好きなデザイナー・デザイン10選
専門学校の授業開始日が延びています。本来4月から始まるはずだった授業は、5月8日開始(しかもオンライン)になってしまいました。
私の担任となってくれる先生はメールを通じて、授業開始までの課題というか過ごし方の指針を送ってくれました。それは「好きなデザイナーやデザイン(アートや写真の分野に広がっても良い)を10人(10個)見つけること」、併せて、「収集した情報を記録しておく習慣をつけること」でした。
私は恥ずかしながらデザイナーさんの名前に尽く疎くて、パッと「誰々のデザインが好き!」と挙げられるような人がほぼいない。なのでみんな知ってるような超有名人/超有名なデザインばかり挙げることになるかもしれないけれど、恥ずかしがらずに残していこうと思います。
・デザイナー/プロダクトの名前
・どんなデザイン/プロダクトか
・同じ分野の他のものとの違いはどこか
・そのデザインのどこが好きなのか
を記録することにします。
こどもちゃれんじの塗り絵
・どんなデザイン/プロダクトか:教材の塗り絵
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:周りが予め塗られている
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:見た目の良さと体験の良さが連動しないことがあることを教えてくれた
2,3歳くらいが対象の教材で、周りが予め塗られている塗り絵がありました。予め塗られた色に従って塗り絵をすればはみ出さないし綺麗な色のバランスで塗れる、というもの。
とはいえ実物を目にしたわけではありません。
私が6歳くらいの頃、弟妹は2,3歳でした。その頃親には「2,3歳のお子さんにこどもちゃれんじを始めさせませんか?」という教材紹介のDMが送られてきていました。私はその中の漫画(進研ゼミでやったところだ!みたいな体験談が親目線で描かれている)を読むのが好きでした(親向けなのに…)。
その中でたまたま目にしたのが「こどもちゃれんじの塗り絵ならはみ出さないからストレスなく塗ってくれるわ!」と感激するお母さんで、それがこの「予め周りが塗られた塗り絵」でした。
当時6歳の私は「え、ダサっ」と思ってしまいました。周りを塗ってもらわなくても綺麗に塗れる年頃だったし、印刷で塗られた中をクレヨンや色鉛筆で塗るとタッチが全然違って、綺麗に塗れた感もないなと思いました。
ところが弟妹はその塗り絵を喜んでやっていて…的な綺麗なオチはなく、20数年が経過していたのですが、最近になって急にこの塗り絵を思い出し、意義がわかった気がしました。
あの塗り絵は対象ユーザーである2,3歳児のUX的には非常に優れたものでした。6歳の私は見た目を重視していたけど、大多数の2,3歳児にとっては見た目よりもはみ出さずに塗れることが大事。だからあれは対象ユーザーの体験や達成感、目標に合わせて作られたものであり、その点ではとても良いデザインだったのです。私は既に対象ユーザーでなかっただけの話でした。
近年の自分を振り返ると、見た目が良いものは良いデザインと思ってしまいがちな傾向がありました。だけど見た目の良さ(≒UIの綺麗さ)と使い勝手の良さは時として両立しない場合もあることを、20年経って理解させてくれる素敵なデザインだったと思います。
(ただ悲しいのはこれが記憶ベースで、「こどもちゃれんじ 塗り絵」で検索してもそのような教材があったという記録が残っていないこと…本当に実在していたのか確かめたい…)
桂由美
・どんなデザイン/プロダクトか:ウエディングドレス
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:バルーンスリーブのドレスが多い
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:見ているだけでお姫様のような気分になれる
桂さんのデザインするドレスが好きです。残念ながら私が挙げた式場では取り扱いがなく着ることは叶わなかったけれど、インスタではいつも見ていて、自分で二次会用のドレスを作る時のデザイン参考は桂さんのドレスでした。
