【本】『近代日本の音楽百年~黒船から終戦まで~ 第四巻 ジャズの時代』(細川周平/岩波書店)
こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。
軽音楽って、ご存知ですか?
その昔、わたしの通っていた学校には「軽音楽部」がありました。
部員はバンド活動をしていました。ギターとかドラムとかを演奏していました。部活が無い日も放課後の教室でギター弾いている人がいましたっけ。
そのころ、わたしがひっかかっていたのは「軽音楽」と言う言葉でした。ドラムの激しさとか、ギターの響きを聞く限りそれは決して「軽い」音楽には聞こえなかったからです。
ちょうど、『近代日本の音楽百年~黒船から終戦まで~ 第四巻 ジャズの時代』(細川周平/岩波書店)を眺めていたら、「第三部 スウィングの時代」に「第四章 軽音楽」という項目がありました。
長年の謎が解けるかもしれません。
読んで気になるところをメモします。
〇はじめに:「軽音楽」とは
・昭和10(1935)年ごろから1980年代まで使われてきた。
・英語のlight music などの翻訳語
・おおざっぱにはクラッシックの人気曲の編曲やダイジェスト版、ソフトなダンス音楽、家庭向け小品などを指したが、明確な定義はない。
・新しいジャンルというより新しいカテゴリーで…すごいなと思う表現を下記のとおり引用します。
それはヨーロッパ音楽の普及熱とアメリカ音楽への圧力という状況のなかで、健全さと大衆性を保証する名札として導入され、クラッシックの高尚性とジャズの通俗性・敵性を中和する機能を果たした。
びっくりしました。
「軽音楽」字面は非常に軽そうなのに、何なのでしょうこの意味の深さと切実さは。著者のいう「歴史的な蓄積と対立」を感じます。
では参りましょう♪
〇軽音楽を「軽い」とするモノサシは何?
形式の違いではなくて、カテゴリの違いである。
・曲の構造
・編曲と編成
・演奏空間
によって、軽重を判断している。
〇「軽音楽」の守備範囲
夏休み
子供向け
家庭向け健全娯楽
大衆を導くための
通俗的な西洋音楽
ラジオ
ジャズ風のクラッシック
芸術気どり抜きの
日比谷公園の軍楽隊
娯楽音楽
健康、平易、新鮮で爽やか
明朗で健康
俗悪な流行歌を駆逐するもの
大衆歌謡と洋楽の間に位置するもの
〇軽音楽のレコード・セットを昭和13年より発売
世界文学全集や美術全集と同様、客間に置いておくとかっこうがつくものだったようです。
〇軽音楽は、禁止されていたジャズの隠れ蓑になった
〇日米開戦後の軽音楽に対する締め付けはあったが、しぶとく生き残った。
〇敗戦後二十日の9月5日には、軽音楽はジャズをかばう因縁から解かれて、light musicとしてよみがえった。
意外にも、軽音楽と言う言葉には、重い歴史があったことがわかりました。
言葉の定義があいまいなことはイケナイことと思い込んでいましたが、何かをまもるための優しいラベルになることもあると知りました。その定義は、とりわけ、開戦、終戦といった時代の変化によって、内容が大きく変わることがあると知りました。
■本日の一冊:『近代日本の音楽百年~黒船から終戦まで~ 第四巻 ジャズの時代』(細川周平/岩波書店)
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