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日台企業が挑む次世代スピーカーの世界
![](https://assets.st-note.com/img/1721690681487-1jBUu8Lfms.jpg?width=1200)
振動板(ダイヤフラム)とは
普段私たちが何気なく使っている、スピーカー。音は空気の振動で伝わることをご存じでしょうか?
スピーカーの内部には、電気信号を振動に変えるコイルと、その振動で空気を震わせて音を生み出す「振動板(ダイヤフラム)」が組み込まれています。振動板の素材には紙、樹脂、金属などがありますが、現在「ガラスを使う」という選択に注目が集まっています。
ガラスの振動板(ダイヤフラム)とは
下図が特殊ガラスのリーディングカンパニー日本電気硝子(NEG)と、台湾のガラス振動板メーカー「GAIT」社とのコラボレーションによって開発されたガラス振動板。NEGの特殊ガラスDinorex UTG®をGAITの高い技術力で加工し生み出された新製品です。ガラスを用いることで、外観の美しさに加え、音響性能も向上するのです。
![NEGの特殊ガラスDinorex UTG®](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158086954/picture_pc_85cc34a68a96f38ab6612fe112b1d1f7.gif?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1729002832-N0BAbFKtlOzpIVnJaLmSr2GM.jpg?width=1200)
![ガラス振動板](https://assets.st-note.com/img/1729005653-h7XD1b23SVzlCnagYBoUHqpA.jpg?width=1200)
この「一見ガラスの器のように見える」ガラス振動板に、どのような秘密があるのでしょうか?
NEG×GAITによる新製品完成までの経緯や今後の展望について、NEGでGAITを担当されているディスプレイ営業部の萬(まん)さんに、お話を伺いました。
![ディスプレイ営業部 萬さん](https://assets.st-note.com/img/1722325313488-nNhLvGMpcT.png?width=1200)
家電からモビリティまで。
次世代スピーカーが拓く無限の可能性
![様々な形状に加工されたガラス振動板](https://assets.st-note.com/img/1721690858961-QW8aYOb2Xn.jpg?width=1200)
振動板がガラスになることで、高級感が増す、内部から光を透過できるようになるなど、スピーカーの美しさを追求できます。しかし、実は、再現性の高い、高音質なスピーカーを実現できることに大きな特徴があるのです。NEGとGAITでは、既に小型イヤホンから大型スピーカーまで多種多様な振動板の開発や試作品の提供をしています。
NEG萬 「大小様々なサイズのガラス振動板を使用した試作品を実際に使用してもらい、ご意見を頂戴していて、他の材質の振動板に比べて音がとても綺麗でクリアであり、高級なイヤホンやスピーカーと同等の音質との評価を多くいただいています」
なぜ、ガラス振動板は綺麗でクリアな音が出るのでしょうか?それはガラスの持つ「硬質で、音の残響が少ない」などの物理的特性が、音質に良い影響をもたらすからです。
NEG萬 「よく使われている紙や樹脂などの素材と比べてガラスは硬いため、振動板をレスポンスよく振動させ、広い再生周波数帯域で音を正確に再現することができます。また金属は、硬さはあっても振動が収束しづらく、"残響"が長くなる傾向があり、この特性が音を曇らせるのですが、ガラスは残響時間が短い(※内部損失が高い)ため、後から出てくる音と共振せずクリアな音を出すことができるのです」
加えてガラスには、紙や樹脂と違い、温度や湿度などの環境変化に強く、経年劣化しにくいというメリットもあります。
※内部損失が高い素材は、振動が吸収され減衰する速度が速くなるため、後から出た音と共振せずクリアな音になり、より忠実に音を再生することができる。
さらに、NEG×GAITのガラス振動板には、両社の技術があってこそ実現した「さらなるメリット」がありました。
NEGの超薄板ガラスが実現した高音質
振動板を金属のように重い材質で作ると、振動により多くのエネルギーと時間が必要になります。その結果、音の立ち上がりが遅くなる、再生できる周波数帯域が制限されるなど、高品質な音響を実現するための妨げになります。
スピーカー振動板 素材別比較
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そこでNEGの超薄板ガラスを用いることにより振動板の軽量化が実現、高音質に求められる硬さと音響特性の良さとの”いいとこ取り”が可能になりました。一般的には0.1mmでも「薄い」と言われる振動板を、0.025mm(25µm)という異次元の薄さにまで進化させたのは、NEGの超薄板ガラス製造技術とGAITの加工技術によるものです。両社の技術が合わさり、相乗効果を発揮することで、音の立ち上がりが速く、シャープでクリア、原音に忠実で自然な音を再現できるガラス振動板が完成したというわけです。
