「福島県数学ジュニアオリンピック」解説してみた(前編) #13
11月は近況報告的なnoteが続きましたが、今日は数学のお話です。
こんにちは、ねぎとろです。
さて、福島県では、毎年10月下旬に、算数・数学のジュニアオリンピックが開催されています。
算数は小5・小6を対象に、数学は中学校全学年を対象としており、成績優秀者にはメダルが授与されます。
私も中3のときに挑戦し、メダルをいただいています。
今年は10月23日(日)、県内7会場で開催されました。問題、解答用紙、解答例はそれぞれ公開されていますが、解説はありません。そこで、今回は、今年の数学ジュニアオリンピックの問題を全力で解説してみようと思います。
問題と解答用紙はこちらから閲覧することができます。
試験時間は60分で、大問は6つ、小問数は13でした。
※基本的には中1でも解くことができるように設定されていますので、中1の「正負の数」「文字と式」「(1次)方程式」「比例と反比例」の知識はあるものとして解説していきます。逆に、これ以外の中学数学の知識は極力仮定せずに解説していきます。
※以下、すぐに解説が始まりますので、先に問題を解きたいという方はこちらから問題を閲覧することができます。
大問1
この場合、$${x}$$を自然数としたとき、商と余りがどちらも$${x}$$である自然数を$${y}$$とすると、(割られる数)=(割る数)×(商)+(余り)であることから、
$$
y=41x+x \\ =42x
$$
と表すことができます。$${x}$$は自然数であったので、今考えている数はすべて42の倍数である、ということが分かりますね。
最も小さい数は41で割って「1あまり1」である42。3番目は「3あまり3」ですので、41×3+3=126、が答えになります。
先ほど、考えている数は$${y=42x}$$と表されることを確認しましたが、"$${x}$$を大きくしていけばずっと大きな数になるのでは?"と考えた方、実は$${x}$$の取りうる値には最大値があります。それは、「40」です。なので、先に答えを求めると、42×40=1680、ということになります。
なぜ40なのか。今、$${x}$$は、自然数を41で割った商の数であり、かつ余りの数でもあります。小学校で余りのあるわり算を学習したとき、余りは割る数より小さくなければならない、という決まりを学んだかと思います。
今、割る数は41、$${x}$$も自然数ですから、$${x}$$は最大でも40であることが分かります。このように、数学は言葉の定義(意味)をしっかり押さえることも学習の重要なポイントです。
$${x=1}$$のとき$${y=42}$$、$${x=2}$$のとき$${y=84}$$、$${x=3}$$のとき$${y=126}$$ですから、3桁である自然数のうち最も小さい数は126です。このようにして3桁の自然数のうち最も大きな数を求めると、$${x=23}$$のときの$${y=966}$$ということになります。
126から966までの42の倍数を全て足して、41で割る…と、それだけで1時間かかってしまいそうですよね。どうしたものか。
ここで重要な役割を果たすのが、余りです。どういうこと?
例えば、11を9で割ると余りは「2」、17を9で割ると余りは「8」です。11+17=28ですが、28を9で割った余りは「1」です。11を9で割った余り「2」と、17を9で割った余り「8」を足すと「10」ですが、実は10を9で割った余りも「1」であり、元の数を9で割った余りと一致します。このように、異なる2つの数を同じ数で割って、その余り同士を足すと、割る前の2つの数を足してから割った余りと一致するのです。(これを文字式を使って証明することもできますが、これは高校の範囲な気がするのでここでは省略します)
これを使うと、126から966までのすべての42の倍数を足してから41で割った余りと、これらのあまりである3から23の間のすべての自然数を足して41で割った余りは一致するといえます。つまり、3+4+5+…+22+23を41で割って余りを求めればよいのです。こちらのほうが簡単に計算できそうですね。実際に3+4+5+…+22+23を計算すると273で、273÷41=6あまり27。つまり答えは27ということになります。
余りを使う考え方は初めて出てきたかもしれません。この考え方自体は実は高校で詳しく学習するような気がするのですが、ある種の規則性のようなものでもあるので、見つけられたよ!という中学生もいるでしょう。私としてはこの考え方が早いかなと思いましたが、少し難しい気もするので、この考え方以外のよりよい方法があればぜひ教えてください。
大問2
この後に<図1>という図があり、状況が図で説明されています。
1段目は1秒ごとに1個増えるので、11秒後には1段目は11個になっています。2段目は3秒後から、3段目は5秒後から、それぞれ1個ずつ増えているので、11秒後にはそれぞれ9個、7個になっていますね。
11秒後の●の個数は、11+9+7+5+3+1=36(個)、です。
1段目の左端に初めて●が現れるのは1秒後です。2段目は3秒後、3段目は5秒後、ということになります。
ここから、$${n}$$段目の左端に初めて●が現れるのを$${x}$$秒後とすると、$${x=2n-1}$$(秒後)、ということが分かります。50段目は、この式に$${n=50}$$を代入すればよいので、2×50-1=99(秒後)、です。
(1)では、11段目まで図をかいて求めましたが、2022個になるまで図をかいていては、やはりそれだけで1時間かかってしまいそうです。ここでは、$${x}$$秒後の●の個数を$${y}$$個として、$${y}$$を$${x}$$を使って表してみましょう。
