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「ファーストペンギン」の真実
『先駆者』『冒険者』とは、いつも憧れの的です。
スティーブ・ジョブスやジェフ・ベソス、自分も「ああなりたい、挑戦したい」と思っても、なかなか一歩が踏み出せない。それが普通の人ではないでしょうか。
私もそんな一人。でも、『挑戦する人』になりたいと、いつも憧れています。
「ファーストペンギン」というフレーズを聞いたことがあるでしょう。
ドラマの影響もあるでしょうが、「ベンチャー企業家」のイメージがあります。
「ファーストペンギン」とは:
『海中に(アザラシ🦭など)天敵がいないことを確認するために、ペンギンの集団のどれか一つの個体が、自ら、または、周りから押し出されて海中に飛び込むことで、天敵がいないと分かれば、他の個体も追従する』と、言われます。
そもそも、ファーストペンギンの概念は実際の自然界の観察から着想を得たものではありますが、完全に科学的な事実というよりも、寓話や比喩に近いものとして使われることが多いです。
ペンギンの行動として、集団で行動する際に1羽が先に海に飛び込むことが観察されることがあります。この行動は、捕食者が海中にいるかどうかを確かめるためと解釈されることが多いですが、実際には「最初の1羽が他のペンギンから押し出される」や「リーダーシップを発揮して自ら飛び込む」といった解釈は科学的根拠に基づいているわけではありません。
ペンギンの行動には、以下のような仮定の要因があります
捕食者の確認
先に飛び込む個体が捕食者に襲われるリスクを負う可能性がある。社会的行動
ペンギンは集団で行動する生物であり、他の個体に追随する傾向がある。偶然性
誰が最初に飛び込むかは状況によって異なり、リーダーシップや押し出しとは無関係の場合もある。
人は「ファーストペンギン」という表現を、「リスクを取って最初に行動を起こす勇気ある個体や人間を象徴的に表現する比喩」として使っています。
これは自然界での観察に完全に基づいたものではなく、むしろ人間社会の行動を説明するためのものです。
とはいえ、この象徴的な言葉に心を動かされます。
ファーストペンギンで思い起こすのは、例えば次のような人々でしょう。
1. スティーブ・ジョブズとスマートフォン
概要
スティーブ・ジョブズは、タッチスクリーン技術とモバイルコンピューティングを融合させたiPhoneを開発しました。当時は「電話でこれほど多機能なものを作る必要があるのか」「高すぎる」と疑問視する声も多く、専門家も「携帯市場はすでに競合が多い」「アップルは携帯市場では素人だ」と言う人がいました。ファーストペンギンの要素
既存の市場を無視し、まったく新しいカテゴリーを創出するリスクを取った。皆、iPhoneは携帯電話だと思っていたのですが、事実上、それは片手で持ち運べるPCでした。
2. ローザ・パークスと公民権運動
概要
1955年、アメリカ・アラバマ州で、ローザ・パークスはバスの座席を白人男性に譲ることを拒否しました。この行動が、アフリカ系アメリカ人の公民権運動の火付け役となりました。ファーストペンギンの要素
社会的な慣習や法律に逆らうことは大きなリスクを伴いましたが、彼女の行動が結果として大きな社会変革を生みました。
3. イーロン・マスクとスペースX
概要
民間企業として初めて宇宙事業に取り組み、再利用可能なロケット技術を開発しました。当初は失敗が続き、経済的にも多大なリスクを負いました。ファーストペンギンの要素
宇宙開発が政府機関の領域とされていた時代に、民間での宇宙事業を開拓しました。
今となっては偉業ですが、彼らは自己犠牲で飛び込んだのでしょうか? 最初に食われてもいいと? それとも、その行動には相当程度の『確信』があったのでしょうか?
おそらく、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのようなビジョナリーなリーダーは、自分のビジョンに絶対的な信念を持ち、それが社会を変える力を持つと確信していた可能性が高いです。彼らにとって、リスクは「失敗の可能性」ではなく「成功へのステップ」であり、行動することがむしろ自然な選択だったと考えられます。
一方、ローザ・パークスの場合、自分の行動が後に大きな公民権運動を引き起こすことを意識していたとは考えにくいです。彼女はその場で、自分の信念に基づいて行動した結果、それが象徴的な出来事となりました。
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彼らは、単に勇気ある人、だったのか?
逆に、彼らほどの偉業を成し遂げていない人は、勇気のない人、なのでしょうか?
私は必ずしも、そうではない、と考えています。
リスクを恐れず行動する人間の脳の構造や機能は、平均的な人と異なる特徴がある可能性が示唆されています。
科学的な研究によると、以下のような脳の部位や機能が、リスクを取る行動と関係していることが分かっています。
扁桃体(Amygdala)
役割: 扁桃体は恐怖や不安などの感情を処理する中枢
特徴: リスクを恐れず行動する人は、扁桃体の反応が平均よりも抑制されているか、リスクに対する感情的な反応を制御できる力が強い可能性があります。
関連性: 恐怖や不安の感覚が弱い、またはリスクに対する感受性が低い場合、結果としてリスクを取る行動が増える可能性があります。
遺伝的要因
一部の研究では、リスクを取る傾向が遺伝的要因と関連している可能性も指摘されています。例えば、DRD4遺伝子(ドーパミン受容体の一種)は、探求心や新しいことに挑戦する行動と関連があると言われています。
扁桃体や遺伝子を検査したわけではありませんが、彼らはある意味で「ラッキーな」生物学的な特徴を持っていると言えるかもしれません。
環境によって強く突き動かされた場合もあるでしょうが、扁桃体が異常だったり、ドーパミンがドバドバ出がちな人たちかもしれません。
どうやら普通の人には無理そうです。
普通に、立派に生きればいい、ただそれだけです。
しかし、この仮定は事実でしょうか?もう少し深掘りしたいと思います。
「普通の人」が成功を収めるための方法
脳が「特別な構造」ではなくても成功を収める方法はあるはずです。
例えば次の方法:
(1) 小さなリスクから始める
リスクを恐れる場合でも、いきなり大きな挑戦をする必要はありません。
例: 新しいスキルを学ぶ、小さなプロジェクトを引き受ける、普段話さない人と会話してみるなど。
これにより「安全な範囲での挑戦」を重ね、自信と経験を育てられます。
(2) 計画を徹底する
リスクを最小限に抑えるためには、入念な計画が重要です。
行動例: 事前に情報収集を行い、リスクのシナリオを想定し、代替案を準備する。
(3) 自分の強みを活用する
成功するためにリスクを取るだけが方法ではありません。自身の強みを理解し、それを活かせる環境で努力することが重要です。
例: 分析能力、コミュニケーション力、持続力など。
(4) 長期的な視点を持つ
成功には時間がかかることが多いです。短期的な失敗を恐れず、長期的な視点で努力を継続することが重要です。
(5) チームで行動する
自分一人ではリスクを取れない場合、補完的な能力を持つ人と協力することで可能性が広がります。
スティーブ・ジョブスやイーロン・マスクも、特別な能力ではなく、今述べたようなことをコツコツ、しつこくやってきたのではないかと思うのです。
彼らを特別扱いし、話を進めてきましたが、真実は違うところにあるかもしれません。
実は彼らだって、その判断・行動は、小さなリスクから始め、計画を徹底し、強みを活かし、長期的な視点を持ち、チームで協力したことが最も重要だったのかもしれません。『ファーストペンギン』とは、それらを率先してコツコツとできる個体のことであり、信念と情熱さえあれば、特別な能力や生物学的特徴は必要ない、と言うのが真実ではないでしょうか。