たった一度のセックスに「余命半年」をかけた話〜夢を叶えるバナナ〜
「余命半年って言われたから、好きなことだけすることにした」
きっかけは、ご近所さんの言葉だった。
余命宣告されてからは嫌なことを全部やめて、病院もやめて、何でも好きにするようにした。
そうしていたら不思議なことに病気が治ってしまったという。
「どうでもいいことに使う時間はないし、これから何をするか未来のことを話していたい」
力強い目で、彼はそう言った。
当時、何にもやる気が持てず、生きがいってなんだろうと思いながら自宅警備を極めて暮らしていた私。
やさぐれていたハートに、グッッサリ刺さった。
何の望みもないって思ってたけど。
このまま死んでもいいかなんて思ってたけど。
もし、自分が余命半年だったらなにする???
行ったことないディズニーランド
海外旅行
本場が美味しいと聞く
台湾のタピオカミルクティー
脳裏にふわふわと漂う中、ひとつの未練が閃光のように突き抜けた。
「わたし、死ぬ前に一発ヤリたい」
私は生まれてこのかた二十数年間、モテたことがない。
一度でいいから、自分好みの素敵な塩顔イケメン(やさしいけどドS)とむちゃくそエロいSEXしてみたい!!
それが、山あり谷あり人生における唯一の未練だった。
諦念の下に隠されていたむき出しの夢。
リビドー、ガッデム。
「なにそれ!!めっちゃいいじゃん!!!!!」
当時、一緒に住んでいた友人達に恥ずかしながらカミングアウトすると、予想外の賛辞が巻き起こった。
「……そうだよね!!!」
そして私は調子に乗った。
だらしなく転がっていた床の上に、ゆらゆらといやらしいドリームロードが広がっていく。
本当に、余命半年のつもりで生きてみようと思った。
明日スーパー帰りで車に轢かれるかもしれないし、そんなの誰にもわからないんだから。
運命のHENTAIを探しています
問題は、半年でどうやって自分好みの素敵なイケメン(塩顔ヘンタイドS)を見つけたらいいのかということだった。
「募集してみたら?」
それだ!!!
友人の言葉(どうかしてる)に速攻で乗っかった。
テンションが振り切れた私は、2週間かけウェブサイトを作り、おまけにテーマソングまで書いた。性欲は活力剤だった。
【特設サイト】
HENTAI WANTED
おにいちゃんバナナ大募集!!
http://hentaiwanted.mystrikingly.com
見下ろせば、食べ頃の雪見だいふくみたいな丸いお腹がある。これから人前で裸になろうという気合いが全く感じられないボディー。
筋トレして、かわいい服とかメイク、モテ仕草を練習して、街コンとか行って、いい感じの人に声をかけて…
思いはするものの、ひとつも実行せずにここまで来た。努力して無駄に終わるのが怖かった。
だけど今ここに、希望はある。
たとえ笑われても。友達にドン引きされて、誰からも応募がなくても。
夢を叶えたいなら、始めなきゃ始まらない。
「これが私の生きる道」
震える指でFacebookのシェアボタンを押した。
応募総数 55名(ゴーゴー!)🎉
結果は、予想外の大反響だった。
性に悩む人、性欲が爆発してる人、片思い中の人、パートナーに応募を勧められた人、回転ベッド発明者の孫。
他と差をつけようと、プロフィール写真が森で全裸(胸にマジックで一発入魂)という強者。
全員、濃すぎる。
背脂豚骨ラーメンより、生き様が濃ゆい。
中には、以前ガンを患った経験から「余命半年」にビビっときたと話してくれた人もいた。
選考のため1ヶ月間、毎日送られてくるエントリーシートを熟読した。テレビ電話や喫茶店でも喋り倒した。
「あなたの黒歴史は?」「人から言われた中で一番心に残っている言葉は?」ひとつひとつの答えに人生が凝縮されているようで、感動で泣きそうになる。多くの人が性的嗜好欄に「マゾです!」と書いていた。
募集しているのはおにいちゃんキャラのやさしいドS、好きな有名人は星野源メンタリストDaiGo etc… と言ってるだろう!!
