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【2024.8.31】ドル円予測

前回の記事でドル円と実質金利の乖離は金融危機の兆候だと説明した。

ここ1年の実質金利とドル円チャートを再掲示する。

実質金利は4月を境に頭打ちになっており、5月以降は一貫して下がっている。理由としてはアメリカの失業率が上昇してきた為、景気後退を織り込んで金利が下がってきたわけである。

一方、ドル円はというと今年の始値が141円で始まり最高値が162円まで上昇した。また今年4月29日と7月11日に為替介入が行われた。

そもそも日本政府はなぜ為替介入を行っているのか?

それを説明する為には、まず大枠の話をしなければならない。コロナ以降、ドル円が上昇した理由はドルの金利が上がったからである。なぜ金利が上がったのかというと現金給付を含む量的緩和と財政出動を行ったからである。

結果、インフレ率が一時、9%まで跳ね上がってしまったので金利を上げざるを得なくなった為である。これがアメリカ側の理由である。

一方で日本側は、アメリカほどではないにしろ、量的緩和と財政出動を行い、アベノミクスから継続してインフレ政策を続けた。インフレ政策を継続したのは政府債務削減の為である。結果、為替レートはコロナ以降このようになった。

しかし、誤算が生じた。インフレとは物価上昇(貨幣価値減少)という意味で預金通帳残高が減っていくことだと日本国民が気付いてしまったからである。2013年から10年間で貨幣価値を半分以下にしたのだから、日本国民の頭の回転の速さにさぞ驚いただろう。

これでは次の選挙で落とされかなないので、やってますアピールをしている訳である。次の総理がだれになってもこのトレンドは崩れないので、安心してほしい。円安トレンドは崩れないと私は全幅の信頼を自民党に寄せている。細かい話は以下の記事で書いているので興味があるなら読んでみてほしい。

さて、話を戻そう。為替介入を行うにしても、どのような基準で行うのだろうか。そもそも政府が為替介入を行っている理由はなんだろうか。

それはエネルギーインフレが収まっていないからである。日本のインフレ率を並べると以下のようになる。

インフレ率(全体)
インフレ率(エネルギー)
インフレ率(エネルギーと食品除く)

最新の統計によれば全体のCPIは2.8%、コアCPIが1.9% エネルギーCPIが2.7%である。

※世界基準ではエネルギーと食品除くCPIをコアCPIと表記します。日本ではコアコアCPIになりますが、ここでの記事では世界基準で記載します。

原油価格が2023年から2024年にかけて横ばいなのに対し、為替レートは上昇トレンドである。当然、下がるはずがないのである。

自分たちで炎上させながら自分たちで火消しをしている姿はお笑い草なのだが、日本国民にとっては生活が懸かっているので笑い事ではすまないのである。それでも自民党が与党から外れることはないのだから、ノーパンしゃぶしゃぶは過去の自民党の文化ではないということを証明してみせた。自民党に不可能はない。


為替介入の基準

まじめな話に戻すと、実はこういった状況下で為替介入を読むのはそんなに難しくないのである。

為替介入が行われる際にも一応の決まりがあり、具体的には3営業日以内の介入なら1回とカウントをすることを前提に「半年で3回まで」と言うIMFルールがある。

今年は4月29日と7月11日に為替介入が行われたので、あるとしても10月末までである。そして今のレートでは行ってこないのは容易に読める。

なぜかと言えば政府は基準を設けて為替介入を行っているからである。それは前年同月比で為替レートを観た際に10%以上変動していると為替介入している点である。

2024年4月の中央値は155円程度で2023年4月の中央値は133円ほどである。
およそ16%である。年始(140円)から見ても10%である。

2024年7月の中央値は155円程度で2023年7月の中央値は141円ほどである。
およそ10%である。同じく年始から見ても10%である。

2022年のケースはさらにひどく、2022年10月の中央値は147円程度で2021年10月の中央値は112円ほどである。およそ31%である。年始(115円)から見ても27%である。

もちろんこの原因はノーパンしゃぶしゃぶ省出身の黒田前総裁の手腕である。彼は日銀総裁を退任する際に日本のインフレ率が4%(当時)を上回っているときにインフレ目標が達成できなくて残念と言った人物である。

