アイシテル〜海容〜
楽しい漫画のことを書こうと思っていたのですが、自分の中にずっしりと残っている漫画「アイシテル〜海容〜」のことを書きます。
読んだきっかけはテレビドラマ
テレビドラマ版を見て、大泣きしました。
当時はまだ独身、結婚の兆しもないころ。
子を持ったこともないものの、年甲斐もなく大泣きして視聴していました。
話が重すぎて耐えきれず、視聴をやめようかと何度も思いましたが、続きが気になって最後まで全部見ました。
なので、なかなか原作漫画にも手が伸びなかったのですが…
ドラマで私に重くのしかかった何かが、漫画を読むことで変わることもあるかもしれない。
と漫画に手を伸ばしました。
変わらず重かったですね…
ざっくりあらすじ
いつも通りの日常が、7歳の子供が家に帰ってこないことで変わってしまう。
探しても探しても見つからず、深夜になっても帰ってこず、無惨な遺体となって発見される。
捜査の結果、殺人事件の犯人は、11歳だった。
おかえりって言って
11歳で殺人犯となった裕一。彼の両親は、警察が来るまで彼が殺人を犯したと全く気付かなかった。
殺人の証拠まで部屋にあったのに…
彼は両親に心を完全に閉ざしていて、その心を開くこともストーリーの中心です。
彼が心を閉ざしたきっかけは、今思い出しても悲しくて泣きそうになる。
子供と離れている時間は、親にとって「自分の時間」で、子供の帰宅は自分の時間の終了の合図。
分かる。
自分がやりたいことがある時、子供がいると自由がきかずイラッとする。
分かる。
家に帰宅した子供が全身びっしょりのまま玄関にいたら、怒鳴りたくなる。
分かる。
この一度、怒鳴ったところで、子供が親を見限るわけがない。
全身ずぶ濡れで小学校から帰ってくるなんて、ふざけて帰ってきたに違いない。なのに自分で片付けようともせずに玄関で呆けているなんて。
そんなことで私の手を煩わせないで、自分で自分のことをやってよ。
そうしてイライラして怒鳴ってしまう、ひどく傲慢な親のイライラする気持ちを分かるようになってしまった。
息子が性的暴行されてしまったことも
その体を少しでも清めたくて、公園で体を洗ったことにも
心も体もズタズタに傷ついて帰ってきたことにも
廊下と部屋を隔てるドアの向こうの母親にたった一言「おかえり」と迎え入れて欲しかったことにも気付かず
怒鳴る親。怒鳴られ突き放された子供。
そんな対応をされたら親子でも親子でなくても心を閉ざして当然だ。
同じ空間にいることが苦痛になるくらい嫌うのではないだろうか。
「親はなぜ子供の変化に気づかないのか?」と思ったが、気付けないのだ。
子供が心を閉ざすと、部屋に籠ったりして親に何も求めなくなる。
こうしてnoteを書いている時にも何度も何度も呼ばれて手を止めることもなくなり、生活がスムーズなのだ。親にとって煩わしさが消えるのだ。
私も子供の降園のお迎えの時間や、子供が昼寝から起きたときに自由時間の終了を感じる。
家に帰ったとき、「おかえり」がないと寂しい。
育児を「してあげた」のだからお礼くらい言われたいこともある。
辛く寂しい時、親に声をかけて欲しい気付いて欲しい抱きしめて欲しい。
全部全部欲望なのだけれど、親から子供への欲よりも、子供から親への欲望を忘れずにいたい。そして応えたいと思う。
悪く言わないで
親に心を閉ざした裕一。
他の人にまで閉ざしてはいない。だからこそ、困っている7歳の子に声をかけて助けてあげたのだと思う。
さらにワガママに応えてキャッチボールまで付き合ってあげた。
人一倍、優しい子なのだと思う。私なら、助けなかったと思う。
その優しい子が、一瞬で激昂して、殺してしまった。しかし一撃ではなく、何度も何度も何度も…。
心が落ち着いた頃、彼はとっくに殺人犯になってしまっていた。
激昂した理由は、字にするとやっぱり単純なのだ。
お父さんを悪く言わないで
お母さんを悪く言わないで
愛されてないって突き付けないで。
彼は愛されていないわけではなかった。愛されていた。
でも、子供に伝わる愛され方をしていなかった。
そして、親に愛されていないと感じるには十分な親子コミュニケーションだった。
愛してると伝わるコミュニケーションってどうやるのだろう?
フィクションだと分かっていても
分かっていても、親子関係にもっと気を配ろうと緊張する。
思い出すと胸にピッと針金が突き抜けたような緊張感が出る。
私が子供を愛してることが伝わっているだろうか?といつも思う。
フユに「大好きだよ」と言っていたら「知ってるよ、お母さんいつも言うんだもん」と言ってくれた。
ナツに「大好きだよ」と言っていたら「ナツにはお父さんとお母さんとフユと星も大好き」と言ってくれた。
(フユも2歳頃はこう言ってくれてたなぁ)
今日伝わっていても明日はどうか分からない。
今はストレートに言葉で「大好き」を伝えていきたい。それが彼らにどう繋がるのか分からないけれど、伝えたい。
そう強く思わせてくれる漫画でした。