<図1>でみたように、1秒後は1個、2秒後は2個、3秒後は4個、4秒後は6個、5秒後は9個、6秒後は12個と、このままでは規則性は見えません。
そこで、秒数に着目して、$${x}$$が奇数の場合と偶数の場合に分けて考えてみます。
$${x}$$が奇数の場合
1秒後は1個、3秒後は4個、5秒後は9個です。3年生であれば、この時点で7秒後の個数がすぐ予想できるかもしれませんね。
ちなみに7秒後は16個です。ピンとこない方は図をかいてみましょう。
さて、これらの数は、すべて整数の2乗の数になっています。これも証明しようと思えばできるのですが、高校の知識を使うため省略します。
つまり、$${x}$$が奇数の場合、つまり(2)で使ったように$${x=2n-1}$$と表すことができるとき、●の個数は$${n^2}$$個、となります。
$${x}$$が偶数の場合
この場合は、段数が増えることがありません。既存の段に1つずつ追加されるだけになります。そこで、先ほどの奇数の場合の1秒後、$${x=2n}$$秒後を考えます。
$${x}$$が奇数のとき、段数は$${n}$$段でした。1秒後の段数は変わらず$${n}$$段なので、$${2n-1}$$秒後から$${2n}$$秒後にかけては、●は$${n}$$個増えることになります。つまり、$${2n}$$秒後の●の数は$${n^2+n}$$個、です。
あとは、2022を超える$${n}$$を探していきます。$${x=2n-1}$$のとき、$${40^2=1600}$$ですから、$${n=40}$$は超えるでしょう。実際、$${n=45}$$のとき、$${45^2=2025}$$で、初めて2022をこえます。このとき、$${x=2\times45-1=89}$$(秒後)。つまり、答えは89秒後です。
「規則性」「場合分け」と、数学では重要な考え方が続きました。今回は時間の偶数と奇数で、●の個数の表し方が異なるということで、それぞれの場合に分けて考える必要があります。慣れない考え方だと思いますが、特に3年生は問題演習を通して徐々に慣れていきましょう。
大問3
※図については、問題のファイルでご確認ください。
空間内の交わらない2つの平面のことを平行であるといいます。<図4>の展開図を組み立てたとき、面(カ)に該当する面は、<図5>ではどこにあたるかというと、右後ろの見えないところにあたります。
この平面に平行なのは、左前に見えている、上の小さな長方形と、下の大きな長方形の2つ。<図4>を見てみると、前者が面(ケ)、後者が面(イ)に該当します。よって、答えは面(イ)と面(ケ)です。
ここでは、(ア)~(ケ)の9つの面の面積の和を$${S}$$と表すことにしましょう。(余談ですが、何かの面積を表すときには$${S}$$を用いることが多いようです。確か"square"の頭文字だと思ったのですが自信がない…)
そして、面(ア)~(ケ)の9つの面それぞれの面積を、$${a, b, c, …, i}$$で表すことにします。すると、問題文の状況は、
$${S-f=402}$$(面(カ)だけを除いたとき)
$${S-a=369}$$(面(ア)だけを除いたとき)
$${S-c=314}$$(面(ウ)だけを除いたとき)
の3つの式で表すことができます。ここで、この3つの式を全て足します。1年生はこの操作の意味がピンと来ないかもしれませんが、左辺は左辺で、右辺は右辺で足し合わせます。すると、
$${3S-(f+a+c)=1085}$$
という式ができますね。
さて、この$${f+a+c}$$、つまり(カ)、(ア)、(ウ)の3つの面の面積の和について考えてみましょう。
(1)で、面(カ)と平行な面が(イ)と(ケ)であることを確認しました。<図4>を見て、この3つの四角形に注目すると、面(カ)は、まるで面(イ)と面(ケ)を組み合わせたような図形になっていることに気付けたでしょうか。
これから、$${f=b+i}$$である(日本語で書くと、(カ)の面積は(イ)の面積と(ケ)の面積の和に等しい)ことが分かります。
実は同様にすると、面(ア)と平行な面は面(エ)と(ク)で、$${a=d+h}$$。
面(ウ)と平行な面は面(オ)と(キ)で、$${c=e+g}$$となります。
まとめると、$${f+a+c}$$というのは、ここで触れられていない残り6つの面の面積の和と等しい値になっています。そして、これがすべての面積の半分、式で表すと$${f+a+c=\frac{1}{2}S}$$となります。これを$${3S-(f+a+c)=1085}$$に代入して$${S}$$の1次方程式にして解くと、$${S=434(cm^2)}$$が求められました。
あとはこれをもとに面(カ)の面積$${f}$$と、面(ウ)の面積$${c}$$をそれぞれ求めて、$${f\div c}$$を求めれば答えにたどり着けます。ここでは答えのみ示しますが、それぞれ1次方程式ですので自分で解いてみてください。
計算すると、$${f=32, c=120}$$となり、$${f\div c=32\div120=\frac{4}{15}}$$で、答えは$$\frac{4}{15}}$$倍、となります。
以上、前半3問の解説です。実は2問は11月下旬までに書き上げていたのですが、11月の終わりから12月中旬まで授業やら地元のイベントの手伝いやらで忙しい日々が続き、そもそもnoteの更新自体が久々になってしまいました。実質の冬休みに入ったので、残り3問分も今年中に更新することを目標としたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?