おじいちゃんとお饅頭
毎週、お饅頭を二つ買うおじいちゃんは、優しい笑顔で、「一つはわたしのでもう一つは孫のでね」と聞いてもいないのにレジを通す度に私に教えてくれるのだ。
おじいちゃんが来なくなったのと代わるように、お饅頭を二つ買いに来る高校生くらいの女の子がいた。
私は何も聞かないし、彼女も何も言わない。
当たり前だ。そういう間柄ではないのだから。
しばらくして、その女の子も買いに来なくなった。
私は一人、そういうことなのだろうなと思いを馳せる。
売れ残ったお饅頭を買って家に帰った。
お饅頭は甘くて美味しかったけれど、心に残った苦味はお茶では流し込めなかった。