書評:『ミッドナイト・ライブラリー』
こんにちは。
なんだか最近、noteからの通知が多いな〜と思っていたら、『チャリングクロス街84番地』の記事にいいねをたくさんいただいておりました。
たくさんの方に読んでいただき、嬉しくもあり恥ずかしくもあり。でもこうしてどこかの誰かと画面越しで繋がれているということは、とても素敵なことですね。
幸せだ。ありがとうございます。
さて。今日ご紹介する本ですが、これは発売して本屋に並んだ瞬間からずっと気になっていたものです。
これは本好きあるあるだと思うのですが「図書館」「書店員」「古本屋」「司書」「ブック」「ライブラリー」とか”本”にまつわる言葉が入ってる題名の本は、自動的に頭の中の気になる本リストに入ってる気がします。これって私だけ?
そしてこの本の表紙のイラスト。宇宙が広がっているようで個人的にすごくどストライクなのです。よく見ると、タイトルの”・”がキラってしてるのセンス抜群すぎません?
(見つけた瞬間)
「ああ、もうこれは読むしかない」
↓
手に取る
↓
(裏表紙の金額を確認し)
「今は買えないなあ」
↓
諦める
を何度繰り返したことか。笑
本屋で働いてると図らずとも視界に入ってしまい、ずっとずっと格闘していました。それくらい読みたいと思ってしまった本。
しかし絶賛節約中のため図書館で取り寄せました。順番が来るのに半年くらいかかったかな。長かった〜。
著者はイギリス出身のマットヘイグさん。2020年に英語で発売され2022年にこの邦訳版が発売されました。
翻訳本は読みづらくて全然頭に入ってこないものもあるけど、これはストーリーに自然に入っていけます。最初の数ページで読みやすさにびっくりした!翻訳者様、リスペクトです。
若干?ネタバレ要素があるかもしれない点だけご注意ください。
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仕事をクビになり、愛猫のヴォルテールも失い、どん底に落ちてしまったノーラ。ついにその夜、生きることを諦めてしまう。
しかしノーラが次に目を開けたとき、目の前には分厚い靄(もや)が広がり、教会のような灰色の建物がそびえ立っていた。
その建物に入ると、縦にも横にも果てしなく書架が続き、様々な緑色の本が並んでいる。そのうちの一冊に手を伸ばそうとしたところ、不意に誰かの声に遮られた。その声の主は高校時代の図書室の司書・エルム夫人だった。
夫人曰く、この空間は生と死の狭間に存在する「真夜中の図書館」とのこと。言葉通り、時計の針はずっと真夜中00:00を差したままだ。
書架に並んでいるのは一冊を除いてすべてノーラ自身が”生きていたかもしれない別の人生”が書かれた本だと教えてくれた。そしてその残る一冊には「後悔の書」と書かれている。
言われるがままに開くと、そこにはノーラがこれまで抱えていたありとあらゆる後悔が綴られていた。
あの時元彼と別れていなければ。あの時水泳をやめていなければ…。
そこからノーラは、過ごしてみたかった別の人生の本を開き、それぞれの人生を生きているノーラと入れ替わっていくことになるが、、。
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これがこのお話の冒頭部分。ここからノーラは色んな後悔をやり直すべくありとあらゆる人生を旅します。
最後に行き着くまでに、かなーり長いです。でも、ずっと読んでいられる。途中からノーラが私の後悔も一緒になってやり直してくれているような気もして、読了感が最高でした。
後悔をやり直す本ってありそうであまりない気がする。(あ、『コーヒーが冷めないうちに』がこんなようなタイムトラベル系だったっけ。)
ネタバレですが、物語の最後でノーラは、どれだけ入れ替わってやり直したって、結局は元の人生が良かったということに気づきます。そこに行き着いた時の安堵感が凄い。逆に正解はそれしかなかったよな、という感じ。
「もしあの時〜していれば・〜していなかったら」とか、きっと誰もが一度は経験したことのある感情だと思う。
私はふとした瞬間に、しれっと後悔の塊が胃の中に沈んでる時があります。後悔しないように生きてるつもりなのに。「なんでこんなことしてるんだろ」と思ってしまったりする。
でもこの本を読んだらなんだか、やっぱりそんなことどうでもいい気がしてきた!
どんな人生を送っても、悲しいことだってあるだろうし、後悔もなくならない。だから、そんな取り返しのつかないものを考えるよりは、変えられる「今」を楽しみに生きていくだけ。
もはや今以上の人生なんてない、とすら思う。
これまでの人生の選択は、その時の自分が精一杯考えた結果なんだし、本の例えを借りて言うと、私は自分の音楽を好き勝手自由に奏でられていることがとても幸せなことだから。
そして更にこの本の個人的お気に入りポイント。それは”チェス”が出てくること。
この喩えも然り、エルム夫人が発する言葉、一言一言が読者を諭しにかかってくるんです。思わず何度も読み返してしまう。
チェスが人生に喩えられてる部分、ここでまた別の本と繋がるんですが『猫を抱いて象と泳ぐ』でもそうでした。ポーンがね。大事なんです。
ここまで読んでくださっている方には伝わっているかもしれませんが、この本、めちゃくちゃお気に入りです。
なんなら借りずに買えば良かった。笑
この別れの季節、自分だけ何も進めてないような気がして毎年げんなりしてしまう時期なのですが、今年はこの本で自分を立て直すことができた気がします。
焦らず。目の前の扉を開けることに集中する。
今日はここまでにしたいと思います。いつも読んでくださっている皆さま、ありがとうございます。春めいてきましたが、まだまだ夜は冷えますので体には気をつけてくださいね。
では。
今日のnegoto:「過去を悔やんでられるほど人生は長くないって好きなロックバンドのボーカルがよく言ってたっけ」