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セレポカレンダー 厳選とかいう美学

ご無沙汰しています。
しばらくシャニマスまわりのnoteを出せておりませんでした。
この度、執筆を意気込むことになりましたのは、さすがに何か書きたいなという気持ちを温めてきた日々の果てに、ついに話したいことができたからです。
端的に言えば、セレポのカレンダーの話です。


受注受付中のカレンダー企画、みなさんはもう注文しましたでしょうか?

2022年の5月くらいまでにリリースされただいたい全部のカードイラスト計721枚の中から自由に12ヶ月分のイラストを選んでカレンダーを作れるという商品企画です。

アピールポイントはいくつかあって、たとえばB3サイズを選べば額縁が欲しくなるくらいの大きさになるのはかなり嬉しいところです。単純に好きな絵を飾れるという良さもありますし、ブラウザ上でいくら拡大してもわからなかった細かい描き込みをつぶさに見ることもできます。
細かい描き込みについては、セレポ公式が作っているハッシュタグ「#シャニマスセレポで気づいたところ選手権」の投稿からいくつか他人の気づきを見ることができます。個人的には【うちくる~?】の愛依ちゃんの部屋に掛けてあった賞状に「平成二十五年」と書いてあったのが衝撃的でした。
が、情報源としてだけでなく、好きな衣装のイラストならば細かな意匠をじっくり眺められることもできるわけで、細部を楽しめることは間違いなく一つの大きな旨味でしょう。

が、カレンダーを購入するに至るまでのウキウキワクワクを振り返り、強調しておきたいのは、選ぶことそのものの楽しみがとても大きいということです。
プレイリストも然りですが、無数の選択肢の中からいくつかだけを選んでできた詰め合わせは、それだけでかなりの意味を持つものです。加えて、今回はカレンダーですから各々がその月に対して抱く印象が反映されることになります。僕はP仲間と通話しながら選んでたのですが、「年度」で生活が回っている感覚の人だと4月始まりなので大晦日と元日は切り替わりのタイミングという感じがしないという違いが露わになって、なかなか面白い発見でした。
こういう感性は各々が生きている世界への解釈と言いたくなるようなもので、人間が滲み出ます。しかしこのような各々の感じ方は、そもそも意識するのが難しく敢えて言葉にされにくいものです。だからこそ、イラストの厳選という作業を挟むことで、自分の「当たり前」を反映でき発見が生まれるのだろうと思います。


さらに、テーマがシャニマスとなれば、反映されるものは一層意味深いものになるはずです。シャニマスは様々な問題に向き合ってきましたし、それだけ多くの含蓄があります。

シャニマスから何を受け取ってきたか。
どのように向き合っているか。
何を尊重しているか。
何を美しいと思うか。
何を自分自身のシャニマスとして提示するか。

12枚しか選べないのはかなり厳しい制約ですから、力をいれて厳選した成果物は深い意味が込められることになるはずです。このnoteでは、僕が悩みに悩んだ成果をお示ししながら、カレンダー選びが楽しかった話をし続けることになります。なんと言っても僕が話したいので。
そして、あわよくばいろんな人が選ぶだけ選ぶきっかけになればな(そして見せてもらえたらな)ということも考えています。なんと言っても僕が聞きたいので。


さて、カレンダーを選ぶにあたって絵柄で決めたものと、コミュの内容も込みで決めたものとがあります。
以下で、それぞれの月にそのイラストを配置するに至った懊悩を書き連ねていこうと思うのですが、場合によりコミュ内容に言及します。

あらかじめ目次を用意しておきますので、なんとしてでもネタバレを踏みたくない方は、なんらか自衛をしていただければと思います。
一応、こちらからの配慮として、コミュのスクショは載せないようにしますので、薄目にして高速スクロールなどをしていただくことで飛ばして次を見れるような設計にしているつもりです。


コンセプト

まずは、どういうテーマにしたのかです。たとえば担当アイドルが一人だけであれば、全部その子のイラストにするというのは手です。一人に焦点を当てることで生まれる意味もあるでしょう。また、選択肢も狭められるのでかなり決めやすくなります。
が、困ったことに僕の場合は「特に好きなアイドル」がいっぱいいます。摩美々のことはすーーーごい好きですが、自分が透を入れないのは意味わかんないですし、だったら甜花ちゃんだって来て欲しい。そういう感じなので特定の一人で決める路線は消えました。

