FOMCと長短金利から見る経済
FOMC声明文
さて、FOMC会合後に発表された声明文から見てゆきたい。声明文は前回発表のものを修正してゆく形で更新されるが、今回の声明文は修正箇所が多くなっている。
まず前回の声明文で雇用の増加は「落ち着いた」とされていた箇所は「減速した」に変更され、インフレが「過去1年で和らいだ」と書かれていた箇所は「われわれの2%目標に対して更なる進展を見せた」と変更された。ともにインフレと雇用の減速を示唆する文である。
他に重要な変更点は「インフレを2%目標に戻す」ことに強く注力している、としていた箇所が「雇用最大化を支援しインフレを2%目標に戻す」とされており、これは失業率が上昇し続けていることに配慮した表現である。
これまではインフレ抑制が一番重要だったが、これからは失業率の上昇を和らげることも重視するという意味である。
パウエル議長も記者会見で次のように言っている。
長短金利逆転は何故起こったか?
これを受けて、長短金利差が解消された。そもそも長短金利差とは何かについてまず説明しておくが、国債などの債券は誰かに(国債の場合は政府に)お金を貸すという行為を証券化したものである。
よって何年間お金を貸すのかによって期限が設定される。2年貸せば2年物国債であり、10年貸せば10年物国債である。期限が来ればお金は政府から返ってくる。その間は金利を(マイナス金利でなければ)貰い続けられるということである。
期限が長ければ長いほどお金が返ってくるのかどうか不確かになるため、通常期間が長いほど金利は高くなる。より大きなリスクに対してより高い金利が払われなければ釣り合わないということである。
だがその長短の金利(一般的には2年物国債と10年物国債の金利)が逆転することがある。それが長短金利逆転とか逆イールド(イールドとは利回りの意味である)とか言われる。
この長短金利の逆転は何故起こるのだろうか。まず2年物国債がどのように動くかを解説しておくと、2年物国債は比較的短期の国債であるため、銀行などお金を持っていて資産運用をしている組織は他の短期の運用手段と比べながら2年物国債を買うかどうかを検討することになる。
2年物と10年物の違い
2年物国債と競合するのがアメリカの政策金利であるフェデラルファンド金利である。フェデラルファンド金利とは、銀行間が1日単位でお金を貸し借りをする場合(翌日物という)の金利で、アメリカでは中央銀行がこれをコントロールしている。
銀行などが考えるのは、ここから2年間、2年物国債を買って金利を貰い続けるのか、フェデラルファンド金利を毎日貰い続けるのかである。
だから、2年物国債の金利とフェデラルファンド金利(年率)はかなりの程度競合し、2年物国債の金利は今後2年のフェデラルファンド金利の予想値を反映するようになる。
つまり、2年物国債の金利は今後2年の政策金利の予想値に左右されるということである。
一方で、10年物国債は結構長い期間のお金の貸し借りである。不確実性も2年物より大きく、10年の間には政策金利も大きく変わるだろうから、毎日フェデラルファンド金利を借り換えることと比較することは不合理である。
よって10年物国債の金利はよりリスクの高い資産、例えば社債や不動産の利回りや株式の益回りなどと比較される。これらの比較対象は今後経済が好調なのかどうかによって利回りが変わってくるため、10年物国債の金利は今後の名目経済成長率(インフレ率+実質成長率)に左右される。
つまり、2年物国債は政策金利に、10年物国債は実体経済に影響される度合いが大きいということである。
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