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お久しぶり

上のお椀はほぼ40年前に私が作ったのですが、
家のリフォームに関わってくれる建築士Yさんにご愛用頂いています。
久々に見て、こんな仕事をしていたのかと、我ながら驚きました。
この頃のお椀は、やや直線的な形で塗り立てという技法で作っていました。
古びて傷みもありますが、丁寧に使ってこられた様子がうかがえます。
手に取ると、肌合いが不思議にサラリとしていい感じです。
(これをYさんに読んでいただいたところ、
お話を理解できてないところがあったので、一部修正します。9月4日)




根 来 椀


同じようにやや小ぶりで、我が家で3年ほど使っているお椀があります。
これは形に丸みがあり根来塗です。
コロンとして手になじむお椀で、どちらかと言えば女性向です。
かつての椀は生真面目で、今はキュートな印象でしょうか?




新旧のお椀


テーブルにお椀を二つ並べ、色や形などアレコレ見比べてみます。
外形のラインの移り変わりが面白く、
製作時の気分でも反映しているのだろうかと、夫婦で語り合います。
眺めていた家内は、「アレ、糸底の長さが違う、古い方が大きい…?」
と言い始めました。


左 お椀歴ほぼ40年、右 お椀歴ほぼ3年

早速 物差しで測ってみました。
同じでした。糸底だけじゃなく、お椀の口径も、高さも全く同じ。
違って見えたのは、上部のラインの違いによる目の錯覚だったのでしょう。
形とは微妙な要素で成立しているのだと、再認識しました。


たまに昔の自分の仕事を見ることがあります。
感慨深いのですが、それでも40年近く前の仕事を見るのは初めてです。
これは何より大切に使って下さったYさんのおかげです。
そして、Yさんは住宅を設計する時、
そこに住む家族の将来にまで思いを馳せるそうです。
ある日Yさんは、「自分は消費者などという言葉が大嫌いだ。」
とおっしゃっていました。
「消費者などと祭り上げられながら、
その実はネジや釘のような消耗品として扱われているだけではないか?」
という疑問が浮かぶようになったそうです。
全てが物質としてすり減っていくという今時の価値観に、
ぬぐえぬ違和感があったのでしょう。

そのようなことを思い出していると、
Yさんはこのお椀を慈しんでくれていたのだとやっと気づきました。
『いつくしむ』、日本の深くて美しい言葉です。
私の仕事がこの感性を次世代に伝える一助になれば、誠に幸せなことです。



残暑お見舞い申し上げます(家内より)


           ペパーミントの葉(上部に小さな薄紫の花が咲いています)

ここ数日はいくらか酷暑がましになりましたが、
まだまだ油断できません。台風とかも来ますし…

まずは体力をつけ免疫力を上げていきましょう。
お米中心のバランスの良い食事をとり、糖分は極力控えめに。
元氣で乗り越えましょう。


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