代わりに一旦、全員を揃える方向で考えました。
しかし、12枚しか選べないのは本当に厳しい制約で、7ユニット1枚ずつ揃えるだけで残りは5枠になってしまいます。それもユニットの一部メンバーだけが写っているイラストは採用していない場合での計算です。
また、僕の好きな【ナツイロ☆アフタールクール】なんかは果穂と夏葉が大きく写っていて他三人が小さいという構図です。これ自体でとっても良い絵なのですが、せっかくの良い絵なのに12ヶ月の中で樹里ちゃんが出てくるのがこの小さく写ってるきりになってしまうと、不本意な意味が生まれてしまいます。

【ナツイロ☆アフタールクール】

加えて季節を合わせて採用しようと考えていくと、最終的に解けないパズルと向き合う羽目になりました。
ウンウン唸り続けてはや数時間、すでに注文し手元に届いていた先達のお言葉をいただき、どうやら好きなイラストを大きくして見れるということを大事にした方が良さそうという結論に至りました。そして心機一転、覚悟を決めて「俺のシャニマス」を作ることにしました。一番大変なやつです。

この時点で、自分のシャニマスと言いながらカレンダーに登場しないアイドルがそれなりに出てきてしまうことが確定しました。ゆえにこれから幾度となく血の涙を流すことになります。
しかし、都合10時間以上悩み抜いた末に出来上がったものは僕の目には完全正解で、このカレンダーを使うことになる未来にも同じことを思っているのかどうかがすでに楽しみになっています。
それではいよいよ、各月のイラスト採用理由や込めた思いなどを順に述べていくことにします。



1月  霧子【午・燦・娘・娘】

これはコミュに準拠して1月に採用しました。
ざっくり話のおさらいですが、大晦日から年始にかけての話でした。イベコミュ『明るい部屋』に出てきた奥の部屋にあった古いソファーを霧子の両親の働く病院に運ぶ場面がイラストになっています。そもそもイラストがかなり好きで、どこかに入れたかった一枚です。冬の引き締まった空気感があらわれていて、静寂と寒さと明るさが共存しているこの雰囲気がとても綺麗です。

ここにシャニマスを代表させてもいいくらいの趣を感じてしまうのは、やはり『明るい部屋』が屈指のレベルで好きなだというのも一つの理由だと思います。しかしそれだけではなく、コミュの内容としてもシャニマスらしい良さを感じます。
知らない誰かが大切にしていて、誰かと一緒に多くの時間を過ごしたであろうソファーを、今度はまた別の誰かのもとに届けるかたちとなっており、それを助けるのがアイドルたちの手であるというのがとても示唆的です。言うまでもなく「届ける」とは『はこぶものたち』のキーワードですし、『YOUR/MY Love letter』では想いの力は弱いから何度でも伝えてあげてください、と人に届けることのままならなさに敏感に向き合っています。
自分自身が頑張ってる姿が応援になる、など自分の持っているものによって誰かを励ますことも一つのアイドル像でしょうが、それとは別の仕方で、誰かにとっての大切を誰かに届けるアイドル像にも目を向けていると理解しているため、ソファーを運ぶ(それも楽しそうに!)アンティーカにとてもシャニマスらしさを感じました。

さて採用するのは確定として、これを12月と1月のどちらに採用するかどうかでだいぶ悩みました。僕の中では12月は年の終わりで1月は始まりなので、それぞれに意味は変わってきます。
コミュも比較的前向きで未来を明るく見据える方向性なので、年末に置くならば区切りを迎えるまでの終盤の時期が、過去を振り返るための時間というよりは新しい日々に向かうために胸を躍らせる時間になってきます。他方、年始ならば「これから始まるぞ」という意味合いが強まります。最終的に1月に採用したのは、このカードならば単なる始まりではなく、過去の蓄積のうえで新たな日々を紡いでいくという過去との向き合い方ができそうだったからです。
自分はわりと何を積み上げてきたかをうっかり無視しないようにしたいと思っていて、他方で過去を振り返るあまりセンチメンタルに飲まれないようにしたいというスタンスでいます(あんまり説明うまくできずもどかしいですが……)
このカードは、ソファーの過去を大事にしたうえで、新たな場でソファーがまた始まるのをアイドルが助ける場面になっていますから、自分にとって励ましや導きになります。始まりの月にこのカードを置くことは、まさに自分にとってのシャニマスとなるわけです。



