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日本政府の詐欺的な物価指数の計算方法がインフレを悪化させる

日本におけるインフレ率の恣意的な改竄

以前からそうだったのだが、日本の物価指数は恣意的な改竄が行われている。

例えば、先日発表された日本の9月の消費者物価指数もそうである。日経新聞は次のように報じている。

総務省が18日発表した9月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が108.2となり、前年同月と比べて2.4%上昇した。5カ月ぶりに伸び率が縮小した。政府による電気・ガス代補助の再開によって、エネルギーの上昇幅が縮んだ。

QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.3%の上昇だった。

エネルギーは9月に6.0%プラスで8月の12.0%から伸びが縮んだ。政府は電気・ガス代の負担を軽くする補助金を23年1月使用分から実施していたが、今年5月使用分まででいったん止めていた。その後「酷暑乗り切り緊急支援」として24年8〜10月使用分(9〜11月検針分)の補助を再開し、その効果が9月に表れた。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA172KW0X11C24A0000000/

おかしい場所だけを抜粋している。ここまで書けば何がおかしいのか分かる読者が少なくとも何人かは居るだろう。そう信じたいものである。だが金融教育ということが叫ばれながら、つみたてNISAとかいう自殺同然の投資法に盲目的に突っ込むだけで、このニュースを読んで何がおかしいかを理解するだけのリテラシーすらほとんど誰も持っていないか。それが現実なのか。

この物価の計算方法の何がおかしいかと言えば、政府によるエネルギーの購入支援において政府によって支払われた分が物価から取り除かれていることである。


政府支出と物価の関係

それがおかしい理由を説明しよう。例えば政府や都道府県が税金で東京の真ん中に便器を買うとする。

これを経済学では政府支出と言うが、政府支出によって買われたもののの物価は当然ながら物価の計算に含まれる。

例えば仮に政府が日本中の米を買い占めて米の価格が上昇した場合、それは当然物価指数に反映されなければならない。それが政府支出が物価に反映される場合の普通のやり方である。政府が買った便器だからといって、それが物価の計算から除外されることはない。

だがこれが現在、日本政府が「インフレ対策」と称しながら行なっている購入支援策(それがインフレ悪化政策であることは子供でも分かる)の場合どうだろうか。

去年まで行われていた全国旅行支援もそうである。全国旅行支援は旅行代金のうち20%を政府が支払うという政策である。例えば1万円の旅行で8000円を購入者が、2000円を政府が支払ったとしても、その物価は1万円であるべきであり、8000円ではない。

だが日本政府はこれを8000円と見なして物価を計算している。

総務省が31日発表した東京都区部の3月の消費者物価指数(中旬速報値、2020年=100)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が104.0で前年同月比3.2%上昇した。2月の3.3%から伸びが小さくなり、2カ月連続の鈍化となった。政府の電気・ガス料金抑制策の効果が続いた。

宿泊料は横ばいだった。全国旅行支援による割引が値上がりを相殺している。総務省の試算によると、電気・ガス料金抑制の効果と合わせた政策効果で生鮮食品を除く総合指数の前年同月比伸び率をおよそ1.1ポイント押し下げた。政策効果がなければ前年同月比4.3%上昇したことになる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA302S20Q3A330C2000000/



インフレ対策という名の放火政策

それの何が問題なのか。物価指数の普通の計算方法を政治家が自分の都合で歪めたということ以外には、まずこれらの政策がそもそもインフレ対策ではなくインフレ悪化政策だということである。

全国旅行支援では誰もが8000円で1万円の旅行を買っているわけではない。むしろ政策を使っていない人々は全国旅行支援で旅行者が大挙したことによる宿泊費の高騰で苦しんでいる。

だが計算上はそれでもこの全国旅行支援は「物価押し下げ」政策であるということになる。これが詐欺ではなくて何であると言うのか。

そもそもインフレとは需要に対してものが足りないことでものの価格が上がることである。これに対する唯一の対策は、供給を増やすか需要を減らすことである。

だがこの全国旅行支援は不必要な需要をわざわざ創出してインフレに放火した。馬鹿ではないのか。電気・ガス料金についても同じことである。


物価詐称でインフレ悪化へ

そして一番致命的なのは、この粉飾された物価を物価とみなすことで日銀の金融政策が緩和的になることである。

マクロ経済学者である日銀総裁の植田氏がこの詐欺の手法に気付いていないとは思わないが、仮に彼がこの粉飾をもとに金融政策を決めるとすれば、当然ながらインフレを過小評価して金融政策を緩和側に動かすことになる。

これで財政政策(インフレ悪化政策)と金融政策(金融緩和)が両方ともインフレを悪化させる状況が整う。はっきり言うが、日本のインフレは絶対に止まらないだろう。

日本政府の発表によれば、粉飾効果を除いた本来のインフレ率は2%台で推移している。

CPI


海外要因の大きいエネルギーと生鮮食品を除いても2%台でとどまっている

エネルギーと生鮮食品を除いたCPI

アメリカでもそうなっているように、国内のインフレに対しては国内の政策金利をインフレ率と同じ水準まで上げなければ対抗できない。だが金利が仮に3%まで上がるとすれば、低金利に依存してきた日本経済は崩壊することになるだろう。

だが日本経済がインフレを回避するシナリオがもう1つある。シリコンバレー銀行の破綻などに象徴されるアメリカ経済の問題が拡大して世界的な経済危機に陥ることである。

だがどちらにしても日本経済は死ぬことになる。日本経済はもう詰んでいる。それがアベノミクス以来の緩和政策の結末である。

何故こうなったのか。何故インフレ政策がインフレを目指す政策であることを日本国民は見抜けなかったのか。名前にインフレと書いてあるではないか。誰も知らなかっただろうが、インフレとは実は物価上昇という意味なのである。誰も気付かなかった衝撃の事実ではないか。

何故そんなことさえ気づけなかったのか。こういう詐欺的なニュースを詐欺的だと気付くリテラシーがないからである。しかし物価の計算方法よりもインフレの意味の方がよほどやさしいと思うのだが、それでも日本国民には難しすぎるらしい。




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