桂さんのドレスが好きな理由は明確で、「お姫様のようなバルーンスリーブのドレスをたくさん出している」ということでした。私も全てのブランドを知り尽くしているわけではないけど、近年のウエディングドレスは肩周りに装飾のないビスチェタイプか、その中にぴったりしたレースの長袖ボレロを着込むものが多いように思います。特に後者なんか、アナ雪のエルサみたいでとても素敵なのですが、白雪姫やシンデレラのような昔ながらのプリンセスに憧れていた身としては、どうしても膨らんだバルーンスリーブのあるドレスが欲しかった。けれど実際私の式場にバルーンスリーブのドレスは1着しかなく、デザインも寂しくていまいちでした。
その点桂さんのドレスだと、現在ホームページに載っているものだけでもバルーンスリーブのものが比較的多いように思えます。また写真もお姫様を彷彿とさせるアングル・シチュエーションのものが多く、見ていてとてもロマンチックな気分になります(上で貼ったインスタグラムの写真も、プリンセスっぽいポーズで撮られていると思う)
私は結婚式に対して「憧れを叶える場所」という意向が強かったため、幼い頃からの憧れであるお姫様を体現したような桂さんのドレスは、見た目だけでなく場の意義的にもとても適したものだと思っています。
で、今回記録するにあたり調べてみると、桂さんは1964年に日本初のウエディングドレス専門店をオープンした(当時洋装での結婚式は3%ほど)という、ブライダル衣装界に多大な貢献をした方だったことがわかり驚きました。
また、私が桂さんのドレスを好きな理由の答えのようなものも見つかり非常にしっくりきました。
子供の頃はおとぎ話が大好きで、絵本ばかり読んでいました。日本がちょうど戦争に差し掛かっていたご時世でしたけど、私の頭の中は美しいお城や白馬の王子様が現れるような世界でいっぱいだったんです。
(引用元:日経BizGate 「私の道しるべ」)
(引用元URL:https://ps.nikkei.co.jp/myroad/keyperson/katsura_yumi/)
流行は捉えつつも、ルーツ・根底にあるおとぎ話の世界観をぶれずに持ち続けているからこそ、和装主流の時代にも晩婚化の時代にも支持されるドレスが作られているのかもしれないなと思います。
あつまれ どうぶつの森
・どんなデザイン/プロダクトか:言わずと知れたゲームのシステム部分
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:あまりゲームをしないため、同じような分野がどこになるか分からないので比較しづらい…
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:操作を間違わない工夫が凝らされている
リモートワークで暇なのもあり、あつ森を買ってしまいました。
あつ森のUIUXに関しては多くの人が触れているけれど、私が「操作を間違わない工夫」として地味に感動したのがBボタンの使い分けでした。私の場合、Bボタンは大体、操作のキャンセルとメッセージの表示スピードを上げることに使っています。
例えばこの場面だと、会話のキャンセルである「またあとで」はBボタン2回押しで選択されます。1回になっていないのはメッセージの速度を上げる流れでうっかり意図に沿わないキャンセルをしてしまわないようにだと思います。
これだけでも丁寧に考えられているなと思ったのですが、上記の会話のようなやり直し可能なものに対し、やり直し不可能な場面ではBボタンでキャンセルできないという使い分けにとても感動したのでした。
具体的には以下のような、虫や魚を捕った場合。
間違って「このまま逃がす」を選択してしまうと、虫や魚はその場に留まり続けることなく消えてしまいます。そのためやり直し不可能なタスクなのですが、この場面だとBボタンを何度押しても選択肢が「このまま逃がす」に移動することがないのです。方向ボタンで下に移動してAを押さないと選べない選択肢になっています。
この使い分けにより「メッセージ速度上げてたら間違ってレアな虫や魚逃がしちゃった」という事態を防いでおり、気づいた時には本当に感動しました。
あとはその時できる行動が分かりやすく明示されている点も良い。島にある商店は夜閉まってしまうのですが、店外の買取ボックスは24時間利用できます。そうした状態を表す夜間の商店は、店全体は暗い中買取ボックスにライトが当たる形で表現されています。