2月  甜花【お日様染めのマリーナ】

どうしても甜花ちゃんを入れたくて結局この1枚絵にしました。ちなみに【Feel Like Flower】(団子を持ちながら夜桜を見上げるイラスト)もすっごい惹かれて、3月の枠が空いてないなら12月に置く案も考えながら身を捩っていました。
自分のシャニマスを作るためには甜花がなくてはいけないという強い希望があって、お気に入りの甜花プロデュースカードからどれかを採用したかったのですが、わずかなりとも選択肢の幅があったせいで他の月との兼ね合いを優先して2月に甜花を選んだ節はあります。しかし、直感的にアリだと思いながら選んだのも事実なので、その良さの言語化を試みてみます。

自分としてはバレンタインも興味ないので「特に起伏のない肌寒い日々」が2月の印象でした。ともすれば内向きで動きの硬くなりがちな日々も、人と人とのあいだにたゆたう静かであたたかな時間ならば、2月という素材を美しく化粧直ししてくれるような気がしていました。
それが具体的に実現されているなと思うイラストがいくつかあって【お日様染めのマリーナ】はその一つです。凛世の【ロー・ポジション】もかなりの、かなりの強豪でした。どっちもイラストとコミュがすっごい良いので、ここで血の涙を流しながら凛世を切りました。結局甜花にしたのは諸々のやむなき事情からですが、2月にこの甜花を入れることで生まれる意味はやはり大きいです。

イラストの場面は、プロデューサーを待っている甜花がゲームをしようと思ったけれど、景色が綺麗でぼんやり眺めていたというときの一枚になります。ここに表れている甜花の良さについての話は以前にしたので割愛します(この記事)。2月という活動性の低くなる時期に【お日様染めのマリーナ】を置く意味に話を限定するなら、端から見ればあたかも何もしていない時間も甜花にとってはゲームよりも心惹かれるひとときであったということが大事で、落ち込みがちな気持ちを前向きにしてくれます。
自分は寒さにとことん弱く何もできなくなりやすいのですが、そのことが何の成果も生み出さずに時間を過ごしていることへの苛立ちに変わることがしばしばあります。もちろんさぼりっぱなしで良いとはならないのですが、今の自分が本当に何もできてないのかを問い直すきっかけにはなるはずです。布団の中で温まっているならばその温もりを享受していて、それは冬ならではの心地よさでもあるわけで、何かをできてる/できてない の二分法に陥らないで日常生活をあたたかく見つめ直す視座を、甜花がこちらに向ける幸せそうなまなざしが与えてくれる、そんな期待を少しだけ込めています。



3月  摩美々【スプリング・フィッシュ】

これはシンプルにイラストが好きだったので入れました。
アイドルが小さく描かれてる絵なのもあり、大きくして眺めたい絵と思ったのも選抜の理由です。

3月や4月はやはり桜が入ってくるイラストが強く、愛依【うちくる~?】や甘奈【Cherry Jelly】なんかもすごくよかったのですが、桜は4月に譲りました。3月は暖かくなってきて気持ちが高まってくる時期だなぁという印象が強く、植物によっては開花時期だったり虫が出てきたり、ちょっとずついろんなものが元気になってきて、始まるぞ~という感じのイメージがあります。【スプリング・フィッシュ】は春らしいほのかに暖かい空気感を描いていて、みんなも楽しそうだし、いよいよ始まるぞという高揚感がとても好きです。先ほどから振り返ってると、どうやら自分はイラストの温度を重視していますね。プチ発見です。

