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インプロワークショップ:ワークショップログ

「インプロ」とは脚本なし、配役なし、リハーサルなし、すべて即興で演じられる演劇です。ステージパフォーマンスとしても、たいへん優れたエンターテインメントですが、それを超えて人材育成やカウンセリングの領域でも非常に注目を集めています。

脚本のない即興の表現なので、相手が何をしてくるかわかりません。瞬間的に相手の意図を読み取ったり、相手と信頼関係を結んだりする能力が求められます。そこで「コミュニケーション」の力が養われます。

 脚本のない即興の表現なので、役者たちが協力をしながらステージの上だけでひとつの作品を作りあげていくことになります。自分のやりたいことを呈示し、相手のやりたいことを受容して、目的を共に実現していく「リーダーシップ」の力が養われます。

 脚本のない即興の表現なので、予測もしない出来事が突発的に多々起こります。想定外の出来事にも柔軟に対応して、目的を達成するための工夫を粘り強くしていく必要があります。そういった試行錯誤を繰り返すことで逆境に強い「マインドセット」が磨かれます。

インプロは生きるための知恵とスキルを学ぶのに最上級なツールだと考えています。だからこそ、多くの人に伝えていきたいと思っています。

もっとも、インプロは本質的に「お芝居」です。いきなり芝居を演じてほしいと求めてもハードルの高さばかりを感じてしまうかもしれません。 

そこで、ワークショップをデザインする場合には、「演劇」の要素は薄めて、「コミュニケーション」「リーダーシップ」「マインドセット」の能力向上に焦点を当てた形でデザインするように心がけています。

他の団体と連携してインプロのワークショップをする機会にも恵まれています。とくに医療者と患者をつないでいく活動をされている団体にご協力いただくことで、医療従事者や患者さんの集まる場でワークショップをさせていただくこともありました。

 演劇の素養などまるでない人たちが大半の場での実践ですが、それでも、「考え方が大きく変わった」「医療に関わる人にもっと知ってもらいたい」「家庭医療や地域医療をやりたい人にはすごくいい」「チームビルディングに使える」といったお言葉をその都度いただいています。

 ステージの上で起きてしまったことは否定せずに受け入れ、それでもできることを積み上げて作品を作っていこうとするインプロの哲学は、病気とともに生きている人、何かの生きづらさや困難を感じている人に価値を与えられるのではないかと思っています。そして、そうした人たちを助ける対人支援の仕事をしている人たちにも大きな力になるはずです。

いつかサバイバーやLGBTQの方たちともインプロのステージを作れたらと思うことがあります。インプロは「いまここ」で生みだされる表現です。「いまここ」に生きる命を輝かせるのに最適な表現であるはずなので。 


【了】


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