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クソゲー谷からの帰還者(クライマキナ/CRYMACHINA)
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前作から改善された箇所と、前作から更に伸ばされた美点と、改善はされたがジャンルの進化に付いていけてない箇所とが混在している。前作プレイヤーに採った「何処が気に喰わなかったか」的なアンケートは無駄では無かったのだろうが、それでも同種の難点も依然存在している。
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本作の手触りは最悪だ。自機は3機とも挙動が軽過ぎて制御し辛く、派手過ぎる演出が判断を妨げる。敵はモブもボスもボッ立ちの時間が長く、戦闘は単調。埋め合わせる様に一発の被ダメが極端にデカく、おまけに大半の敵がスパアマ持ち。そのくせ打撃感が無く、ダメージを与えている感覚も受けている感覚も極端に薄い。素振りの様な手応えで、気が付くと死んでいる。
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単調だった前作の戦闘に色々な要素を組み込んだものの、どれも互いに噛み合っておらず、戦闘システムの水準は現代レベルに達して無い。パリィとかジャス回とか出来る事は増えたのに、結局脳死で攻撃ボタンを連打し、敵が光ったら回避ボタンを押すのが一番。「本作の戦闘はソウル系だ」と騙るレビューを多数見るが、明らかな間違いだ。本作の戦闘は被ダメを極大化した無双ゲーのプレイフィールであり、ソウル的な刺し合いなど一部のボス以外期待出来ない。
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そして、戦闘の最悪さに抗い、総合評価を一人で押し上げているのがストーリーの『尊さ』だ。前作のウリだった胃の痛くなる修羅場を、そのまま百合カプ達のイチャイチャに置き換えたと考えれば良い。脚本も、物語を捨てて『尊さ』に特化している。
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この『尊さ』の表現が、戦闘の駄目さを忘れさせる程の存在感を持っている。血縁の無い家族がコミカルな会話と過酷な試練を絆に変えて行く様は、プレイヤーの胸の瓦礫に『尊い』の濁流を流し込む。育んだ疑似家族愛が脅かされる展開に、プレイヤーは胸を痛めつつも目が離せない。
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楽し気な会話を一つ一つと、悲し気な会話も一つ一つと積み重ね、家族が繋がりを強固な物にしていく描写。それが本作の核であり、ゲームの全てがそのためにある。戦闘もストーリーも『尊さ』を描くための舞台装置に過ぎない。
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「最悪な戦闘パート」は、本作が尊さゲーであるという前提を敷くと、漸く存在意義が判る。戦闘中に起こる仲間達からの応援やプレイヤーのテクに返ってくる反応等も尊さ演出の一つ。戦闘パートはアクション要素であると同時に大がかりな会話パートでもあり、ビジュアルノベルでは得られないタイプの『尊さ』を演出するための場だった。
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「良質なお話とストレスフルな戦闘」という構造は前作から変わってない。が、『胸糞』の代わりに『尊さ』を詰め込んだ事で人を弾く要素が取り除かれた。前作は胸糞系のお話が戦闘パートの駄目さと噛み合ってしまい、プレイ意欲を削いでいた。終ぞクソゲーの谷底から這い上がれなかった悲運の野心作は、美点を磨き上げる事で生まれ変わった。
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ただそれでも尚、尊さゲーである事を差し引いても尚、戦闘部分の進化の乏しさだけは如何ともし難い。噛み合わなかった新機能を噛み合わないなりに弄り回し、現代的なシステムに仕上げようとはしている。いるのだが、この6年で起きたフルプライス帯ARPGの洗練を差し引くと現代水準に仕上がっているとはお世辞にも言えない。
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成長に上限がある(簡単になり過ぎない)や、デカい被ダメほど回避が簡単になっている等、「程々の難しさの刺し合いを提供しよう」と言う調整は施されている。が、それらを未洗練のまま押し込んだ結果、プレイヤーが画面から得る直感や進行に伴うプレイヤスキルの上昇度からレベルデザインが乖離している。これではARPGを期待した新規プレイヤーの幻滅は避けられないだろう。
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内部では様々な工夫と調整が走っているのに、最終的に出力される体験はガタのきた骨董品。正直、前作ファンで無い人にとっては1500円位が適正価格だろう。そこに「百合カプのイチャイチャのためなら◯◯◯◯円出せる」と上乗せた額内で買えれば、きっと幸せになれる。