私ごとではありますが、このイラストを眺めることになる3月に学生生活が終了し、就職することになります。やたら長く大学に居座ったのでさすがに心残りは感じていませんし、就職先も今働いているところに正社員で入るだけなので不安もなく、こう、晴れやかな気持ちで高揚感に身を任せているアンティーカを3月に置いたのは半ば願掛け的なものになります。一般的な3月というよりは、ごく個人的な事情を横目に見ての採用となりますが、なんと自分専用のカレンダーなのでそれが許されます。最高です。

ところで、高揚感に身を任せてと表現したわりに摩美々の表情がなんとも言えない雰囲気なんですが、全身全霊ではしゃぐのではない満喫の仕方って感じがして、とても肌に合います。摩美々はなんかすごく共感して安心してしまうので、そういう意味でも摩美々のことが好きだし要所に置きたくなります。



4月  真乃【花風Smiley】

コンセプトを自分のシャニマスにした以上、真乃を選ばないことがありえなくなりました。
4月はシャニマスにとっても自分の生活にとっても始まりの月ですし、真乃の誕生日ですし、自然な流れで決まっていました。
本当言うとこのカード持ってないのでコミュの内容は知らないのですが、桜とピーちゃんとに囲まれてこんな華やかな笑顔を見せてる真乃、絶対ストレートに良い話じゃないですか。だから大丈夫です。

僕はあんまり真乃のこと話してこなかったんですが、それは独特の難しさがあってうまく考えられないから黙っているというだけで、シャニマスが好きっていうのと同じくらい漠然と大好きなんですね。
真乃についてもイルミネについても思うことですが、何か際立った特徴があって魅力になっているのではなく、何が強みかわからないのに凄く綺麗という印象があります。個人的には正多面体が何も突出していないからこその美しさを実現しているのに近いものを感じています。あるいは、何かの伝統芸に秀でている人が、高等テクニックを披露することによってではなく全く無駄のない所作によって凄みを見せつけていることの方が近いかもしれません。真乃はなにか、そういう凄まじさを感じつつ、天真爛漫な笑顔で癒してくれたりもするのだから、さすがだなぁと敬意を表してしまいます。

4月に真乃がいるということに思いを馳せると『catch the shiny tail』の「真乃が真ん中に立っててくれると、俺、そのことを思い出すんだよ」という例のセリフが沁みます。
プロデューサーの言う「そのこと」とは「みんな特別だし、みんな普通の女の子だ」ということでしたが、それに限らず真乃が真ん中にいてくれると大事にしたかったことをもう一度大事にできるような気がします。4月が年の中心というのも不思議な感覚ではありますが、一番目立って華やかな季節ではあるわけで、そこに真乃がいてほしいなという気持ちから、ごく自然な流れでここに真乃に来てもらいました。



5月  透【つづく、】

僕の場合、シャニマスをやっていてある意味で一番もっていかれるのが透です。なので透が選ばれるのは必然ではありますが、このカードの場合は思い出補正も込みでのエントリーとなります。
自分としても大きな発見であり、反響も大きかった「浅倉透の時間意識」という記事がありまして、この直後に出てきたのが【つづく、】でした。ガシャ演出の方では、ビルから落下した透が逆再生されて元に戻る映像が流れてきて、時間が巻き戻るかもしれないという透の特異な時間感覚がもろに出ており、記事を出したタイミングとぴったり重なったことにうち震えました。それがちょうど5月くらいの出来事だったのでした。

透の時間感覚については、普通と違っていて面白いといった程度のものではなく、極めて重要な意味を帯びていると確信しており、個人的にずっと向き合っている一大テーマであったりします。そのため自分のシャニマスを作るにあたって、どの透を入れるのかを考えたとき、やはり自分がこだわっている時間にまつわる主題を代表させるのがベストであろうという判断から【つづく、】を選出しました。

