります。

殴られるのが嫌で、自分が名医だと認めた結果、金持ちのジェトロの屋敷に連れて行かれたスガナレルは、ジェトロの娘・リュサンドの病を治してほしいと頼まれます。口がきけない病に罹っているというのですが、実は、リュサンドは、望まぬ結婚を避けるために仮病を使っていたのでした。

そのリュサンドの恋人・レアンドルは、ちゃっかりスガナレルに近づき、ジェトロの娘を診察に行くときに、薬剤師として同行させてほしいと頼みます。

スガナレルは、この愛し合う二人にために一芝居打つことを決心して、レアンドルと共に、ジェトロの屋敷へ往診に行きます。

スガナレルがジェトロと長々と雑談してひきつけている隙に、レアンドルはリュサンドを連れて逃亡します。やがて屋敷の人間たちも、リュサンドの不在に気がつき、駆け落ちを助けたスガナレルは罪を問われて、縛り首になりそうです。

ちょうどその時、スガナレルの妻のマルチーヌが、夫の行方をたずねて現れます。(縛り首になると知ったときのマルチーヌの態度がドライで、どういう夫婦なのだろうかと首をかしげました)

最後の最後に、駆け落ちしたはずのレアンドルとリュサンドが戻ってきます。叔父から遺産を相続できることがわかったレアンドルは、駆け落ちを止めて、堂々と正式に結婚を申し込むことにしたのです。父親のジェトロにも反対する理由はなく、恋人たちは晴れて結婚できることとなり、スガナレルも無事放免されました。

モリエールらしい、若者の結婚がらみの喜劇ですが、わたしにはスガナレルとマルチーヌの夫婦の関係がちょっと気になりました。マルチーヌはスガナレルに殴られて、復讐のチャンスを狙いますが、その結果として、夫が縛り首にあうと知った時も、それが放免された時も、戯曲を読むかぎり、感情が動いた様子がありません。

そういえば、わたしは子どもの頃、「パンチとジュディ」という人形劇を観たことがあります。
パンチとジュディの夫婦が、ずっと喧嘩をしている劇で、人形同士ということもあり、容赦のない激しい殴り合いでした。今思えば、他に娯楽もなくてそういう人形劇が流行ったのかもしれませんが、正直あまり気分のよいものではなかったです。
もしかするとモリエールは、この「パンチとジュディ」の流れをスガナレルとマルチーヌに取り入れたのかもしれないですね。

■本日の一冊:『モリエール傑作戯曲選集2』 (モリエール/柴田耕太郎 (翻訳)(訳)/鳥影社)

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