おやすみ、と隣で寝る彼女に言った時、ふいに思った。
あれ、いまおやすみのキスはしたっけ?
まるであれだ。お風呂に入った時にシャンプーをしたかどうかわからなくなる時みたいだ。
それほどまでに彼女との日常が、習慣化されたのかと嬉しく思う。
もう一度彼女にキスをする。
「どうしたの?」
彼女は驚いて目を開けた。
「おやすみのキスしとこうと思って」
「さっきしたじゃない?」
「やっぱしたっけ?」
僕が笑うと彼女も笑う。
「ううん。やっぱしてない」
そう言って彼女がもう一度唇を重ねてくる。
習慣化した幸せをシャンプーの香りが埋め尽くした。