なお、5月に持ってきたのは思い出補正からではありますが、きれいに噛み合ったなと思うのは4月の真乃と隣り合わせになっていることです。めちゃめちゃ主観的な印象ですがシャニマスのセンターが真乃ならば透はちょうどその裏側にいて、表立って見えてこない思想的ないし感性的バックグラウンドの中心にいる感じがしています。
シャニマスのやってきたことは一方では真乃やイルミネのような正統派の良さを実現しており、しかしそれとは反対方向にも延びていて、その最たるが透であるような、そんな感じです。プラスとマイナスというよりは実数と虚数みたいな、それくらいの、なんか、イメージです。
この感じが伝わるかはさておき、自分の感覚を当てはめるならば4月真乃に次いで5月に透がいるのは妙に納得感があり、とても気に入っています。



6月  霧子【雨・雨・電・電】

近年は必ずしも6月が梅雨の時期でもない感じがしますが、とはいえやはり6月は梅雨のイメージが強く、実際にまぁまぁ降るはずなので梅雨関連のイラストを採用しました。というよりも、雨を上手く使ったイラストが多すぎて6月はどれか一枚を採用するための激戦区となっていたのが実状です。
たとえば真乃の【花結びゆくゆく】は最後まで悩んだ一枚で、ちょっと泣きそうになったときにちゃんと泣ける真乃だからこそ次へと進んでいける、みたいな話ですが、涙ぐむ真乃を取りかこむ雨粒が光っているのが効果的な演出となっていて味わい深いです。
他にも色々候補があるなかで霧子を選んだのは、端的にコミュもイラストも大好きだからです。やっぱり大きい絵にできるのだから好きなものを選ぶのも大事です。あと、真乃のやつだと泣いてるところを1ヶ月飾るのもなぁという感じで霧子に軍配が上がりました。

霧子のコミュの良さを言葉にするのには独特の難しさがあって、何がどう好きとは言いにくいんですが、この話だと「繋がり」が霧子らしく描かれているのが好き……なんだと思います。
100円を入れて公衆電話から電話をかけて、プロデューサーが迎えに行くまで切らずに通話を続けるのですが、言ってしまえばそれだけの話です。ただそれだけのことがじんわりと良いのがすごいところです。

敢えて気づいたことを述べてみれば、この通話をするのに100円玉を投入していることが大事そうです。それが意味するのはこの繋がりを金銭的な価値に還元できるということではなく、無料ではないことというか、湯水のごとく垂れ流していい時間ではないことのような気がしています。もっと言えば「湯水のごとく」と言われる「湯水」もそうですが、当たり前に見過ごされるありふれたものも、きちんと存在しているということを思い出させるような、そういう良さを感じます。そう考えてみれば、お金を払っているというよりも、硬貨という重さのあるものを自分の手で入れていることに、いわく言いがたい美しさを感じます。

加えて良いなと思うのは、霧子が電話ボックスの中で雨から守られながら外とつながっているところです。霧子は大切にされたまま、しかし透明な壁に囲まれているおかげで閉鎖的ではなく、実際に霧子は雨音を聴いていますし、プロデューサーと通話をしています。そのように閉じこもるでもなく身をさらすでもない絶妙な身の置き方が、良いなと感じるもう一つのポイントです。



7月  透【国道沿いに、憶光年】

これも好きだから入れた一枚です。あまりコミュにちゃんと向き合えていないのが正直なところですが、イラストがとても清々しくて好きで、夏の暑い日にこんなんみたら爽快だろうなというくらいの気持ちで採用しました。
透はたまに、LPの映画館で叫んだりするのとかもそうなんですが、感情的なもやもやを爆発させるような表現を、言葉によらず全身で体現するときがあって、このイラストでやっている仕事も同じ気持ち良さを感じます。

基本的には透の言動に惹かれていて、何か凄まじい事が起きていると思わずにはいられないのですが、最近は声色を含めた表現にも惹かれています。実はこれには明確にきっかけがありまして、それというのが4thのライブで歌われたノクチルの楽曲での透ソロパートです。これが本当によかったんですよね。透役の和久井優さんが本当に凄かった。
のびやかで一切無理がなくクリアな高音が、曲線的で透きとおるように綺麗で……。
一撃で和久井優さんの大ファンになりました。歌い方で浅倉透を演じることができる人が浅倉透役をやってくれていることに畏敬の念すら覚えました。その和久井優さんが【憶光年】が予告で示される回のシャニラジ?で発言されていたことが印象に残っていて、ウェデイング衣装ではあるんだけどそのことを忘れるくらいお芝居が楽しかった、ということをおっしゃていました。
その話がなぜかとても嬉しくて、ずっと残っていて、だからこのイラストは透の良さを伝えるとともに、和久井優さんへの敬意を思い出す、自分だけの特別な一枚であったりもします。



