誰でも使える交渉術! 『日常で使えるピラミッドストラクチャー』
『ピラミッドストラクチャー』、聞いたことあるような無いような。
でもイメージはできるかもしれません。下が幅広くて上に行くに従い狭まっていき頂点に達するあの形。その構造を模したものがピラミッドのストラクチャーですが、これは交渉の準備段階で使えます。
交渉においては、ピラミッドストラクチャーを用いることが、主張を効果的に伝えるための有効な方法です。これは、最終的な主張に到達するために、複数の『論拠』を段階的に構築し、各論拠に対してさらに具体的な『根拠』で支える、という構造です。
根拠は「客観的事実」に基づいており、「一次情報」とも言われますが、シンプルに誰でも集められるものです。
また、「論拠」を提示する際には、交渉相手が理解しやすいように配慮することが重要です。論拠が複雑すぎたり、量が多すぎると、相手が本質を理解するのに時間がかかり、結果的に主張が伝わりにくくなってしまいます。そのため、論拠は3つ程度に絞り込み、簡潔かつ明瞭に提示することが効果的です。このように構造化された議論を展開することで、相手にとって理解しやすく、かつ納得感のある交渉が可能になります。
主張
論拠
根拠(一次情報)
ピラミッドストラクチャーを通じて、明確な論拠と強固な根拠に基づいた主張を提示することで、交渉の場において相手を説得しやすくなるでしょう。
小難しい話はともかく、実際どのように使うのか、身近な例で見てみたいと思います。
高校の生徒と先生の会話です。生徒はクラスで文化祭のリーダーを任され、その内容について先生に相談しに来ました。
生徒(リーダー):文化祭のクラスリーダー
先生
生徒:「先生、今年の文化祭でうちのクラスがやりたい展示についてご相談があります。ちょっとユニークな内容にしたいと思っているんです。」
先生:「いいね。何をやるの?」
生徒:「来場者に直接、この街の魅力を伝えられるようにしたいんです。」
先生:「いいね。具体的にはどんなアイデアなの?」
生徒:「私たちのアイデアは、自分たちの街の観光紹介をテーマにした展示をすることです。クラスメイトが3~4名のグループを作って、街のいろんな場所に行って、面白い写真や動画を撮影してきます。」
先生:「なるほど、街を紹介するんだね。地元の魅力を広める良い機会かもね。でも、その方法で効果的に街を知ってもらうことができるかな?」
生徒:「効果的に知ってもらうために、3つのポイントを考えています。
まず、1つ目は『参加型の展示』です。来場者がただ見るだけじゃなくて、体験してもらうんです。」
先生:「確かに写真と動画だけじゃ、サッと見て終わってしまうかもね。
でも、体験した気分を味わうって、どうやって?」
生徒:「私たちが案内役になって、撮影した場所や地元のエピソードを直接説明したいんです。写真を見ながら『ここはどんな場所で、何が魅力的なのか』を話したり、来場した方の興味に合わせて話していきます。」
先生:「確かに、気分になるね。来場者も親近感が湧くし、楽しめそうだ。それに生徒自身も説明することで、自分の街に対する理解も愛着も強まりそうだし。」
生徒:「ありがとうございます。次に、『リサイクル素材の活用』です。展示ブースや写真パネルの装飾を、廃材やリサイクル素材を使って工夫したいと考えています。これでコストを抑えつつ、環境に優しい取り組みとして見せたいんです。」
先生:「エコな展示か。最近は環境意識も高まっているし、それなら来場者にも良い印象を与えられそうだね。ただの紹介だけでなく、新しい要素が入ると展示の意味もレベルアップして伝わりそうだ。予算も節約できるなら一石二鳥だ。」
生徒:「そして3つ目は『タイムスケジュールの調整』です。文化祭には他のクラスや部活の展示もあるので、私たちの展示が他と重ならないようにタイムスケジュールを合わせて、来場者がスムーズに回れるようにしたいんです。これで、私たちの展示にも集中してもらいやすくなるかと思います。」
先生:「確かに、混雑を避ける工夫は重要だね。他クラスと協力して調整できればだけど、具体的にはどうやって?」
生徒:「常に説明員は置いておきますが、1時間に1回、10分程度で街の説明をプレゼンテーションします。同じことを他のクラスにも提案して、それぞれのイベントの時間が被らないようにします。 各イベントの時間は教室の前に張り出します。」
先生:「なるほど、他のクラスにもメリットがありそうだ。」
生徒:「最終的に、街の観光紹介や宣伝を通じて、地元の良さを多くの人に知ってもらえたらと思っています。文化祭には他校の生徒や父兄、それに一般の方も来るので、私たちの街をもっと好きになってもらえる機会になると思うんです。」
先生:「素晴らしい企画だね。参加型の展示で来場者に直接魅力を伝え、リサイクル素材で環境意識もアピールしつつ、他クラスとの調整で見やすくするというところまで考えてある。これらの指標はどれも魅力的だし、その結実として街の紹介がある。しっかり準備を進めていこうな!困ったことがあればいつでも相談に来て。」
生徒:「はい!ありがとうございます。クラスでしっかり準備して、成功させたいと思います!」
さて、どうだったでしょう?
「なぜそれをしたいのか」、分かりやすい論拠が複数あり、その具体案もある程度言えていますから、先生もスッと理解できたようです。
複雑なように見えて、主張・論拠・根拠で整理すると、スッキリ構造化されているのが分かります。
このやり方は、様々な場面に応用できそうですね!