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青春はそう簡単に終わらない

永遠を「とわ」って呼んだ 信じたいことを信じて死んでいきたい

自分だけ不幸みたいな顔でする別れの合図に笑ってしまう

(殺すより殺されたいな)痛みならぜんぶ背負えるひとの眼差し

どうしてもゆがんでしまう思い出を反対側にねじ曲げてみる

あの夜の続きみたいな夜でした冗談みたいに月があかるい

泣きながら傷をつくった剃刀が錆び付いている 生きてるんだね

あとがきのように解説してしまう日記をいつか燃やしてほしい

まちがいの途中でうっかり愛し合う今すぐ消えてくれよ残像

狭い狭い湯船の縁を覚えてる あまかった熱、長かったキス

取り返しつかないことをし尽くして、それでも巡る隙間の季節

ダンサーインザダークみたいなラストシーンわたし好きだし、うん、大丈夫

こんこんと眠りに落ちる直前に浮かんだ顔は君だったのに

ホッチキスばちんばちんと止めながらどこにも行けないままでわたしは、

そこぬけに明るいですねと褒められてふーんと思う ふーん、そうかな

ありがとうございますって言ったあとちゃんと笑った 仕事ですから

人前で上手に泣ける友人を優しくやさしく慰めている

似たような言葉にばかり救われてそれもいいやと思ったりする

削り取られていく心のまるい場所、涙のしょっぱいところ、踝

木造のアパートに住む夢がある大きな声の母と離れて

あ、虹。 空白まみれの独り言 消えたいことはいけないことで

ふたりっていいよね、なんか、ひとりよりあたたかそうな音がするよね

許される権利は二度と欲しくないわたしをわたしに当てはめるなよ

でたらめな愛にまみれた人ごみで聞こえた声にふりかえる だれ

神様はやっぱりいないコンタクトレンズの奥で雨を見ていた

目頭をつまんで変顔 笑ったら世界が正しい角度で揺れる

もうずっと息を止めてるいつどこで誰が死んでも泣かないように

そういえば蛍光灯が切れていた 宇宙みたいな部屋の隅っこ

吐瀉物を踏んでしまったパンプスを脱いでそのまま裸足で帰る

青春はそう簡単に終わらない白線なんかいくらでも踏む

だからもう永遠なんて綺麗事信じるふりをしなくていいよ


2018/9 歌壇賞応募作

#tanka #連作

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