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Nekiの制作ストーリー 「桂二葉本」編


はじめまして。Neki デザイナーの桶川です。このノートでは、デザインを担当した私が、制作の一部をご紹介します。(初めてのノートで緊張しています。。)


先日発売されたばかりの落語家の桂二葉さん初の書籍「桂二葉本」のデザインを担当しました。落語のことはもちろん、二葉さんの生い立ちから学生時代、そしてこれからのことまでがぎゅっと詰まったとても濃い120ページの本です。

ご依頼をいただいたのは、昨年末ごろ。この時はまだ「本を出す」ということくらいしか知らない段階だったので、まずは、ぼんやりと二葉さんのこと、その周りのこと、そしてデザインのイメージになりそうなものをリサーチしました。ボードに貼り出してマップのようにしていきました。これは、他の案件でも最初に必ず行う作業です。
この作業をしていると、頭の中でモクモクとどんな本になるのかな?と想像が膨らみ、わくわくします。

こんな文字が合うかも!という資料から、着物以外の二葉さんの様子まで、色々あります。後々わかるのですが、実はこの時点で「くだものシール」もリサーチに入っていました。

12月末には、二葉さんの落語を観に行きました。今回に限らず、お仕事をさせていただく方の作品を観たり、お店などには必ず足を運んだりするようにしています。
この日、(ほぼ)初めてのちゃんとした落語の鑑賞でした。関西の落語会は、東京に比べ若い人が少ないとは聞いていたのですが、想像以上に周りは年齢が上の方々が多く、緊張しました。ですが、開演し二葉さんがトップバッターで登場して披露した「天狗刺し」は明るく、とても楽しかった記憶があります。(その後の師匠たちのお話もどれも面白く、引き込まれてしまいました!)

その日の演目。二葉さんは賞を取った時にも披露されていた「天狗刺し」。


年が明けた頃から、編集の水嶋さんからざっくりとしたページの構成や全体のデザインイメージの共有がありました。そこで、扉ページになる写真や文字を頼りに、実際に手を動かし始め、様々なレイアウトを試します。

最初は二葉さんの一人語りのページから手をつけました。完成とは全く違うものもたくさん。


少し話は逸れますが、この頃から「文字組み模写の部屋」をスタートしました。これは、1日1ページ雑誌を模写していく試みです。文字組みや、写真の置き方、どんな工夫が隠されているのかを探りながらやっていきます。これは今現在も毎日続けていて、始めた頃よりページの配置がわかるようになってきました!

その後も編集の水嶋さんと何度か打ち合わせをし、だんだんと本の形が見えてきました。今回は「雑誌」という形式の本ではないのですが、雑誌のようにたくさんのコンテンツが盛りだくさんな本です。真面目な対談から、ポップなトーク、落語のあらすじを紹介するものもありました。各コンテンツのトーンをそれぞれ際立たせるために、扉となるページは特にこだわってデザインをしました。

ここからは、今回の本で特に力を入れて取り組んだ部分をクローズアップしてみたいと思います。
まずは、タイトルの文字です。既存の明朝体・ゴシック体だけでなく、オリジナルで文字を作ることでよりそれぞれの色を出せるようにしました。既存のフォントをベースに、何度も書き直し、作っていきました。

制作途中の文字の一部。伸ばしてみたり、切ってみたり、いろんな工夫を試しました。


次に、文字組みです。「文字組み模写の部屋」で培った経験をヒントに組んでいきました。本文だけでなく、ページのタイトル、リード文、キャプション…など、出てくる文章のパーツはたくさんあります。それを分析し、どうやったら読みやすくなるかはもちろんのこと、話している人のテンションや空気感が伝わるような書体選びから余白の使い方まで、ひとつひとつ紐解くように構成しました。

統一するところと、そうでないところのルール作りをすることで、本全体にもまとまりが生まれるようにしています。


文字と写真以外のパーツもこだわりました。例えば、二葉さんの高校時代の恩師へのインタビューページの背景は、他のページとは毛色が違います。先生へのインタビューではありますが、明るくポップな雰囲気の話だったため、小さな水色のドットを背景としています。反対に、二葉さんの1人語り形式の生い立ちを語るインタビューでは、背景は敷かずに真っ白にし、まるで二葉さんがお客さんのいるホールで落語を話すようなトーンに仕上げました。時には、吹き出しを入れたり、囲ったり、いろんな形を用いたりもして、より素敵なページへ仕上げる工夫も散りばめています。

背景が違うだけで印象も変わります。


本文のレイアウトが終わりに近づく頃、表紙のデザインも取りかかりました。表紙はメインとなる本のタイトル「桂二葉本」を大きく入れることが前提としてありました。こちらも、オリジナルの文字をいくつか書いていきました。

既存フォント含め、とにかくたくさん試します。使われなかった手書きの文字も含めると、こんなにたくさん!


そして、二葉さんが「くだものシール」がお好きで集めていらっしゃるとのことから、オリジナルくだものシール風のデザインを入れることに。(くだものシールは、お店で売られている果物に直接貼られているシールのことです。)ここから、どんな文字・配色・配置にしたら、くだものシールのようになるかを試行錯誤しながら、作成していきました。最終的には本当に金のシールにもなり、初回限定でシールが貼られているバージョンが作られました。シールを喜んでいただき、初回特典として別のシールも作成させていただきました。

英語から漢字までいろいろ。この時、初期段階に加えてさらにくだものシールをリサーチしました。
まだ手元になく、写真には載っていないのですが、銀色のシールと缶バッジもあります。


今回は、文字やくだものシールのデザインをたくさん作ったので、それをポスターにもしました。これは依頼ではなく社内で作成した非売品です。

文字の上にぺたぺたとシールが無造作に貼られているような部分がポイントです!

自分で言うのも恥ずかしいのですが、可愛くできて嬉しいです。



いかがでしたか?書ききれていないこともたくさんありますが、Nekiの制作への気持ちや過程を少しでも覗き見て、面白がってもらえると私たちも嬉しいです。
これからもNekiのnoteでは、制作したもののこだわりや裏側をお伝えできればと思います。長文にお付き合いくださり、ありがとうございました!


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