誰でも使える交渉術! 『日本人の個性』
海外の人とビジネスの場面などで話すと、日本人の個性・特徴みたいなものを感じることがあります。例えば、会議の場で発言が極端に少ないとか。
これは英語力の問題もありますが、それに加えて、『日本人的性格』というか、そんなものが関係していると思います。
この性格が平安の昔からなのか、明治、または戦後に出来上がったものなのかはわかりませんが、最近を思い浮かべれば、私たちが受けてきた『教育』というのは無視できない要素ではないでしょうか。
思い起こせば、日本では、『ちゃんと聞きなさい』という教育が重視され、『ちゃんと伝えなさい』という指導はあまり受けなかったと思いませんか。
いわゆる、「聞き手責任者文化」です。
日本社会は同質性が高く、暗黙の了解や場の空気を読む文化が根付いているます。しかし、このような文化的背景、または教育の背景があることで、特に異文化の相手や異なる価値観を持つ相手と交渉するときに、日本人が不利になるケースもあります。
自己主張の難しさ:
日本では自己主張が控えめにされることが多く、交渉の場でも自分の意見や立場を明確にすることに不安を感じる人が多いです。特に海外の交渉相手は、はっきりとした意見を期待することが多く、曖昧な態度は、逆に不信感を抱かれる原因にもなります。誤解や不十分な情報伝達:
日本では、明快な説明や言葉なく、意図を理解してもらおうとすることがあります。しかし、異文化の相手はそのような暗黙のメッセージを理解できない場合が多く、誤解が生まれることもありますから、歴史的に異文化と隣り合って付き合ってきた人たちは「伝える」ことを重要なスキルとして獲得してきました。 一方で、少なくとも現代の日本人はそうではありません。このギャップは、日本人の意思伝達力の弱さの原因になっています。交渉の弱気な姿勢:
日本人は相手の立場を重視し、折衷案や妥協を見つけようとする傾向があります。これは一方では協調的な姿勢と受け取られることもありますが、交渉の場面によっては弱腰と見なされ、相手に押される形になることもあります。日本の企業が、言ってみれば「損を被る」姿は、何度も見てきました。
解決策としては、『伝える』スキルを意識的に強化することが有効です。例えば、自分の意見や要求を明確に伝え、交渉相手にしっかりと自分の立場や期待を伝えるというマインドセットに切り替え、それを意識しながら練習をすることが大切です。また、異文化の相手と交渉する場合、背景の違いや相手の期待に合わせた情報提供や表現方法を工夫することで、誤解を減らし、交渉をよりスムーズに進められます。そのためには、相手の文化や歴史を理解する努力も必要でしょう。これまでのように、目の前の製品が良いから売れる、というだけでは不十分です。
例えば、次のようなケースで実感が得られるでしょう
山田さん(日本人、営業担当)
ジャンさん(フランス人、購買担当)
ジャン:「今回の条件として、納期を2週間早めてもらいたいんですが、可能ですか?」
山田:「ええと……そうですね、少し難しいかもしれませんが、検討してみます。」
ジャン:「検討していただけるんですね。ありがたいです。さらに、コストの削減も考慮してほしいんですが、10%ほどのディスカウントが可能かと思いまして。」
山田:「……わかりました。それも社内で確認してみます。」
ジャン:「ありがとうございます。山田さんのおかげで良い結果が期待できそうです。」
交渉が終わった後、山田さんは社内に戻り条件を提示しましたが、社内では納期の短縮もディスカウントも無理と判断されました。山田さんは困惑します。結局、次の打ち合わせを調整し反論を試みますが、検討を約束したことで、最初から不利なポジションでの交渉となりました。日本側はある程度の損を被ることになりました。
この時、山田さんは英語が苦手だったのかもしれません。
しかし、次のケースを見れば、必ずしも交渉失敗の原因が英語力ではない、と思われるのではないでしょうか?
もう少しまともな交渉を想定してみましょう
ジャン:「今回は納期を2週間早めてもらえませんか?」
山田:「ご提案ありがとうございます。ですが、現時点の生産体制では、その納期短縮はリスクが高いです。仮に納期を早める場合、追加コストが発生する可能性がありますが、それでもよろしいですか?」
ジャン:「追加コストですか。それは困りますね……。では、今の納期のままで進めるとして、価格についてですが、10%のディスカウントは可能でしょうか?」
山田:「価格に関しては現状がベストな条件ですが、長期的な契約があれば、別途ディスカウントを検討する余地はあります。今回に限った10%のディスカウントは難しいです。」
ジャン:「わかりました、長期契約の話は後で考えましょう。現状の条件で進める形で良さそうです。」
ややシンプルでわかりやすいケースですが、山田さんは明確に自社の立場や限界を伝えたことで、無理な要求を受けず、交渉を有利に進めることができました。山田さんが交渉前にしっかり準備してきたことが読み取れます。
まとめると、最初のケースで山田さんが相手の要望に対して控えめに答え、曖昧な「検討する」という表現を使用したため、相手に期待させてしまい、結果として不利な条件をのむことになってしまいました。一方、2つ目のケースでは自社の立場を明確に説明し、無理な要求に対しては具体的な代案を提示するなど、相手に誤解を与えないよう配慮しました。このように、自分の立場をしっかりと伝えることで、交渉の基本になります。
心構えを変えることも大事ですし、準備をしっかりすることが、交渉では何より大事なのです。
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