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デジタル化がもたらしたデザインデータの変化と課題

Xにポストした内容を少し掘り下げてリライトしています。「そのデザインデータ、重くない?」という件について。

印刷業界やデザイン業界で2000年代からの流れを見てきた立場として、近年のデータ管理の変化について考えさせられることがある。特に、デジタル化が進む中でデザインデータの扱い方が大きく変わり、効率的なデータ管理が難しくなっている現状に課題を感じる。

かつて、印刷業界では原稿写真の管理において、ポジフィルムが基本だった。ポジフィルムとは、写真をフィルム上に正像で記録する方式のことで、印刷物の高品質な再現に欠かせない素材だった。当時、印刷会社にはフィルム管理室があり、スキャン部門も設置されていた。デザインに使用するポジを集めた後、専用のドラムスキャナーでデータ化するのが一般的な流れだった。

ドラムスキャナーとは、円筒状の装置にフィルムを巻き付け、回転させながら高精度にスキャンする大型スキャナーのことだ。このスキャン工程で、印刷物の完成品に合わせたサイズや解像度を調整してデータ化していた。当時の技術者たちは、印刷物のモアレ(規則的なパターンの干渉によって発生する縞模様)などの問題も十分に加味しながら、最適なデータサイズを選択していた。その結果、印刷物に必要な画像データは、過不足のない容量にまとめられていた。

たとえば、誌面に切手ほどのサイズで掲載する写真であれば、ポスターサイズの解像度は必要なかった。必要なサイズに最適化することで、無駄なデータ容量を排除していたのだ。

デジタルカメラの普及による変化

ところが、デジタル技術が急速に普及すると、デザインや編集の現場に大きな変化が訪れた。特にデジタルカメラの登場は、写真管理の方法を大きく変えた。

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