よく考えたらこうなるよね、と言われればそうかもしれないけれど、アプリとかのUIでよくある「背景に暗めのフィルターがかかって特定機能のアイコンだけ明るい」的な表現を世界観に溶け込ませるとこうなるのか、と感動したのでこれも好き。
Francfrancのマトラッセシリーズ
・どんなデザイン/プロダクトか:バッグを模した食器
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:通常食器のモチーフにならなそうなものをモチーフにしている
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:面白味と背徳感がある、新しい収納の仕方
(引用元:Francfranc公式サイト)
(引用元URL:https://francfranc.com/products/1101090552703)
Francfrancのマトラッセシリーズは、キルティングを模した食器類です。キルティングをイメージした凹凸の入った普通の丸皿やカップもシリーズ内にあるのですが、その中でも上に挙げたマトラッセ バッグのラインナップが特に好きです。これはキルティングのような凹凸が入っているだけでなく、バッグの形をしている食器なのです。
使っているところを想像すると、バッグからお茶を飲むってなんだか変でとても面白い。しかもそのバッグが高級そうな、昔お母さんが大切に使っていたようなデザインという。別にバッグからお茶を飲みたいと思ったことはないけど、子供の頃やったら絶対怒られるいたずらを合法的にやれているような背徳感があります。
また、しまう時のこともちゃんと考えられていて面白いなと思いました。普通のマグカップみたいに縦にしてしまうともったいなくて、横向きだとちゃんとバッグ型になります。バッグをモチーフにすることで「マグカップを横向きに収納する」という新しい価値観が生まれているし、人が遊びに来た時に陶器の置物っぽくインテリアに馴染んでいたこれをひょいと取り上げてお茶を注ぎ出すのを想像すると、やっぱりいたずら心がくすぐられてしまいます。
せっかく本物のバッグみたいに見せる収納ができるのだから、他の色だけでなく他の形も出たら面白いのにな、と思ったり。私はボストンバッグにする、私はクラッチバッグにしようかな、みたいにカップを選ぶのはとても面白そうです。
LA BELLE ETUDE
・どんなデザイン/プロダクトか:チュールスカートが代表的なアパレルブランド
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:ボリューム感・可愛さを押し出さないところ
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:許される感じがある
ボリューミーなチュールスカートがこのブランドの代名詞だと勝手に思っているものの、トップスやアウター、アクセサリーなども幅広く展開しているLA BELLE ETUDE。全てのアイテムのデザインが好きです。
往々にしてお姫様趣味なので脊髄反射的に「可愛いから好き」なのだと思っていたけれど、突き詰めて考えると許される感じと購買意欲が刺激される感覚があることがわかりました。このチュールスカートを例に取ると、商品自体のフォルムはボリューミーで「可愛らしい」のですが、Instagramや公式ホームページのビジュアルの印象は「大人っぽい」に寄っています。スタイリングやモデルさんの表情、それから商品の色が醸し出す雰囲気だと思います。
これがもしも商品のフォルムのイメージと同じ「可愛らしい」雰囲気でアピールされていたら、「可愛いものを見られて眼福だったな」で買わずに終わっていたと思います(年齢的に…)。でも全体が大人っぽい印象で甘さを打ち出しすぎないように見せているため、「自分の年齢で着ていても許されそう」「媚びではなく、自分のためだけに着ている感じに見えそう」という印象になって、ここの服が買いたい!という購買意欲も喚起されました。
調べてみるとブランドコンセプトは以下の通り。
modern vintage×sweet
”どこかにありそうでどこにもない”
ずっと変わらない好きなもの。
環境の変化や気分によって常に変わり続けてゆくもの...
