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「上野の森をこえて図書館へ行こう!世紀をこえる煉瓦の棟」展にいった

先日、国際子ども図書館の標記展示会を見てきた。上野の同館の建物にフォーカスした展示で、大変面白かった。「普段は撮影禁止の本のミュージアム内を自由に撮影することができます」というのが魅力で、バシバシ撮ってきた。

歴史学で私がよく思い起こす次のような言葉がある。

歴史家は極力その場に自分の身をさらして、じっさいにその情景を自分の体で追認するということ、体験するということも大切だと思う。歴史叙述における風景は、今、目の前にしている単なる風景ではない。過去の風景なのだけれども、それは研究者の主体と歴史的情況とが内面において結節した時、そこに一つの火花の散るようなスパークがあって、はじめてその瞬間に風景が原風景に変貌するのである。そして、その原風景が見えてきた時にはじめて生々しい歴史叙述が可能となるのではないか。

色川大吉『定本 歴史の方法』(2006年、洋泉社版)pp.134-135

それに「その場に立たないと実感できない心象を思想史のなかで大切にしていきたい」というのは、師の教えでもある。ましてそこまで交通の不便なところでもなく(久しぶりに訪れた上野駅がきれいになっていてびっくりした)、それについて調べて書くのに現地に行かないのは怠慢というものであろう。

引き戸が多かった当時の建築において「おすとあく」とドアに刻印してあることなども、NDLの広報でよく見てはいたが、改めて眺めると、面白い。旧帝国図書館時代のことをこのところずっと追いかけているので、昔の室内の配置を頭に入れてから眺めると、色々感慨深いものがあった。

今の児童書ギャラリーの場所は明治時代、出来たばかりの頃の特別閲覧室だったはずで、さらにそこを仕切って婦人閲覧席が設けられていたのだが、現場に立ってみると、「婦人閲覧席ってこんなに狭かったのか・・・」と思うし、日露戦争の時期に1日2~3人しか来ていなかったというのは、それはそれで納得できる(平塚明子が通っていたという新聞記事を見たことがある)。

地下に下足を預けて、そこから2階の目録室を通って、3階の普通閲覧室まで登ったという回想も、今回しみじみと体感できた。

大階段

本のミュージアムも、普通閲覧室だったはずだが、いまの廊下とミュージアムを仕切ってる壁、昔は外壁だったんだよな・・・・ということも、今回改めて考えながら往時を想像してみた。

建築に関する様々な展示が目を引いたが、そのほかにも帝国図書館と文学者との関わりを整理した展示も面白かった。

この壁むかしは外壁だったんだと思うと不思議な感じがする

前世紀末に郷里を離れ茨城の大学に入った私は、実は開館していたころの支部上野図書館の雰囲気を知らない。

図書館在職中も、密かにそのことをずっともどかしく感じてもきたのだが、今回展示を見に行ったら、改修工事記録のために撮影された16分間の動画があって、当時の映像があるのか!と釘付けになって見入ってしまった。

展示は2022年5月22日までのようである。以下、ホームページから引用

上野の森をこえて図書館へ行こう! 世紀をこえる煉瓦(レンガ)の棟

開催日 2022年3月22日(火)~5月22日(日)
※会期が変更になる場合があります。
※整理券による入館制限を実施している場合があります。詳細は「国際子ども図書館の来館サービスに関するお知らせ」をご覧ください。
会期中の休館日 月曜日、国民の祝日・休日(5月5日のこどもの日は開館)、第3水曜日(資料整理休館日)
開催時間 9時30分~17時

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