【映画レビュー】痛快!明快!手堅い傑作!だけどお客さんが入ってねーじゃねーか!『SAND LAND』の感想
ちょっとタイミングを逃したレビュー記事です。
『SAND LAND』のざっくりとした感想
『SAND LAND』を9月の中旬に滑り込みで観てきました。
2000年に鳥山明先生が短期集中連載で手がけた作品を『COCOLORS』の横嶋俊久監督がアニメーション映画化。横嶋俊久さんということで、本作の制作には神風動画が参加。
それに加えてサンライズ(バンダイナムコフィルムワークス)とANIMAの3社体制の企画となっており、東映アニメーションじゃない鳥山アニメという点でも注目です。なんと400館以上の大規模上映となっています。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
傑作!
そこまでじゃないだろ......と遅れての鑑賞になって恐縮なのですが、すっっっごく良かった。
映画一本分にちょうど良い起承転結ぶりと原作からの上手い追加の味付け。作品の質としては400館スケールも全然アリだと思うだけにもっと集客できても良かった。SAND LAND良い映画だぞ!!
……というわけでもっと踏み込んだ映画の感想を書いていきます。
『SAND LAND』のもっと踏み込んだ感想
■映画サイズの痛快ストーリー!夏休み映画に最適の楽しいやつ!
まず大前提として、私はギリギリ『ドラゴンボールZ』末期や『ドラゴンボールGT』をリアルタイムで観ていた世代で、鳥山明作品に対してそんなに強い思い入れがある方ではありません。
そのため、今回映画を観るまで、実は原作『SAND LAND』は未見だったので、映画に対してもそんなに期待していなかったのですよ……。
これ、蓋を開けてみたらチョー面白いでやんの。
ストーリーは明快。
砂漠が広がる世界で、町の保安官が小さな集落を救うために水源を探さなければいけない。そのために悪魔の王の息子ベルゼブブに協力してもらい砂漠を渡るという物語です。
てっきり悪魔のベルゼブブが人間たちを圧倒するよくある筋の映画なのかな……と思いきや、
この映画、悪魔に依頼した側の保安官がめちゃめちゃ強いから面白い。
主人公は確かにベルゼブブなんだけど、実質この保安官のラオももう一人の主人公。義理高く、悪魔に対する差別意識も薄く、正義感に厚い性格。それでいて、圧政を強いる国に対しては、さり気なくテクニカルな戦闘テクニックを披露して圧倒していく痛快ぶり。
中盤の山場には渋めの戦車戦も盛り込まれていたりと、想像していなかったバランス感の映画になっていました。
良い意味で鳥山明先生の“メインストリームから少し外れた渋いセンス”が発揮された映画になっていましたよ。すっかり『SAND LAND』ファンになりました。
■完全原作準拠!……ではない?独自の味付けも良し
映画を観た後に原作漫画を購入して読んでみたのですが、映画と大筋はほとんど一緒。結構忠実に再現してくれていました。
ただはっきりと違ったのがクライマックス。
最終決戦で登場する敵の数が増えているなど、原作漫画よりもスケールをアップさせていた上に、ラオの物語としてのけじめが場面として加わっているのが発見でした。
しかも、この追加のシーンが個人的には「好き」な場面でもあったので、映画独自の味付け部分にしっかり魅力があったのは“アニメ映画好き”としては嬉しい部分でした。
今作の脚本には『雨を告げる漂流団地』の森ハヤシさんが名を連ねているのですが、この部分の追加は森さんのお仕事ですかね。グッジョブです。
■なんで売れてないんだ?というか公開館多すぎだろ
残念なのはこれだけ「しっかり」面白い映画なのにあまりお客さんが入っていないという問題ですよ。
400館という公開規模なのに、初週末動員数ランキングは6位。
しかも翌週には圏外に出てしまったりと成績は結構残念な状態です。
鳥山明作品といえども流石に短期集中連載作品だとそんなに集客できないというのは発見かもしれませんし、作品は良ければお客さんが勝手に入ってくるわけでもないのは、いくつも前例を観てきたところですね。
『SAND LAND』が恐ろしいのは現在ゲームが開発中であること。
本来なら映画が大ヒットしてからの、ゲーム発売!という流れにしたかったのだろうけど、ちょっとこの成績では良い相乗効果が得られそうにありません。
ただでさえこのゲームは開発中でリリース日も未定なので、そんなにヒットしているわけでもない映画から間を空けて『SAND LAND』のゲームをリリースしたところで、売り上げにも良い効果はなさそう。
もっと小規模公開にして胸を張って「ヒット」と言える映画にできたら話も違うと思うのですが、興行の難しいところですよ。
さっきは褒めてたけど、おじいちゃんが主人公だったりする部分がイケメンキャラだったり、美少女キャラだったり、なんか小さくてかわいいやつだったりしたら、もっと集客も変わったのかもしれませんね。
好きな映画なだけに切ないぜ。
まとめ
というわけで、すごく良い映画でした。
水を占有してしまっていたり、人の命を軽々と奪ってしまったり、虚偽の情報を信じて過ちを犯してしまったり……この映画の人間の姿のわかりやすいい愚かさは、刺さるものがありますね。
そんなだから尚更、意地悪はするけれど殺しはしたりしないベルゼブブたち悪魔が魅力的に見えるのがまた良くできています。普通にシリーズとして愛していきたい作品だけど、こうもヒットし損ねているということは、今後に波及していくことはないのかな……。
ごめん、『SAND LAND』。
せめてもっと早く見つけて応援してあげたかったよ。
公式サイト
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