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激動のMTGモダン環境を踏み倒して歩んだ

・はじめに

こんにちは。他人に指摘されてから初めて赤好きを自覚したネクロノートです。
今回は、いわゆる不屈の独創力デッキと呼ばれるコンボデッキと共にモダン環境を歩んできた道のりを語らせてください。

ちなみに私はライフ20の内19成分くらいがエンジョイ勢です。そのため「マジックに面白いデッキないかな?」という興味本位でいらした方に視点を置いてお話します。ここ数年を振り返る読み物程度にお考えくださいませ。


・変身エムラ期

攻撃時、相手は土地含むカード6枚を生贄にしなければならない。なんなんすかこれ。

MTG世界最強生物。「3ターン目にこのエムラクールが飛び出て来たら、きっと友達はビックリしてくれる」。そう期待した私が最初に組んだファッティ叩きつけコンボが、変身エムラです。

絵もPOPでCute。ちょびっとGrotesque❤️

クリーチャーを1体破壊する。お詫びとして、山札をめくっていって、最初に見えたクリーチャーを場に出す。んんん、へんっ!しんっ!(特撮感)

破壊=相手への妨害策? 上からめくる=ランダム?
そういうイメージありますよね。でも、違います。

山札の中のクリーチャーカードが、引き裂かれし永劫、エムラクール「だけ」だったとしたら。たとえ59枚めくった先の60番目に隠れ潜んでいたとしても、必ず「エムラクールが最初に見えたクリーチャー」になるのです。破壊行為を、あえて自分の盤面に対して行うのです。
これを当業界ではSSR確定ピックアップガチャと呼びます。

さて問題は、山札の中に踏み倒し先のクリーチャーしか入れられないという点です。当然連想されるのはクリーチャー・トークンとなりますが。
このデッキの制作時期は2021年頃。丁度私がMTGに復帰し、モダンホライゾン2と言う、なんだか凄そうなパックが出るぞ、モダンやってみたいぞと思っていた時期に重なります。

”変身”は、青。モダホラ2には――

青のカニっていつも変なことするよね。

カニが居ました。1ターン目にコンボの用意が始められて、しかも2/2のクリーチャー相手になら壁となり得る。
この0/3のカニに”変身”か、あるいはそれを赤に移した”異形化”を打ち込めば、お詫びとして15マナかかるはずのエムラクールがドーーーンと現れる訳です。

そこから若干の改良を加え、安い・逆転できる・楽しいをモットーに変身エムラの構築は完成しました。

変身について検索してて知りました。

もう一つの”雲変化”と言うカードは、変身を唱えたスタックでトークンが除去される事態を防ぐ効果があります。「飛行と呪禁を持つ」とありますから、ヒーローが変身して登場するまでの間攻撃されないお約束タイムが作れるのです。素晴らしい。
友達は大いにウケてくれました。「エムラかグリセルかガチで分からんガチャ始めるよ」「いやどっちもSSRじゃん!」という楽しい対戦となりました。今でも低予算ファンデッキとして組むなら面白いかと思います。

・不屈の独創力導入期

そうして”変身”で遊んでいる内に、どうやらこれはガチデッキとして認知されているらしいという、とてつもない情報を得てしまいました。
実際のところは変身を抜いて”不屈の独創力”と言う名の赤のカードに寄せた構築がモダン環境に増えているらしいとの事です。

1000円で買った後、3000円越えまで上がった。

効果的には変身/異形化の二種と似ています。細かい点として――
・アーティファクトも破壊対象に取れる(破壊に成功するとガチャが始まる)
・Xマナ支払いで複数同時に対象に取れる
・一旦追放してから場に出す
等の違いが挙げられます。

クリーチャーを対象に取ったスタックで除去されるのが嫌、として”雲変化”まで持ち込む有様でしたが、アーティファクトをインスタント除去できるデッキというのはそう多くありません。これは確かに対策しにくいコンボとして一段レベルアップしていますね。

クリーチャー・トークンかアーティファクト・トークンを場に出しておき、なんならX=2で唱えてエムラクールとグリセルブランドの両方を場に出しちゃおう! 5マナで23マナ相当の踏み倒しじゃい! と意気込んだ僕。
そんな都合のいいカードあるわけが……

カニは二度刺す。

居た。カニだ。
カニ・トークンと手掛かり・トークンを生み出すのだから、たとえどちらかが除去されてもガチャは回せます。なんてこったい。
先程の変身エムラに不屈の独創力を混ぜ込んだようなデッキでしばらく遊んでおりました。

場に出るか攻撃するたびに相手を滅茶苦茶に損させる恐ろしいクリーチャー様。

踏み倒し先をグリセルブランドから残虐の執政官へと変えてみたりと。
でもまあ、当然ちゃんとした大会に出るには力不足な訳でして……。

・5色独創力期

時期としては2022年~2023年の前半がピークでしたでしょうか。不屈の独創力がモダン環境におけるトップティアに上り詰めてしまいました。
一気に研究が進み、私も本格的に投資をしてファンデッキを卒業せざるを得ない状況になりました。だって望むとも望まないとも関わらず、トップティアを使っているのに中途半端だとカッコ悪いじゃないですか。