”Modern vintage×sweet"をベースに、
系統という概念はなく、
Vintage・Casual・Feminine・Modeどんなアイテムでも自分らしく着こなし、
ファッションを楽しむ。
(引用元:LA BELLE ETUDE公式ホームページ)
(引用元URL:http://labelleetude.com/#Concept )
私の中だと、「ずっと変わらない好きなもの」がボリューム感やリボンといった可愛らしさで、「環境の変化や気分によって常に変わり続けてゆく」が大人っぽい要素と解釈しています。ブランドコンセプトと商品がぴったり合っている点も良いなと思いました。
原研哉
・どんなデザイン/プロダクトか:ロゴやパッケージなど多分野
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:デザインそのものの主張が強くない
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:主体が明確化されている、自分にはないシンプルさ
(引用元:HARA DESIGN INSTITUTE)
(引用元URL:https://www.ndc.co.jp/hara/works/2014/08/pierreherme.html)
今まで挙げたものの傾向(可愛い、お姫様のようなど)からすると対極的な原さんのデザイン。自分にない「突き詰められたシンプルさ」を持っていると感じたので目標として挙げました。
原さんのデザインしたものを見ていると、主体が明確になっている感じがします。無印良品がまさにそうで、パッケージの派手さや豪華さではなく商品そのものの良さが全面的に伝わるようなデザイン。また、文字と模様で構成されたロゴデザインなども、文字に対して邪魔せずまずは文字から読めるようになっていて、でも見返すと模様にも意味やリンクがある感じ。今まで挙げてきたデザインは服などの「単体で素敵」なものでしたが、原さんのデザインは「主体を引き立たせる」「余白感がある」イメージです。どちらが良い悪いではなくどちらも良くて、でも自分にないと思ったのは原さんの思想だなと感じました(自分はゴテゴテさせてしまいがちなので)。
特に好きだなと思ったのが、上に載せたピエールエルメのイスパハンのパッケージです。色味の面ではイスパハンとのコントラストが大きいものの、フォルムからは「お菓子」という共通項が感じられて、組み合わさった時の違和感がない。柔らかく尖った突起はイスパハンの形を想起させるため、どのお菓子にも使えるわけではなく「イスパパン専用」「唯一無二の組み合わせ」という雰囲気にもなっていると思いました。
田中恒子
・どんなデザイン/プロダクトか:和食器& 生活用品
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:和食器らしくない(良い意味で)、デザイナーと作り手が分かれている
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:重ねた時の美しさ、価値
数年前の新宿伊勢丹で、クリスマスプレゼントを探していた時。食器売り場で、田中さんの椿の皿が目に止まりました。藍色や漆色の渋い和食器の中で一際鮮やかで、波打つ花びらが華やかで、ひと目でとても気に入りました。「この器に似合うものが作れるだろうか?」「家には食器がたくさんあるしな…」と思って買わずじまいになってしまったけれど、しまう時や料理を盛っていない時も楽しそう!持ってるだけで価値がありそう!と、主に皿として使わない時のことを妄想してずっと憧れ続けていました。
今回調べてみると、田中さんは文化服装学院のご出身で、しかも職人ではなく「デザイナー」とのこと。
(参考:きょうこさんが書かれたnote)
個人的に、服飾のご出身であることがとてもしっくりきました。重ねた時の美しさや花びらの曲線はまるで生地をふんだんに使ったドレスのようだと連想しました。
そしてそれ自体で既に美しいお皿たちは、トルソーに着せた状態の綺麗な洋服と同じような気がしています。ワクワクしながら買ってきて、洋服なら自分の体や手持ちの小物と合わせてみる。食器なら自分の家や料理と合わせてみる。衣と食で全く違うような気がしていたけど、購買後に自分が介入してそのもの本来の素敵さと釣り合わせていくプロセスはなんだか似ている気がしました。それってニトリのお皿でも同じことでは?となりそうだけど、洋服で言うところの「着られないように」みたいな良いプレッシャーや背筋が伸びる感じは、こういった個性的な食器にしかないものだと思います。
