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後世への最大遺物から

精神的に本当にしんどくなりそうなときに内村鑑三の読み直しをしてしまう傾向がある。今にして思えば、学生時代、「ああこの本を学生時代に読めてよかった」と思える本は『後世への最大遺物』だったかもしれない。

われわれに邪魔のあるのはもっとも愉快なことであります。邪魔があればあるほどわれわれの事業ができる。勇ましい生涯と事業を後世に遺すことができる。とにかく反対があればあるほど面白い。われわれに友達がない、われわれに金がない、われわれに学問がないというのが面白い。

こういう一節が響いたのだった。でもそれはちょっと病んでたんじゃないかな、とも思う。

この講演をやった年に生まれた娘も、出版してくれた友人も今や鬼籍に入っちゃったけど、三十年経ってこの本が私の「後世への最大遺物」の一つになったことを感謝するって震災後に書いている序文に気づいてしまうと、それだけでもう泣けそうなのだけれど、人はいつになったら本がちゃんと読めるようになるのか考えさせられる。

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