まずフェッチランド(強いレア土地)を買い揃えに走りました。”時を解す者、テフェリー”のような強力カードを集め、所謂トライオームと呼ばれる3色土地を駆使して、青赤+白の多色構成に舵を切ります。

しかし、それでもモダンの大会では勝てませんでした。当時の主流としては”レンと六番”が不可欠だったのです。

ラガバンを倒せたのも追い風だったね。

先程挙げたフェッチランドを使いまわすことが出来、最低でも4枚の土地を滞りなく展開したい不屈の独創力にはぴったりの相手でした。そのため、青赤白緑の構成へと進化を遂げます。

さらに、事件が起きました。スタンダードでも版図(土地の種類)推しが始まったのです。

5種類の土地が揃うと実質1マナの万能除去に変わる。右上の数字は飾り。

”力線の束縛”の登場です。これにより黒も足さざるを得ない状況が生まれてしまいました。
たった2色の青赤でキャッキャしていたのに、5色各色に対応したレア土地をかき集めるのにヒーヒー言う羽目となる。これもみな、対面の相手が苦悶の表情を浮かべるのが見たいばっかりに。君、性格悪くない?

5色独創力の最終型はこの辺りだったかと思います。
メインボード、緑は”レンと六番”専用色に。黒に至っては力線の束縛を唱えるためだけに用意されておりました。

プレイスタイルとしては守備的な動きを取ります。「10枚以上ある除去」+「相手との掛け合いを制するための打ち消し・妨害」が軸です。対抗呪文のような確定で相手のカードを止める術は持ち合わせておりません。相手の展開が早ければどちらかが息切れするまで除去コントロール的に振る舞い、隙を見てレンと六番や鏡割りの寓話等を差し込んでいく形が主でしょう。

スタンダードを遊ばれている方には意外かもしれませんが、MTGの下環境では、クリーチャー除去はそこまで多くありません。4マナ以下のクリーチャーを討ち取れる”致命的な一押し”や、上記デッキで私が用いたような3点火力の”稲妻”がメインでしょう。
クリーチャー除去はクリーチャーを除去する以外の場面で全く役に立たないという哲学的命題があるため、不屈の独創力に成功して”残虐な執政官”が出てしまえばほぼほぼ勝ちでした。
デッキに3枚しか入れていませんでしたが、3枚全てに喉首狙いが刺さって負けた、等という現象は一度も起きませんでした。

しかし……。ある程度、勝てはするんです。ただ問題は、トップティアの宿命として、対面する相手さんの方も警戒値を高めて挑んでくるという部分です。
赤系の土地をベースに受動的に振る舞い、時間稼ぎをしている。こうなるともう「私は不屈の独創力キャストを狙っています」と自己紹介しているようなものです。妨害札にも限界があり、例えば当時まだ禁止前であったインスタントタイミングでの続唱(なんやかんやあって突然4/4のクリーチャーが2体場に出てくるコンボ等)が猛威を振るい、毎ターン8点ずつ削られていく私のライフに悲鳴を上げていました。
どうせ”呪文貫き”か”稲妻”を構えているのだろうと知れ渡っていると、それを乗り越えられて好き勝手されるのです。

辛い……。友達とキャッキャしたかっただけなのに、いざ真面目にモダンの大会に出るようになると、不屈の独創力特有の「4ターン目以降、ソーサリータイミングでのコンボスタート」という枷が大きく圧し掛かってきました。正直スマートじゃないんですよね。

突然のアンブッシュが許される。

”急かし”のようなカードも試してみました。コントロール使いの方からは好評で「いつコンボが始まるのか読めない」との弁を得られましたが、変化球に注力したばっかりに除去コントロールとしての強度は下がってしまいました。トホホ。

さて、この不完全燃焼感を抱えながら、本当に私はこのデッキを使い続けるべきなのでしょうか。

・頑強独創力期

ついに最終回。デュエル、スタンバイ! ということで、様々な変遷を辿ったこのコンボデッキも、最終形態を迎えるに至りました。

パウパーみたいな値段で手に入るのもGood。

タッチカラーであった黒を二番手に据えました。”頑強”による墓地利用の導入です。
そもそも”鏡割りの寓話”の二章能力でカードを墓地に捨てる際、あまり有効な動きに結びついていなかったのが気になっていました。要らない土地を捨てて除去カードを探してくるような、極めて受動的な動きなのが。

ところが、頑強が手札にあると、本来踏み倒し先であった残虐の執政官を墓地から釣り上げることが可能になるのです。墓地はゴミ捨て場ではなく、コンボ利用地。「墓地へ送り込んでおく」という表現に昇華しました!