また、田中さんはあくまでデザイナーであり、作っているのは全国各地の職人さんというのも新しい形だなと思いました。この作り方もファッション業界チックなイメージがあります。
喜多俊之
・どんなデザイン/プロダクトか:家具・食器などのプロダクトデザイン
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:ポップな配色、ラテンと関西の匂い
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:愛着の持てる、曲線的でキャラクター的なデザイン
日本デザインコミッティーのページでデザイナーさんの一覧を眺めていた際、喜多さんのプロダクトが目に止まりました。他の方のデザインは割と直線的(または曲線的であっても均一な円形だったりしてごくごくシンプル)なプロダクトが多い印象だったので、喜多さんのカラフルでキャラクター性のある曲線を持つプロダクトはパッと目につくものでした。
上に挙げた液晶テレビや炊飯器のRIZOは特に好きだなと思ったもの。テレビの丸いスピーカー部分、炊飯器の丸っこさから今にも喋り出しそうなキャラクター性を感じました。スピーカーのところは目やほっぺに、炊飯器の足は本当にもぞもぞ動きそうな感じに見えて、近未来で活躍するロボットのような印象も受けました。
暮らしに馴染む家具家電というとシンプルで存在感の薄いものになりそうだけど、暮らしの中の一員として馴染む方向もあるのか…と目から鱗が落ちた気分。
喜多さんはこの記事の中で、伝統工芸の消滅危機にも触れています。記事内ではそこから家の広さの話に向かっていますが、私はこれを読んで、喜多さんの家具や家電に感じたキャラクター性や愛着、そして近未来感は、伝統工芸品の特徴である「長く使える良いもの」に通じる部分があるのかもしれないと考えました。
CIA Inc.
・どんなデザイン/プロダクトか:ブランディングやストアのデザインを行っている会社。今回触れるのは青山フラワーマーケットの店舗デザイン
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:冷蔵ケースがない、やや無骨なデザイン
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:店に入るハードルが下がる、花を買った後のイメージが膨らむ
(引用元:CIA Inc.)
(引用元URL:https://www.cia.tokyo/project/aoyama-flower-market/)
青山フラワーマーケットの店舗デザインは、あまり気にしたことがなかったけれど実はとんでもなく革新的なものでした。店舗から冷蔵ケースをなくすことで顧客の意思決定を速くしているのだといいます。
私が花を買える歳になる頃には駅前に青山フラワーマーケットの支店があったし、そもそもそれまで花屋さんに行く機会も少なかったから、冷蔵ケースがないことを珍しいとは思っていませんでした。
だけど確かに、冷蔵ケースがないと障壁がぐっと下がります。また、ガラスケースの中にあるよりもリビングに飾った状態をよりイメージしやすい。店舗での品質管理が大変という点においてだけは劣りそうですが、集客や決定率、顧客満足度の面では従来に比べて格段に良いデザインだと思います。また、意思決定スピードが上がることで店に人が滞留しづらくなるため、少し狭くてもアクセスの良い駅中に出店することが可能になっているのではないかと思いました。
冷蔵ケースがないことのメリットとしては他に、店名とのマッチングもあると思います。青山フラワー「ショップ」ではなく「マーケット」なので、市場のようにオープンで商品がすぐそこにあるような外観の方が名前と合致してしっくりきます。マーケット感のある色合いや質感(店の什器などはアイアン調で少し無骨、看板にも濃い色を使っている)も更に「らしさ」を加えていて、店名と外観のイメージが結びつきやすくなっています。
冷蔵ケースをなくすことによるコンバージョン率の上昇だけでなく、名前のマッチングの意味合いも組み合わせられることで、店舗のトータルブランディングとして上手くいっている例だと思いました。
きもの やまと
・どんなデザイン/プロダクトか:着物ブランド
・同じ分野の他のものとの違いはどこか:アウトドア用や洋柄の着物など、従来の着物の枠にとらわれない展開を行なっている