ドル円が上昇すれば、輸入物価がどんどん高くなり、日本人は海外の製品が買えなくなる。日銀が金融緩和をしてきた理由の1つに、円安になれば海外から見て日本の製品が安くなるので数字の上では輸出で儲かるというものがあった。だから紙幣を刷りまくって円の価値を薄め、円安にしようというわけである。

だがこうした考えのリフレ論者が見落としていることが1つある。その戦略によって、価値が薄まった円で換算すれば儲かっているように見えるかもしれないが、ドルなど海外の通貨を基準に考えれば、外国人が日本の製品に払っている対価(つまり日本人が得ているもの)は別に何も変わっていないということである。

例えば1ドル=100円の時に600万円(=6万ドル)の日本車があり、6万ドル持っている外国人が購入を考えているとしよう。

これが円安になり、1ドル=120円になったとする。600万円の日本車は、ドル換算では6万ドルではなく5万ドル(=120円 x 5万)になる。予算が1万ドル余ったので、ついでに軽自動車も買えるかもしれない。

これで日本人は自動車だけでなく軽自動車も売れたと喜ぶかもしれない。だが実際には、元々6万ドルを日本車1つと交換していたものを、円安によって同じ報酬で日本車と軽自動車をセットで譲り渡す羽目になっただけで、得をしているのは外国人のほうである。

一方で日本円の価値が下がるので、日本国民は外国の製品が買えなくなる。円安の何が良いのか誰か説明してくれないだろうか?


まとめ

ともあれ現在の政府が気にしている基準が150円前後であることがわかる。そして為替介入は永遠にできないことは以下の記事で説明済みである。

一方、アメリカではインフレ率が下落し、Fed(連邦準備制度)のパウエル議長が利下げ開始を予告する中、ドルは円やユーロに対して下落している。

アメリカの実質金利とヨーロッパや日本の実質金利を比べるとドルの実質金利は他の国よりも高い。アメリカではFedの利下げ開始を織り込んで金利が下がっている状態である。

日本では日銀の植田総裁が利上げをしようとしているが、日本経済はアメリカ経済よりもかなり弱く、利上げをどれだけ続けられるかは不透明である。

もしこの状況が続くのであれば、結局日本は思ったほど利上げが出来ず、利下げしようとしているヨーロッパではアメリカよりも大きな利下げをしなければならなくなり、円やユーロは結局ドルよりも弱くなってゆく可能性もある。

もう1つの問題は、最近のドル下落が利下げをどれだけ織り込んだものなのかということである。金融市場はアメリカの利下げをどれだけ織り込んでいるのか。金利先物市場によれば、市場は年末までに1%、来年末までに2.25%の利下げを織り込んでいる。

私はこの織り込みを金利の下げ過ぎだと思っている。それは特に11月の大統領選挙でトランプ前大統領が当選した場合にそうだと言える。トランプ氏の主張する景気刺激と2.25%の利下げが組み合わさった場合、アメリカ経済はインフレ再加速となってしまう可能性が高い。

それはドル相場にどういう意味を持つのか。ドル相場がここから更に下がるのは、Fedがこれから利下げをする場合ではなく、今織り込まれている利下げ幅以上に市場が利下げを織り込む場合である。

つまり、ドルがこれ以上下がるとすれば、市場が来年末までに2.25%ではなく、それ以上の2.5%や3%の利下げを織り込んでゆく場合だということになる。

前回の記事にも書いたが、この状況は2016年トランプ相場に似ている。2016年には景気減速が懸念されドルが下がっていたが、11月のトランプ氏の当選と同時に市場はアメリカ経済に強気転換し、ドルの上げ相場へと変わっていった。同じような状況になる可能性はある。

その後のシナリオは日本人にとって選択の問題である。現在の円高サイクルが終わったとき、日本は金利を上げて政府債務の利払い急増を受け入れるのか、あるいは円安とインフレを受け入れるのかの選択に迫られる。

私はこの最後の円高サイクルのいずれかのタイミングで日本円を出来る限り売り払ってしまうことをお勧めする。ドルは円よりマシかもしれないが、ドルにはドルのリスクがある。

だから一番良いのは貴金属だろう。考えなければ資産を守ることが出来ない時代が本当にやってくる。


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