8月  恋鐘【ビコーズ・ラブ】

シャニマスで一番好きなイベコミュを決めることは、すごく難しいと思うんですが、僕の場合ひょっとしたら『アイムベリーベリーソーリー』になるかもしれません。それくらい好きなイベントです。

これまでもわりとコミュに紐づけてイラストを選んでいるところがあり、まぁ強く関連しているので仕方ないところではあるんですが、そうなってくるとイベントの一枚絵はかなり強くなってきます。うっかりするとイベントのばかり選びたくなってしまうので、全体的なバランスを考えて8月にこちらを採用しました。
1月はじまりのカレンダーとしては真ん中にあたる月に再び真乃を置けて、しかもそこにSHHisがいるのが自分のシャニマス観としてもしっくりきます。時期的にも夏の話なのでおさまりがいいです。加えて摩美々もおり、ちょこ先輩も恋鐘も霧子もかなり好き(この「かなり」はだいぶ「かなり」)なのでそこも嬉しいポイントです。

コミュについては別のnoteを書いたことがある(こちら)ので割愛としまして、イラストもとても好きなのでそっちの話です。届いてみての感想なんですが、大きくしてみると印象がけっこう変わりますね。
前々から気にしていたのは、全体的にモノクロ風の色使いのなかで摩美々の腰紐の黄緑がやけに鮮やかなことで、しかしそのわりに目を引かないのが面白いなと思っていました。いざ紙面にして引きで見てみると、当初の印象以上に恋鐘の喪服の黒さがはっきり目立ってきて、全体として引き締まる感じがします。また、砂浜に落ちるカモメの影や右側の海などにも目が行き、どこかに情緒を隠しているような趣きを感じます。
届いた直後に床に広げて眺めていたんですが、縦にして見るとまた印象が変わってきそうな面白さがあります。これも紙ならではの楽しみ方ですね。



9月  摩美々【真・TRAVELER】

一番好きな摩美々のイラストと言っても過言ではないこのイラスト、コスモスが咲いているので9月にピッタリのですが、実を言うと自分の誕生月であることで密かに完璧なセレクションとなっています。

評判を聞く限り、摩美々と言えばシャボン玉のやつ【アバウト-バイト-ライト】が可愛いと人気のようで、無邪気な笑顔を見せてくれるところが人の心を掴む、という感じなのかなと思います。最初から人懐こさが露呈している摩美々ではありますが、屈託無く笑顔を見せてくれるに至ったことが嬉しい、という面もあるのだと思います。わかります。
が、個人的にはそれより前に摩美々の屈託のない笑顔にやられており、それがこの【真・TRAVELER】であったわけです。ガシャ演出が出てきたときの僕の発狂具合たるや……
それまでも摩美々はいたずらっぽい笑顔を向けてくれることはたくさんありましたが、【真・TRAVELER】の摩美々はいたずらが上手くいった微笑みではなく、おだやかな微笑みと言うべき種類のもので、言うなれば油断した表情であったわけです。いたずらというコミュニケーションツールを挟む必要のないほどに気を許していることが、うっかり出てしまったのがこの柔らかな微笑みであり、それが示しているのはアイドルになって一緒に過ごしてきた日々が摩美々にとって安らかなものであったということになります。街を彷徨っていた摩美々がアイドルとしての日常を帰る場所にしてくれている。こんな、こんなプロデューサー冥利に尽きることってありますか……

実はコミュの内容も、日常生活のなかで出会える何気ないものに目を向けるような話になっており、ガシャ演出ですでに刺さっていた自分としては「摩美々Pにはわかンだよなぁ~」と鼻が高くなるイラストでもあります。逆に言えば、そういう物語性がぎゅっと凝縮されている絵でもあるわけで、やっぱりこの絵がとっても好きです。あとお洋服がとても好みです。



