【本】『プーと私』(石井桃子/河出書房新社)
こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。
子どもの頃、『クマのプーさん』は岩波少年文庫版で愛読していました。
小学校1年生のときに買ってもらった記憶があります。
やがてあるとき、雷に打たれるようにしてわたしは気がついたのです。
大好きだった「うさこちゃん」や「ピーター・ラビット」を翻訳している「いしいももこ」が、『クマのプーさん』さんの翻訳者で、『ノンちゃん雲に乗る』の作者・石井桃子だということに。
一体どれだけ、わたしの読書経験に影響を及ぼしてくれている人なのかと気になって、手に取ったのが、エッセイ集『プーと私』です。
この本には、石井桃子がクマのプーさんと出会うきっかけとなった、1933年の犬養家の素敵なクリスマスの様子や、1954年の渡航でイギリスやアメリカの児童文学に携わる人々との交流が書かれていて、興味深いです。
この本の中から今日は、石井桃子が音読の効能について述べている箇所をご紹介します。
(ちょうど我らが『猫の泉 読書会』ではプラトン『饗宴』を音読する会も開いていますので)
『クマのプーさん』の作者A.A.ミルンの自伝を翻訳することになった石井桃子は、ミルンの英語を理解する手がかりになるように、日本語がよくわかるイギリス人二人の協力者を得て勉強を始めます。
この勉強については、私に少し注文がありました。(中略)
私が、一段落ずつ、声に出して読んでいき、段落ごとに質問をしていきたいということでした。(声を出して読むことの利点は、もうひとつあって、声に出すと、わかっているつもりのところでも、わかっていないことがあるのが、すぐわかることだと、私は、これまでの経験から知っていました。)
石井桃子が声に出して読むのは、ミルンの自伝の原文なので英語ですね。
石井のアクセントがおかしかったり、間違って言葉を読み飛ばしたりすると、ただちに二人から訂正が入り、説明してもらえます。
ただし、こういうやりかたなので、1時間以上かけて8ページという進み具合だったようです。
長くかかったのだと思います。ついに2003年に『今からでは遅すぎる ミルン自伝』(A・A・ミルン、石井桃子(訳)/岩波書店)が出版されました。
このミルンの自伝は、とても読みごたえがあって、注がとても充実していて、ミルンの生涯だけではなく、そのころのイギリスの児童文学の様子や、子供を取り巻く環境が分かって面白いです。
さて、この自伝によると、ミルンは可愛らしくて溺愛された三男坊なんですよね。このことから、わたしが想像するのは、ミルンの性格はプーの世界のキャラクターの中では、プーに頼りきっているコブタに近いのじゃないかと思います。
■本日の一冊:『プーと私』(石井桃子/河出書房新社)