金利を下げてインフレも下げる
引き続き、11月のアメリカ大統領選挙で再選を目指すドナルド・トランプ氏前大統領のBloombergによるインタビューである。
アメリカのインフレ
大統領選挙ではトランプ氏が優勢だが、どちらの候補が勝つとしても、何人かの著名投資家や経済学者は選挙後のばら撒きによってインフレが悪化することを懸念している。
当の本人であるトランプ氏はどう思っているのか。トランプ氏は次のように述べている。
インフレと大統領選挙
トランプ氏はかなりインフレを気にしている。インフレについて勉強したと言うのだから、恐らく1970年代の物価高騰でインフレを止められなかった大統領がことごとく敗北している事実も知っているのだろう。
例えばボルカー氏は1970年代の物価高騰を1980年代初めに終わらせたFedの議長として有名である。確かにボルカー氏が容赦なく金利を上げたためにアメリカ経済は酷い景気後退に陥った。
だが、実は金融緩和と株価上昇を喜ぶ人々でさえも、ボルカー氏に大いに助けられている。何故ならば、ボルカー氏の1980年は長期的な金利の天井であり、以来何十年も金利が下がり続けてしかもインフレが起きていないのは、ボルカー氏がインフレ退治をやり切ったからである。
つまり、その後数十年のあいだアメリカがインフレなしに金利低下による株高を享受できたのは、ボルカー氏が低金利の間に大量生産されたゾンビ企業を高金利で一掃したからなのである。
もしボルカー氏がいなければ、少しでも緩和に戻す度にインフレ再燃を心配するような今の状況がまだ続いていただろう。ボルカー氏が居たから緩和政策を何十年も続けられた。だがその効果ももう切れたのである。
だが景気後退になると分かっていてインフレ退治をやることは政治的に難しいのではないかという声があるかもしれない。しかしそれは事実ではない。何故ならば、ボルカー議長にインフレ退治を許したレーガン大統領は、次の大統領選で再選しているからである。
ボルカー氏が正しいことをした結果、1982年に経済が酷い状態になった後、1984年にレーガン大統領は49の州で勝利している。レーガン氏はインフレを退治した功績で選挙に勝っているのである。
結局、インフレ政策は企業しか利さないので、しらふに戻った国民にとって支持する理由などないのである。
だから選挙で勝ちたければ問答無用でインフレを抑えれば良い。だが高金利にはもう1つ、50年前にはなかった問題が今ではあることをトランプ氏は知っているようである。
トランプ氏は次のように述べている。
政府債務が莫大な金額になっていることである。金利上昇によってその国債に利払いが発生し、アメリカ政府は借金の利払いのために借金する状況に追い込まれている。
トランプ氏のインフレ対策
ではトランプ氏はどうするのか。彼は次のように述べている。
シュール革命以降のアメリカは、世界の原油産出国でトップの地位を占めている。トランプ氏は原油価格を押し下げ、コストダウンによってインフレを打倒しようとしている。
幸か不幸か、アメリカの産油企業はバイデン大統領の脱炭素政策によって生産能力を制限されている状況にある。だから脱炭素政策を廃止することでアメリカは原油の生産を増やすことができる。そうすれば原油価格は下がるだろう。
トランプ氏は金利を上げて需要を落とす方法ではなく、原油価格を下げる方法でインフレに立ち向かおうとしている。
結論
だが実際どうなるだろうか。トランプ氏は利下げとインフレ打倒を両方やると言っているが、私は減税などトランプ氏の他の公約との組み合わせで、少なくとも長期や超長期の金利は上がると考えている。
しかしトランプ氏は脱炭素政策廃止に関しては本当に本気だと言える。原油価格を下げることがプーチン大統領との交渉の鍵にもなると言っているから、トランプ氏は何が何でも原油価格を下げようとするだろう。
だから投資家は何らかの形で原油価格下落に恩恵を受けるポジションを持つべきである。トランプ相場の形が少しずつ見え始めている。
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