月
ライトアップされた倉庫のうえに、
月が見えていた。
赤レンガ倉庫が建てられたのは、
明治の終わりから大正のはじめだったらしい。
長く廃墟になっていたのだと思っていたら、
保税倉庫としての役目は、
平成元年まで続いていたという。
関東大震災を乗り越え、
戦後は接収された。
はじめてきたのは、野外コンサートだった。
商業施設として再オープンする前のこと。
手付かずで荒れた印象だった。
いまは、食事に訪れたり、
おさんぽする場所になっている。
役目を変え、景色を変え、
訪れる人々が変わっても、
見下ろす月はきっと変わらない。