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明日、WWWのステージに立つ。 これまで何度ここに足を運んだかわからない。ほかのどのライブハウスにもない洗練された空気感。 複雑な幾何学模様を投写する艶やかなライティング。 独特の勾配を持つ会場設計は、ここがもともと映画館だった名残りだという。 King Gnu、ものんくる、Kroi、Nao Kawamura、さらさ、かつてたくさんの仲間やライバルたちがこのステージを踏み、集まったオーディエンスを沸かせる様子を客席からジッ、と眺めてきた。 大抵の場合、彼・彼女らはスマー

    • 距離

      昨日知人とライン上でコミュニケーションに関する議論になり、そのやりとりの末、『どれだけ親しかろうが、どれだけ心を許していようが、最終的に他者は他者でしかない』という自分の基本信条が浮き彫りになった気がした。 〜〜〜 考えてみれば小学生の頃に両親が離婚し、母が働きに出るようになり、弟も当時は保育園通いだったため一人で家にいる時間が増え、その頃から家族という共同体に属している意識が希薄だった。 家では主にひとりで物思いに耽ったり、絵を描いたり本を読んだりして過ごした。 いわ

      • anthem

        HIP-HOPが苦手だった。 ラッパーなんて全員ヤンキーだと思っていた。 トラックを流してループさせるだけのなにが楽しいんだと思っていた。 自分とは一生交わることなんてないと思っていた。 〜〜〜 弾き語り系シンガーソングライターとしての活動を始めたばかりの頃、対バンのロックバンドの存在はサバンナにおける肉食獣に等しかった。 音量も物量もステージ上での華やかさもこちらより数段上手。千葉から出てきた地味な弾き語りアーティストの自分はさながら草食動物で、いつも彼らロックバンド

        • Black or White

          人生を変えた出来事はなにか? ともしインタビューで訊かれたら、 『2016年の暮れ、ツイッターで高木祥太からDMを貰ったこと』 と答える。多分。 --- 音楽を通じて関わる人たちに、DinoJr.のことをなにで知ってくれたのか訊ねると高確率で、 「BREIMENのBlack or Whiteからです」 と返ってくる。 (冗談抜きで、90%ぐらいの人がこう答える) 実際、いま付き合いのある半分ぐらいの人たちはBREIMENを通じて繋がったと言ってもまったく過言ではな

          音楽であることをやめて、

          歌は不思議だ。 歌にはその人のすべてがうつる。 リズムやメロディの揺れ、音の太さや煌びやかさ、 それらすべてが、その人自身の生きてきた道筋を 言葉以上に流暢に語る。 ぼく自身、ふと幸せを感じる瞬間や、 言葉では表せない痛みや虚しさに出会ったとき メロディが不意に口を衝く。 眩しい光を思わず手で遮ったり、朝起き抜けに ベッドの上で体を大きく伸ばしたりするように 生きる上での欠かせない身体機能の一部として 歌うという行為が身体に深く刻み込まれている。 そのような具合で、歌

          音楽であることをやめて、

          DinoJr. 3rd Album 『NO MAN IS AN ISLAND』 セルフライナーノーツ

          こんにちは、DinoJr.です この度、自身の3rd Albumとなる『NO MAN IS AN ISLAND』をめでたくリリースする運びとなりました。 曲ごとに一口エピソードとかちょっとした裏話とかそういうオマケがあったほうが聴いていて面白いよなと思うので、よかったらこちらと併せてアルバムをお楽しみください。 【 楽曲解説 】 01. No Man Is An Island アルバムのイントロを担うこちらの表題曲は今回一番最後に作りました。暗い湖面を夜明けの空に向か

          DinoJr. 3rd Album 『NO MAN IS AN ISLAND』 セルフライナーノーツ

          坊主、風邪、鈍痛、2022年

          2022年に突入してすぐに、珍しく風邪を引いた。 その日東京は大雪に見舞われ、ぼくの住む木造のワンルームはあわや吐息も凍りつくかのような冷え込みで、健康であることを唯一の取り柄に生きてきたおのれの小さな自負を、朝方37度の微熱が見事に打ち砕いた。 それぐらい、久しぶりの風邪だった。 二、三日安静に過ごした結果熱はすぐに下がり、外を出歩けるようになる頃には雪もほとんど目立たなくなっていた。路傍に並んだ小さな雪だるまたちの白い体は排気ガスでくすみ、道行く人はちらと一瞥するだけ

          坊主、風邪、鈍痛、2022年