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室内雨楽

雨を聴くのが好きだ。
守られた部屋の中で、外に出ねばならない予定もなく、悠々と雨に耳を傾ける。


日曜の午後は蒸し暑く、四肢がだるくてソファに伸びた。じんわりとかく汗が肌に貼りつき、休まらない。
いっそのこと少し散歩に出よう。私よりも暑さに弱い夫の誘いに、それもそうだと重い腰を上げた。

案外外気の方が涼しくは、残念ながらなかったが、会話しながら歩くことで気分の停滞は和らいだ。
時折雲が連なって過ぎ、今宵一雨降って気温が下がらぬか、吹く風の方角を見などしながら二人で天気を予想した。南ヨーロッパは観測史上例のないような熱波に覆われており、異常気象を前にしてか最近の天気予報は当てにならないことが多い。

出かける前の身体の重さに反して、意外にも散歩が長引くことはよくある。帰宅時にほんのりと覚えた疲れは、心地よいそれだった。


窓を叩く雨音で夜中、目が覚めた。日中に溜まった暑気と湿気を地ごと洗い去るかのような、強い雨。窓際に寄ると、稲光が走る。待っていた雷雨だ。

すでに少し温度の下がった寝室で、雨を聴いた。昨日からも明日からも遠い時間帯、垂直に降る雨をただ聴いた。

現実は表現するためにあるのではないかと思えるようなひと時は、それほど多くない。幸せ、と呼べるかもしれないその数分、室内雨楽。


再び眠りに落ちたのか定かでない、短い明け方を経て朝が来た。
洗われた涼気の中、7月最後の一週間を滑り出す。