①コジレックの審問でハンデスをする。対抗呪文等を捨てさせておく。
②苦々しい再開を唱え、残虐の執政官をわざと捨てる。準備完了。
③頑強で執政官を釣り上げる。出た時能力で滅茶苦茶アドバンテージを稼ぐ。苦々しい再開に1マナ払って速攻付与。執政官攻撃時にアドバンテージを稼ぐpart2が起き、飛行によるダメージが5点入る。
→これで3ターン目11点のコンボ。たぶんこれが一番早いと思います。

もう一つ、残虐の執政官の相方も用意しました。

同じく、出るか攻撃するたびに滅茶苦茶土地を増やしてアドバンテージを稼ぐ。

”原始のタイタン”の入場だっっっっ!
これは土地カードをサーチ出来るため、山札から”溶鉄の尖峰、ヴァラクート”を確定で場に出すことができます。ヴァラクートは土地の”山”が戦場に出るたびに3点を与えるカードです。
……いいですか、山を場に出すだけですよ?
しかも、たとえ原始のタイタン本体が除去されても、土地であるヴァラクートを一度セットしてしまえば、ずっとコンボにリーチが掛かっている状態になり続けます。
先程のように速攻付与で3ターン目に攻撃できたら――大☆噴☆火。

そう。私が求めていたのは受動的ではなく、能動的にいつでも仕掛けにいけるコンボデッキだったのです。これにより――
・不屈の独創力ルート(メイン1)
・頑強ルート(メイン2)
・ヴァラクート噴火ルート(サブ)
・鏡割りの寓話無限コピールート(予備)
・レンと六番奥義ルート(ロマン)
計5つを無理なく内蔵した、スーパーコンボデッキの完成です。

割と器用に立ち回れる青や白を捨てたのは、最初不便に感じました。特に折角買った力線の束縛による万能除去を放棄した訳ですからね。
でも、このMTGというゲーム、一対一での攻防のやり取りが目に見えない勢力図として反映されているのです。面白いことに。
感覚として「まさか3ターン目に即投了もののコンボ仕掛けてこないよな? いや分からんぞ。こいつおもむろに大型クリーチャー捨て始めたぞ。独創力なのか頑強なのか全く読めねー」と印象付けるだけで、あんなに受け身だった5色独創力時代からは想像もできないほどに面白くなりました。

勿論、墓地利用に見せかけて不屈の独創力をしれっと通す場合もあります。その際は執政官が出てくるのかタイタンが出てくるのか本気で運ゲーです。SSR確定ピックアップガチャ時代に戻りましたね。

・黒船は地平線の向こうからやってくる

2023年後半~2024年初頭までは、上記の頑強独創力で愉快な戦いぶりを披露できていました。
しかし、この不穏なタイトル。モダン以下の環境に身を置いている方は予想がつくことかと存じます。

モダンホライゾン3、登場です。

赤は稲妻よりも”電気放出”が単体除去のトップに躍り出てしまいました。私のデッキ、エネルギーカウンターは使いません。
不屈の独創力は順位を落とし、代わりに赤白系アグロデッキが隆盛していきます。

「俺の猫をkillしたな!!」と突然キレる人。いや猫。

アジャニに代表されるような猫クリーチャートークン横並びデッキは、不屈の独創力とすこぶる相性が悪いです。執政官をポンッと1体呼び出したところで相手の猛攻は止まりません。それどころか、猫が死亡した誘発でアジャニが裏面のプレインズウォーカーに変身し、苛烈な攻め手を私に与えてきます。

あんなに悩んで頑強独創力にたどり着いたのに……。これじゃ変身エムラの最終形態じゃなく、相手に変身する隙を与えているよ……。

ということで、モダンホライゾン3を機に、私は一旦不屈の独創力デッキを小休止しています。もしかしたら構築の上手い方は回避方法を編み出しているのかもしれません。しかし。

ネタデッキかと思いきやガチデッキだった。
ガチデッキどころかトップティアにまで上り詰めた。
新弾が出て転がり落ちた。

この感覚を抱いてしまったことは否めません。

・おわりに

一つのコンボデッキを巡る軌跡、ザっと記してみましたがいかがでしたでしょうか。
最後だけションボリしてしまいましたが、決して悪くない、むしろ楽しいモダンの遊び方であったという点は声を大にして主張しておきます。
皆さんも環境変化により好きだったデッキが変わっていってしまう悲しみ、お持ちではないでしょうか。ま、カードゲームだからそういう時期もあるよね、と言えてしまいます。

ただ……ね。
初めてエムラクール叩きつけた喜び!!!!
苦しい守勢を縫って独創力を通した時の解放感!!!!
相手から構築の妙を褒めてもらえた!!!!
この滾る思いは一生ものだぞ!!!!

そう、胸にしまっています。少し泣く。

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