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CiNii Researchの印象

2022年4月18日、CiNii ArticlesがCiNii Researchに統合された。

論文の情報のほかに、CiNii Booksのデータ、科研、IRDBに入ってる各大学の機関リポジトリ搭載の成果物(紀要類ほか)、医中誌なども引けるらしい。ごちゃごちゃしないのかな?と思ったが、案外杞憂のようである。

近年、オープンサイエンスの考え方が浸透し、文献だけでなく研究データやプロジェクト情報など、研究活動に関わる多くの情報が公開される傾向にあります。
この流れを受けて、CiNii Researchを公開しました。CiNii Researchでは文献だけでなく、外部連携機関、機関リポジトリ等の研究データ、KAKENの研究プロジェクト情報などを含めて、シンプルなインターフェースから気軽に横断検索することができます。

CiNii Researchについて(https://support.nii.ac.jp/ja/cir/manual_outline)

新しいものが出ると前の方が良かったという意見が出るのは常のことだし、その辺の使用感については私より詳しい人がいっぱい書くだろうから、便利と思った点について取り急ぎの印象を書いておく。

便利と思った点、その1。論文指導において、議論の根拠となる多様な形態の学術情報を、いちおう評価しうる水準に達したものだけ抽出して検索できるプラットフォームになっているのでは、という点。

論文指導において、修士論文とかの草稿をチェックしていると、学生が、「ネットで見つけた」といって、出所の怪しいPDFファイルを、URLだけ載せて引用しようとすることがある。事前の指導不足だと言われてしまうとそれまでなのだが、昔よりもインターネット上に出て来る情報は多様化しているし、ますます玉石混交の度合いを深めている。

それで書誌事項がわからない出所のわからない文献はダメだといっても、なかなか伝わらない(個人ブログなのはダメだというのは伝えやすくても、ごく稀にだが、留学生は学部の2年生くらいが授業で書いたネットで公開されているレポートを引いてくることがある。確かに自分より前に当該テーマについて研究した成果には違いないのだが、一方で情報源の評価の話をしなければならない)。

そのような状態で、CiNii Researchで書誌事項を引き直して出所がちゃんとしてるやつはOK、それ以外はダメ、というような指示を教員側が出しやすくなったのではないか?という気がする(実際まだやってないので、どんなものかの評価はこれから)。

その2。論文が元の科研費の科目と結びついて表示されるようになっている。これは前のCiNii articlesにはなかったはず。一つ文献を見つけたら、その著者が加わってる研究課題を芋づるで探すことも多分可能だろう。

そのことを友人の林さんに聞いたら、「私がかつて書いたCA-Eを観よ」といって次の記事を教えられた。

ある助成に対して、その研究成果と結び付けていくというトレンドは、この10年くらいあるらしい。科研費を受けていた期間に、とくに地方史誌とか紀要、あるいは論文集など、発見しにくい媒体に書かれた成果物の情報が得られるようになったのは、歴史学的には結構大きいかもしれない、とも思う。報告書に研究代表者が成果をキッチリ書いてくれていれば、なのかもしれないが。

ジャパンサーチもある意味で同じトレンドにあるのだと思うが、あれも見ろ、これも見ろ、漏れをなくすためにさらにこれも見ろ!と指導するのは、できる学生に対しては全然問題ないのだが、例えば留学生を教えていると厳しい。

当然、これで全てが完結するわけではないにせよ、作業の初期において、最低限これを見ればそこそこの形にはなる、というデータベースが登場したことの意義は大きいような気がする。初心者に優しいディスカバリーサービスの定着といおうか。

『実践 自分で調べる技術』などはNDLサーチをひたすら推していたが、それとの棲み分けに関していうなら、非学術文献を検索対象にするか、しないか。だろうか。仮に大学図書館が持ってない郷土史の本とかがあれば、歴史学ではそれだって大事だから、一概に優劣はつけ難いけれども。

あと、今後どうなるか、上記文献を読んで気になるのは、「海外の学術情報基盤ともAPI等で情報を相互にやり取りできるよう」みたいなことが書いてあること。

以前、ある方から外国が発行元になっている日本研究のジャーナルの雑誌記事索引をNDLで取るのは不可能なのか?と聞かれたことがあって、国立国会図書館の事業としてみた場合、国内出版物でない限りそれは難しそう…と回答したのだけれど(情報検索にも「一国歴史学」とか「一国思想史学」みたいな国民国家の壁があるんだ・・・と不覚にもそのとき思い至ったりした)。だけどもしかするとCiNii Researchは技術的にこの問題をクリアしうるかもしれない。

例えば日本語で記述された学術文献であれば海外のも検索できる方向に進む可能性があるのでは?あったらすごいのでは?ということも、ぼんやり思った(仮にできたとしても、実装されるのは相当先だと思うけれど)。

追記

CiNii ArticlesがCiNii Researchに統合される、と聞いたとき、ああじゃあCiNii BookもCiNii Dissertationsも無くなって一本化されるんだろう。と勘違いしていたのだが、これらは今のところ単独のデータベースとして残っている。大学図書館が業務として図書館間貸出(ILL)業務を行う際に必要だからということなのかなと推測する(今後どうなるかは、わからない)。


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