【本】『後宮小説』(酒見賢一/新潮社)
こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。
今日は読み終えたばかりの『後宮小説』をご紹介します。
再読です。
つくづく昔のわたしは馬鹿だった! って思い知ります。
むかし読んだ時も、物語の筋を面白く読みました。
皇帝が腹上死して、後宮が刷新されることになり、三食昼寝付きだと思い込んだ天然美少女の銀河が、仲間や師匠に恵まれて成長してゆく話です。
下心をもって後宮に入ってきた多くの女性たちの中で、天然で率直な銀河の視点で後宮を観ている感覚は面白かったし、やがて後宮へに攻め入るならず者集団の首領・幻影達とその相棒・混沌の、ワンパターンな問答には毎回大笑いしたし、麗人・双槐樹が登場するたびにワクワクしました。
でもね、この本の面白さは、物語の筋だけではなかったんです。
ーー腹上死であった、と記載されている。
物語のはじめからこれです。
「だって、そう書いてあるんだもん、しょーがないでしょ?」という困惑の体で、ぽーんと読者に投げてきている。この面白さ。
かつての私は、物語の筋を追うことが読書の快楽だと勘違いしていました。
見かねた人が、「文体を味わうということができないのかね」とあきれていました。
ええようやく、わかりましたよ。こういうことなんですね。
物語の筋とは別に、はじめのうちは、「文献にそう書いてあるんだもん」「歴史通釈した天山遯がそうかいてあるんだもん」の体だったのが、「筆者自身まごついている」とか、「省略する」って言うけど、本当はそうじゃないだろう!? って突っ込みたくなるのも楽しいです。
作者あとがきで、この本がアニメ化されているのを知りました。
それと矢川澄子が、この物語が日本ファンタジーノベル大賞を受賞した経緯を書いています。
『後宮小説』とはまったく関係ないのですが、矢川澄子が、澁澤龍彦の子供を産み育てたかったというエッセイを何かで読んで、あまりに気の毒で胸をえぐられるような気持ちになったのを思い出しました。わたしはそれをどこで読んだのでしょうね?
■本日の一冊:『後宮小説』(酒見賢一/新潮社)