・そのデザイン/プロダクトのどこが好きなのか:老舗でありながら新しさを取り入れることに柔軟な態度
(引用元:DOUBLE MAISON)
(引用元URL:http://www.doublemaison.com)
大学生の時、「きもの学」という授業を取っていました。毎回違う着物関係者の方がお話をしてくれるオムニバス形式の講義で、その中のある回でいらしたのがやまとの方でした。
その時紹介されたブランドは「DOUBLE MAISON」というブランド。このブランドには、タイプの違うイメージキャラクターの女の子たちが存在しています。彼女たちそれぞれのキャラクターに合わせた着物、そしてなんと、ワンピースなどの洋服を売っている、そんなブランドでした。
当時の私は「着物屋さんが洋服も売るのか」「こんなフランス語名のブランド名つけちゃうのか」「でも可愛い、すごく可愛い」と、新しいものに出会った衝撃と嬉しさでよくわからない状態になっていました。
それから5,6年、久々にホームページを見てみると、スノーピークとコラボした「OUTDOOR KIMONO」のビジュアルが目に飛び込んできて、「また斬新なことをやるなあ」と思いました。新しい試みを続けていく姿勢がとても気持ちよかった。
やまとのホームページを改めて見ると、以下のような文章がトップページに並んでいます。
(以下、一部抜粋)
きものが特別な服だという先入観を捨ててほしい。
きものにもっとワクワクしてほしい。
自分の着姿の美しさに驚いてほしい。
日常の中で肩肘張らずに愛してほしい。
きものでテンションを上げ、
あなたの人生をポジティブに彩ってほしい。
日本に生まれた歓びを実感してほしい。
そして世界中の個性をリスペクトしてほしい。
そのために私たちは、チャレンジし続ける。
きものの常識を変え、日本文化の常識を変えていく。
産地とのネットワークを活かしながら、
モノを超えた、新しいきものムーブメントを生み出していく。
この国に、豊かで魅力あふれる未来を育てていく。
(引用元:株式会社やまと)
(引用元URL:https://www.kimono-yamato.co.jp)
「ポジティブ」「リスペクト」といった英語が、和服というカテゴリに縛られない姿勢の現れのように使われています。製品を見て「面白いなあ」と思ったことの答え合わせが改めてできたようでした。
そして社内で展開しているブランドのロゴを見ると、なんと日本語の方が少ないという。
(引用元:きもの「やまと」公式オンラインストア)
(引用元URL:https://store.kimono-yamato.com)
英語名のブランドを展開していることについてはインバウンド向け戦略の一つでもあるとは思います。ただ、モデルは日本人だし、柄など見てもいかにもインバウンド向けですという感じの和柄ではないものも多いのです。むしろ純和風を求めている海外の方にとっては日本らしくないと思われてしまうかもしれない。そう考えると、洋服に慣れている日本人向けのブランドという位置づけの方が個人的にはしっくりくるし、上記の文章にもより合致しているように思えます。
以上をまとめると「日本人向けにしっかりとした信念を持って新しい和服のスタイルを提案するブランド」なのですが、私はやまとが創業100年を超える老舗であるところも好きだと思っています。
伝統的な和服を守っていくブランドももちろん素敵だと思います。でも、こういった老舗が伝統や歴史にしがみつかず、柔軟に生活に寄り添っていく姿勢はもっと好きです。この姿勢と人間中心設計に通じるものがあるように思えるのも、好きなだと感じた理由かもしれません。
しかも老舗たる彼らがそうすることで、着物を良い形で崩していくお墨付きが得られるような効果もあると思っています。自社ブランドのデザインを通して、新しい着物のスタイルが生み出される世の中自体をデザインする意義があるように思えったのです。
総括
好きなものに括ってみると、ゲームから空間まで、割とばらけたなという印象です(カテゴリ的には服が多かったか)
見た目としては華やかなもの・可愛らしいものが好きで、内面的にはデザイナーやブランドのルーツ・主張を感じさせるものが好きな傾向にあるのかなと思いました。
今後も趣味的に言えば恐らく映えるもの、装飾的なものに目が行ってしまうのだろうなと思ったので、原さんのようにシンプルで引き立たせるデザインを意識的に観察するようにして、引き出しを集めていきたいなと思います。