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誰でも使える交渉術! 「高圧的な相手に対処するには?」

高圧的な相手に対処することはありますよね。その方にはその方の状況や事情はあるのでしょうが、気分が悪いものです。また、むしろ戦略的に高圧的な態度をとる人もいるかもしれません。あまり良い戦略とは思えませんが..とはいえ、現実に起こりうる交渉時の高圧者への対応も慌てることなく分析的に対処する知識を事前に持っておけば役に立つでしょう。まず、冷静さを保ちつつ、戦略的に対応することが重要です。次のいくつかの方法を頭に入れておきましょう。またその後に会話形式で、交渉のOK・NGのケースを示しますのでそちらもご覧いただければと思います。
まずは、対処法のTIPSから。

1. 冷静さを保つ

  • 高圧的な態度は、しばしば感情的な反応を引き出すために使われます。冷静さを保ち、相手の態度に振り回されないようにしましょう。深呼吸をしたり、一瞬間を置いたりして、感情をコントロールします。

2. 相手の発言を冷静に確認する

  • 相手が高圧的な発言をしたときは、発言を確認することで、相手が過度にエスカレートするのを防ぐことができます。例えば、「具体的にどういうことをおっしゃっていますか?」や「その点についてもう少し詳しく説明していただけますか?」といった質問を投げかけます。

3. 「事実に基づいた」ディスカッションを求める

  • 高圧的な相手は、感情的なアプローチを使って圧力をかけようとすることが多いです。感情ではなく、事実に基づいた話し合いを促すことで、理性的な対話に持ち込みます。「私たちの目標は共通の利益を見つけることだと思います。そのために、具体的な事実を基に話を進めましょう」と提案するのも有効です。また、別の機会に紹介したいと思いますが、事実というのは「一次情報」のみを言います。よく、2次・3次情報をあたかも事実のように語る人もいますので、その点の確認や指摘も有効です。

4. 相手の立場を理解しようとする

  • 相手が高圧的なのには、何らかの理由がある場合があります。相手の背景やニーズを理解しようとすることで、適切な対応策を見つけやすくなります。共感を示しつつ、譲れる部分を探り出すことで、対話の雰囲気を和らげることができるかもしれません。これには事前の情報収集が大事になります。

5. 直接的な反撃を避け、別の角度から対応する

  • 高圧的な態度に直接反撃するのではなく、話題をそらしたり、別の角度から問題を捉えることで、相手の圧力をかわすことができます。例えば、『それについておっしゃる点は理解しました。(←そのことについての議論の応酬を一旦終わらす、または落ち着かせる。)他の観点からの考えも提案させていただきたい。』と言うことで、時間を稼ぎつつ相手の勢いをそらせます。

6. 強い態度を取らざるを得ない場合は、落ち着いた自信を持って対応する

  • 時には、強い態度を示さなければならないこともありますが、あくまで冷静かつ自信を持った態度で行います。声を荒げたり感情的になるのではなく、明確で簡潔な言葉で自分の立場を伝えましょう。これは特に海外企業と議論するときに有効だと感じます。

7. 話を聞く姿勢を保ちつつ、自分の意見も明確に伝える

  • 高圧的な相手に屈することなく、『こちらの意見や要望を明確に伝え続けること』が重要です。譲れないポイントはしっかりと主張し、妥協できる部分は譲歩するというバランスを意識します。この意識は感覚的にするものではなく、BATNAやZOPAを事前検討した上で、こちら側が複数で対応する場合はチーム内であらかじめ共有しておきます。

8. 交渉の終了を考える

  • 相手が高圧的で、こちらの話に全く耳を傾けない場合は、交渉を一旦中断することも選択肢の一つです。「このままでは建設的な話し合いにならないようですので、一旦時間をおいて再度お話ししましょう」と言って、時間を稼ぎつつ冷却期間を設けることで、相手が落ち着く可能性があります。どうにもならない時ですね。

