國學院大學日本文化研究所『歴史で読む国学』
著者のお一人、三ツ松さんからいただく。待望の国学通史として、非常に読み応えがある一冊。年表もうれしい。
しかも刊行後版元ホームページで「諸般の事情で収録できなかった『歴史で読む国学』の人名等索引」が掲載されダウンロードできるようになっているのもうれしい。
近世から近代への移行期の学問はこのところ事典とか講座とかが充実してきていて、漢学や洋学に関しても事典や講座が充実しつつある。
そのような状況下にあってきわめて貴重かつ今後の研究のために有用な成果と思う。分担執筆でありつつ、相互の章の関連性が意識されている点も魅力的だ。何度も議論が重ねられたのだろう。
三ツ松さんはご専門の幕末国学がご担当。ペリー来航後、対外危機を契機として幕末期においてる国学が果たした役割を、近年の成果を元に的確にまとめられている。
なかでも、長野義言と井伊直弼との関係について、安政の大獄を行うこの主従の「過酷さの思想的背景」として「諸々の凶事の背後に存在するマガツヒに対抗するためには強く正しい心で悪と穢れを根絶しなければならない、という復古神道神学が存在していた」(p.178)という指摘は、三ツ松さんならではの指摘だと思う。
時に潔癖なまでに純粋さを求めていく(危うい)発想が奔流していく様と、『玉くしげ』において「みよさし論」として結実した大政委任の論から、一君万民の思考へと転換していくことがこの時代の国学の特徴であることがクリアにわかる叙述だった。
近現代まで含めて、国学の基本的なことを調べる際にちょっと手に取ることのできる本だ。