10月 樹里【モーニング・グロウリー?】

カレンダーに入ってこないユニットが発生してしまうのは仕方ないと割り切っているんですが、どうしても放クラは入れたかったのでどうにか入れました。

ちょこ先輩なんかもGRADやLPで幾度となく泣かされていて刺さっていますし、果穂は最初にWING優勝した思い出の子ですし、夏葉のDamascus Cocktailは大好きでランニンググッズは夏葉カラーで買っちゃいましたし、凛世はコミュがとにかく良くて【ロー・ポジション】以外にも入れたかったイラストたくさんありますし、樹里は『階段の先の君へ』から『夢色ストライド、どこまでも』に至るまでを追ってくなかで最近とみにわかり始めています。

それぞれに思い入れがあって話したいことがたくさんあるんですが、それとは別に5人そろっている放クラがいてほしいという気持ちも強くありました。いまでも落ち込み気味な日には『五色 爆発』の合宿回を見て号泣したりしていて、あのまったき輝きに助けられています。「夢咲きAfter school」では「希望ばっかり膨らむ今が好き」なんて歌詞もあったりして、一切躊躇なく前へと進んでいく姿が本当に眩しくて、力をくれるんですよね。

未来を称揚するのは意外と難しいなと、よく感じています。
未来はどんどん無くなっていくものだから、未来に希望をもつことは若者の特権になってしまいかねないし、自分としては「もはや過去になってしまった未来だったもの」をどう扱うつもりなのかしらと、どうにも気になってしまいます。だからこそ『アジェンダ283』や『明るい部屋』で放クラが過去について話してくれていたことが本当に嬉しくて、そちらにも目を向けられる人たちがなおも未来へと屈託無く向かっていけることに心から打ちのめされます。
なりふりかまわず全身全霊で未来へ進む力強さがあって、だけどなりふりかまってみることも忘れないことに、良いユニットだなぁとしみじみ感じ入ります。

そういうわけで、放クラが全員揃っている姿が欲しいなと思っていて、持ってはいないんですがイラスト的にもすごく好きで、なんとなく10月っぽさもあるこのカードを採用しました。
が、驚いたことに夏葉さんの枕元の時計を見ると……

10月3日 07:30 っぽいんですよね。
ビタ当てしてしまったようです。嬉しい。



11月 円香【オイサラバエル】

不思議なことに選択の過程で唯一まったく動かさなかったのがこの円香です。

カードは持っていないのですが、ぜひコミュを読んで欲しいとのことで画面共有をしてもらいながら読んだことがあります。
コミュのなかで円香がひっかかっていることを簡単に振り返っておけば、花が美しいとされるのであれば、枯れ始めて美しさを失ったものは衰退して忘れ去られていく一方になってしまうではないかということでした。花をプリザーブドフラワーにしたりして保存することは、いわば美しいものを美しい姿そのままで崩さないことでもあります。そのようにしか美しいものの価値を守れないならば全盛期を迎えたアイドルという美しい存在を待ち受けているのは、それ以降ずっと続く下り坂の人生であることになってしまいます。
花は枯れるからこそ美しいという言葉も、このような疑問に答える用意がないならば、耳心地がいいだけの綺麗事にすぎません。花が落ちても枝葉だけでもしっかり生きているのに、人は目立って美しい花にばかり注目し、それ以外の時期については曖昧に流してしまう。このことへ向けられる疑問の眼差しは極めて重要なものであろうと思います。

円香の言葉遣いから「美しいもの」に主たる関心があるとわかりますが、論点としては様々な場面に当てはまることだと思います。物事の推移にはピークがあり、最高峰を過ぎればあとは緩やかに衰退していくだけという見方は、意外なほどわれわれの思考に浸透していると思います。
たとえば、まさに11月頃になると今年もあと2ヶ月弱であることに漠然とした焦りを覚えることがあります。「このまま何もせずに一年が終わってしまう」と気にしたりするものです。このとき12月は明確に終わりとして認識されています。しかし、言うまでもなく大晦日を過ぎても日々は続いていきますし、いざ12月になってしまえば「終わってしまう」ことに伴う焦りは忘れられていたりします。
だとすれば、ゆるやかに衰退していくようなイメージに襲われるのは、終わりを漠然と意識するときに限られるかもしれず、美しさを全盛期とみなしたくなるのも始まりと終わりをやや過剰に意識するものの見方に伴うに過ぎない、と考えたくなります。