さて、一例を次に見てみましょう。

「打ち合わせにて」

『大手家電メーカー、佐山電気の購買担当である厚釜(あつかま)さん、そこに部品を納入している間宮工業の営業である平(たいら)さんとの会話です。間宮工業は原材料費の高騰や、人手不足による人件費高騰で佐山電気に値上げを要求しなければなりません。厚釜さんは上司から譲歩しないよう強く求められているようで、平さんに高圧的に値上げ拒否を伝えてきます。さて、平さんはどうするでしょう?』

ケース 1: 平さんがうまく対処できなかった場合


厚釜:
「平さん、また値上げの話ですか? 前も言いましたが、こちらは一切値上げには応じません。佐山電気は品質を最優先にしているので、コストの上昇を理由にされても困ります。」

平:
「ですが、厚釜さん、原材料費と人件費が急激に上がっているんです。このままでは利益がほとんど出ませんし、継続的な供給が難しくなってしまいます。」

厚釜:
「そんなことは知ったこっちゃありませんよ。値上げが無理なら、それを何とかするのが間宮工業の役目です。こちらとしては、他のサプライヤーと競争している以上、価格を上げるわけにはいかないんです。」

平:
「でも、現実的にはこれ以上のコスト削減は…。」

厚釜:
「じゃあ他社に切り替えるだけの話です。以上です。」

平:
「……そうですか。それでは、また別の提案を考えさせていただきます。」


平さんは厚釜さんの高圧的な態度に押され、値上げの正当性を十分に伝えることができず、交渉は終了。これにより間宮工業は利益が減少し、さらに交渉の立場も弱くなってしまいました。


ケース 2: 平さんがうまく対処できた場合


厚釜:
「平さん、また値上げの話ですか? 前も言いましたが、こちらは一切値上げには応じません。佐山電気は品質を最優先にしているので、コストの上昇を理由にされても困ります。」

平:
「厚釜さん、その点、よく理解しています。実際、佐山電気さんの品質に対するこだわりが私たちの製品の質の向上にも繋がっていると感じています。ですが、今回の値上げは避けられない状況でして、具体的なデータを元に説明させていただければと思います。」

厚釜:
「データを見せられても、うちは値上げに応じる余裕はありませんよ。他のサプライヤーも競合していますから。」

平:
「おっしゃる通りです。私たちも競争を意識して、これまで徹底したコスト削減をしてきました。しかしながら、ここ数か月の原材料費の高騰は業界全体に影響を与えており、私たちだけでなく他のサプライヤーにも同様の影響があると思います。」

厚釜:
「だからって、値上げなんて簡単には受け入れられません。」

平:
「その点は理解していますので、今回は単なる値上げのお願いではなく、今後の供給体制を安定させるための協力関係の見直しと考えています。たとえば、発注数量の見直しや長期契約によるメリット提供も検討したいのです。また、品質の向上策についてもご提案できればと思っています。」

厚釜:
「…確かに、長期であればコストの見通しが立てやすくなるかもしれません。」(!厚釜さん、上司に説明できる内容を得たかもしれませんね)

平:
「そうなんです。また、具体的な数値を提示させていただくことで、納得いただけるかと思います。次回、詳細なデータと提案を持って再度お話しできれば幸いです。」

厚釜:
「わかりました。それなら、一度話を聞いてみましょう。」


平さんは冷静に相手の立場を理解しながらも、自分の主張をデータと共に伝え、さらに交渉の範囲を広げることで高圧的な態度を和らげました。最終的に、厚釜さんも新たな提案に興味を示し、交渉のテーブルに戻ることができました。

さて、「うまくいったケース」では、前述のどのTIPSを使ったかわかりましたか? 交渉の手練れの平さんですが、やっていることを分解すると、シンプルな原理原則を組み合わせていることが見てとれます。ということは、「真似できる」ということですね!

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