世界のオーディオ・スピーカー市場に参入し、イヤホンスピーカー、スマートフォンスピーカー、ノートパソコンスピーカー、HiFiスピーカー、車用スピーカーを手掛けているGAITと、最先端のディスプレイや電子デバイス分野などに精密・高品位なガラス製品を開発・供給してきたNEG。両社が共創することによって、ガラス振動板はさらなる進化を遂げることでしょう。
GAITのガラス3D加工技術力の凄さ
GAITが持つガラス加工技術は、世界に比類のないもの。その凄さは、薄さ0.4mmから0.025mm(25µm)という、とても薄いガラスを高い平坦性(表面の凹凸や反り、うねりなどが少ない状態)を保ったまま3D加工できることからも分かります。GAITを何度も訪ね、その現場を目の当たりにしてきた萬さんに、GAITの技術力の凄さを聞きました。
NEG萬 「まず、GAIT社がガラスに関して高い知見を有するところが大きなポイントです。その上で、3D加工の設備を使いこなす技術を持っているところが強みと言えるでしょう。通常、薄いガラスを加工すると、板厚の均一性が保てない、形が綺麗に仕上がらない、シワができるといった問題が起こりがちです。薄いので加工中に割れやすいというリスクもあります。それらの要素を全てコントロールした上で、平坦性に優れた3D加工が出来るメーカーはなかなかありません」
世界でも珍しい、ガラス振動板に特化したメーカーGAIT。その強みは加工技術だけでなく、音響関連の技術においても豊富なナレッジを持つプロフェショナルであるということです。
強化ガラスがガラス振動板に
NEG×GAITのガラス振動板に用いられる超薄板ガラスは、NEGが開発した超薄板化学強化専用ガラスDinorex UTG®。強化ガラスといえば、身近なところではスマートフォンやタブレットのディスプレイの保護カバーなどがありますが、ではなぜ強化ガラスが振動板の素材となったのでしょうか?
超薄板化学強化専用ガラス DinorexUTG 曲げ試験
そもそも、NEGとGAITの出会いは、2023年4月に遡ります。NEGが出展した台湾の展示会にGAITも出展していたことがきっかけとなり、両社の交流が始まりました。
NEG萬 「GAIT社から『ぜひ一度、NEGのガラスを使ってみたい』と引き合いをいただきました。当時、NEGはスピーカー振動板ビジネスには関わっておらず、音響関連はまったく詳しくない分野でしたが、『NEGが持つ、紙よりも薄いガラスを成形できる技術を、新しい用途や様々なジャンルで活用できないか?』と可能性を模索していたこともあり、GAIT社に超薄板化学強化専用ガラスのサンプルを送ったことが、その後、同社との戦略的パートナーシップへと発展することにつながりました」
結果、GAITから高い評価を受けることになり、GAITのガラス振動板にNEGのDinorex UTG®が採用されることになったのです。
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なぜGAITはNEGの特殊ガラスを選んだのか?
GAITがNEGの特殊ガラスを選ぶカギとなったのは、
・ガラス振動板に欠かせない優れた平坦性、均一性を有する超薄板ガラス
・高い品質管理の下での安定した製品供給と充実した顧客サポート
などにあったと萬さんは語ります。
NEG萬 「評価を受けたのは、NEGの超薄板ガラスが平坦性、均一性に優れているという点です。これはとても重要な要素で、平坦性に欠けるガラスだと、成形した後も凸凹が残ってしまいます。NEGではどんな板厚のガラスでも極めて平坦でスムーズな表面を実現していて、その点が評価されました」
もう一つの「高い品質管理」については?
NEG萬 「ガラスは割れやすく、取り扱いが難しい素材です。例えば、強化ガラスといえども、ガラス表面への衝撃には強靭でも、端面(ガラスの切断面)への衝撃には弱いという性質があります。そこで、NEGでは、製造工程における端面処理(割れの原因となるガラス切断面を滑らかな状態に処理すること)を丁寧に行うなど、高品質のガラスを安定して供給できるよう品質の管理に努めています」
どんな板厚であっても高品質なガラスを提供する、NEGの高い製造技術と品質管理が高く評価されたわけです。
グローバル市場を狙う
日台企業の強みを活かした戦略的パートナーシップ
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両社の出会いから1年を経た2024年4月。ガラス振動板ビジネスに将来的な可能性を見出したNEGはGAITに出資し、同社との間で戦略的パートナーシップを結びました。
調査機関(GMI)によると、世界のオーディオ市場のうちスピーカーの振動板は270億米ドルと予測されています。NEGがオーディオスピーカー市場に挑むのは初の試みとなります。
【参考】GMI Webページ:
https://www.gminsights.com/industry-analysis/acoustic-diaphragm-market
さらには、GAITが持つガラスの3D加工技術とNEGの超薄板ガラス技術の組み合わせによって、予期せぬ新たな用途や分野の開拓も今後大いに期待されるところですね。
なお、NEGでは、Dinorex UTG®を使ったコラボレーションに可能性を感じる企業様からのご連絡をお待ちしております。本製品に関するお問い合わせは下記までお寄せ下さい。
《本記事に関するお問い合わせ》
総務部 広報担当 電話:077-537-1702(ダイヤルイン)
《製品に関するお問い合わせ》
ディスプレイ事業本部 ディスプレイ営業統括部 電話:06-6399-2726(ダイヤルイン)