11月に感じる妙な焦りと、円香が【オイサラバエル】で疑問を抱いている美しい全盛期とは深いところで繋がっているように思えて仕方ありません。
そしてこのことへの疑問を残しておくことは、使い潰すことなくアイドルを売り出そうとするシャニマスにおいても、いつまで経っても未来へと歩みを進めざるをえない我々にとっても、極めて重要なことであろうと思います。



12月 めぐる【小さな夜のトロイメライ】

12月が一年の最後であるという感覚はあるのですが、それを何かの終わりとは思いたくないみたいな気持ちが一方にあります。だから、12月をただ過ぎていく日常とみなすのは白々しいですし、年末を大げさに捉えるのも落ち着かないという感じです。

そういう感覚に完璧にはまったのが【小さな夜のトロイメライ】でした。
実は発注直前に【pooool】から変更したのですが、これで最後のピースが埋まったという手応えを感じました。

直前に滑り込ませたものの、寒い時期に採用したいたいなと思いながら場所を見つけられず泣く泣く断念したくらいには好きなイラストでした。
真冬らしいキンッキンに冷えた空気のうちで暖をとっているめぐるという構図がとても好きです。気を緩めてぼんやりしているけれどもプロデューサーに気づけばいつもの天真爛漫なめぐるに戻ることと、冷えた外気のなかに飲み物や吐息といった温かいモチーフがあることとが、静かさのうちに潜む熱という感じで表現されているのかなと思えてきます。

イラストの雰囲気も大好きなんですが、採用理由として大きいのはむしろコミュの内容です。プロデューサーが同級生と飲んだ帰りにめぐるとばったりと会うのがイラストの場面です。めぐるが昼間に図書館に友達といたという話や同級生と飲んでいたことが重なって、ちょっと昔のことを思い出すことになります。
ですが、思い出に浸るというほどではなく「ちょっと過去を振り返る小休止」くらいのひとときとなっています。この小休止の感じがコンビニ前で一息ついてぼーっとしているめぐるのイメージに重なるところもあり、偶発的に生じた温かい瞬間にも思えてきます。

12月にこのめぐるを置いてみると、今年のことをちょっと振り返りながらも、大げさに一年をとらえることもなく、また明日を頑張るためにもちょっと一息ついていい時間といったくらいの温度感になるだろうと、そういう年末にしたいなという期待を込めて、めぐるに最後を飾ってもらいました。



みなさんもやりましょう

以上、それぞれの月のイラストと採用理由や思い入れなどを滔々と述べてまいりました。
めっちゃめちゃ悩んだので、それなりのボリュームと密度になりましたし、自分がシャニマスをどう理解しているかを一度かたちにするいい機会にもなりました。とっても充実しました。

さて、こうなってくると他人のものも眺め回したいところです。
無数の選択肢のなかから12枚を厳選することは、たとえ意図せずとも意味が発生してきてしまうもので、いうなれば技能を必要としない創作活動としての側面があると思います。
イラストに心情や思想が反映されているように、厳選の成果物にも作者の人間性が表れてくることでしょう。そしてそこには自分ひとりでは思いもよらなかった観点が隠れていたりするものです。とりわけシャニマスが題材ですから、シャニマスが他の人に与えてきたものを見れるとしたら読解のうえでもありがたいです。

そして何と言っても単純に楽しいので。自分で決めるのも人のを見るのも。
選ぶだけならタダですし、購入するならするで3日くらいですぐ届きますし、受注期間はまだまだ先(2月末)まであります。
直感にしたがって即座に決めたものでも、身を捩りながら決めたものでも、それぞれの味わいがあるはずですから、是非! 是非やりましょう!
みなさんのシャニマスライフがきっと充実するはずです。是非!

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