なんでだよ。最高かよ。
私の気迫がみんなのM心を刺激したんだろうか。虐められたいのは私の方だというのに。
多様性&変態性がゲシュタルト崩壊しそうな日々の中、一枚の写真に目が止まった。
夕暮れの光に照らされた、哀愁漂うアフロの青年だった。
「今はもう違うんですけど」
そう話す彼はめちゃくちゃ真面目で礼儀正しくて、気になりすぎた私は「何故アフロに?」と聞いてみる。
「目立ちたかったんです。でも元がネガティブだから、陽気に思われるのが辛くてやめました」
まさかのネガティブアフロ。
そのギャップに、乙女心が湧いた。毎日街を歩くと色んな人に話しかけられたらしい。(あのフォルム、人の警戒心を解く何かがある)
彼は、HENTAI応募者全員を自宅に招待したリアルイベント(狂気)で、恥ずかしがる他の参加者たちを前に堂々とこう言った。
「あなたを抱きたいと思ったから、ここに来ました」
事前に、中学時代から11年付き合って最近別れた彼女とはプラトニックだったと聞いていた。
経験がないと潔く語り、本で正しい知識は身につけたつもり、あなたのブログを全部読みましたと正面から真っ直ぐ向かってくる熱量。
私のハートは完全に打ち抜かれた。
ここがゴールだ、思ってたんと違うけど。
アフロ切りたてで変わった角刈りヘアなのを差し引くと、彼は塩顔じゃないけど、私好みの手足が長い高身長イケメンだった。
そして、気がついたら結婚していた。
最後の晩餐ならぬ最後の一発どころか、交際発展2週間で婚約し、あれよあれよという間に入籍。
彼のご両親は共に学校の先生と聞き、この企画が知れたときかなりビビったのだけど、彼は「HENTAIであることを誇りに思っている」と説明した。
(私の母は「もう慣れてる。あなたを信用してるから心配してない」と成り行きを見守っていた。強い)
途中、本当にこの夢は叶うのかと弱気になった私(好みの有名人 星野源メンタリストDaiGo etc…)にポジティブな友人は言った。
「私の友達は、友達の友達がメンタリストDaiGoで一緒に呑んだことあるって言ってたよ。
つまりは3人経由すればDaiGoに到達する、そう考えたらなんだって可能性あると思わない?」
当然、DaiGoさんには到達しなかったけど。
欲望を全力で叫ぶと人生が思いもよらない方向に転がり出す。そんな体当たりの教訓を胸に刻んだ。
色んな人が協力してくれたおかげで(ひとりの女の性事情をよってたかって応援する謎の図に感謝)、今世で3回あるはずのモテ期を全部使い果たした気がする。
一番奇妙で嬉しかったのは、誰にも秘密だったけど実は自分も同じことを思っていたんだと「言ってくれてありがとう」ってメッセージが届いたこと。
本当にみんなそれぞれで、色とりどりの愛おしい悩みがある。
「セレンディピティ」という言葉がある。
探し物とは別の素敵なものに出会うこと、偶然の幸運。そういう意味らしい。
挑戦してみて気がついたけど、むちゃくそエロいSEX実現は「ローマは一日にして成らず」だったし。
スレンダーな女性がタイプのはずの夫は、今では私が痩せると寂しがるほど雪見だいふくボディーを愛でるようになった。
物語は始めれば、必ず展開していく。
私のやったことはハイリスクが過ぎるから、オススメしないけれど(ベッド・インは慎重に!)。
でもどんなにくだらないと思うことだって、小さな望みだって、とにかく口に出してやってみればその先にはドラマが待っている。
「私、#キナリ杯 受賞したい」
「余命半年」を生ききった私は、ありがたいことに、また新たな欲望と共に全力の日々を重ねている。(岸田さんの文章大好きです)
やれば、変わる(色んな意味で)
あなたなら、どんな夢を叶えちゃう??
地獄DEマンボ☆ 自分の地獄(ネガティブ)を踊ろう!って曲つくりました。最強の友人アイドル(当時39才)です。年齢は記号、なんだってやれる。
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