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no.149:グランドピアノを買いに行ったら

タイトルにもある通り、
先日、グランドピアノを買いに行きました。
(まるで、ネギを買いに行くようですが)

結果から申し上げますと
購入しませんでした。
(最近のトレンドとして、結果から公表しますよね、迎合します)


購入しようとしていたグランドピアノは
YAMAHAでした。

私の夢、最終形

結婚で実家を離れる際に
「アップライトピアノが邪魔だから処分するように」と両親に言われていたのでアコースティックピアノを手放して以来、様々な電子ピアノを購入し、海外にも持参していました。そして、日本に戻り念願のピアノを習うためにまた電子ピアノを買いましたが、やはりアコースティックで練習したいという気持ち100%満タンになり、買うことにしました。

しかし、

何故グランドピアノか?



1. アップライトピアノの購入歴がある
アップライトは過去、3万円で売却(というか引き取り賃)した経緯もあり、「また何十万もかけて同じものを買うのは・・・」という虚しさもありました。
しかし、昨今、ピアノ含め、物の値段はずいぶん高くなっています。私が幼少期に使っていたYAMAHAの新品のピアノ相場は30万円~60万円だったと思います。
けど、物価高、人件費、材料価格など高騰が極まって、この値段では中古しか買えません。

ピアノの黒い塗装「黒鏡面仕上げ」は特に輸出向けに海外市場を意識して日本で発明されたのは有名なお話

2.YAMAHAのお言葉が琴線に

YAMAHAのHP上の文句です
一緒に旅する友がいるなんて
リアルだって難しいのに
やっぱりピアノは友達です

■ 準備編

近所迷惑にならないか、100デシベルの音を部屋で流して、屋外に出て騒音をチェックし、ピアノの置き場所がシュミレーションしました。庭に面したリビングの一角がお隣もいなくて適しています。

お店でお値段のチェック、割引なども事前に打ち合わせ済み。来店予約をして、もうあとは買うのみ。勇み足でピアノ店へ向かいましたよ。

■ いきさつ


予定していたグランドピアノの半分の価格で、KAWAIの中古のアップライトピアノを購入しました。YAMAHAでもないし、新品でもなく、グランドでもない。全部違うではありませんか!
このピアノに「アン」と名付けました。
「赤毛のアン」からモジりました。

「アン」については次回お話します

さて、どうして、こんなにも準備をしていったのに
グランドピアノを買わなかったか。。。

というと、
お値段はクリアしているとしても
ビッグなコイツが狭いリビングに届いたら、存在感は抜群過ぎて、今後、万が一、何かあってピアノを止める事になったら・・・という迷いは100パーセント拭えてはいませんでした。
「やっぱりサイズも存在感も大きいな」

しかし、もう買う直前まで心が決まっていた時に

事件がおとずれました。


■ 事件発生

「ば~ん!」とピアノ店に入ってきたファミリー。
ふっくらとした、失礼ながら野暮ったい、仏頂面したお母さんと、お子さん二人、それにおじいちゃん、おばあちゃんが無言で入店してきました。

ピアノ店のスタッフが「こんにちは~」という穏やかな声を掛けても、お母さんは無表情で店内へ進み、お子さんたちは嬉々として店内をピョンピョンと跳ね回り、ありとあらゆるピアノに飛びついては、ボンボンと元気に音を鳴らし始めます。

店員さんが案内しようとする声も虚しく、お母さんは無頓着風情です。

予約客一人きりだった私だけの空間は終焉。店内はカオスです。

「きっと、育児に追われて疲れているんだろうな」
心の中で私はそう呟きました。
お母さんはお化粧もしていないし、お出かけ着というよりは、日常の疲れをそのまままとったような服装。それを見て、つい想像してしまいます。
「お嬢さんがピアノを習い始めたばかりで、電子ピアノを見に来たのかな?今はまだ、いつやめるかもわからない幼児期。アコースティックピアノなんて買わないよね」by私の心の声

ところがです。

突然、野暮った~いお母さんが「幻想即興曲」をアップテンポで弾き始めたのです。その指はショパンのエチュード、ベートーヴェンの「テンペスト」、ドビュッシーの「パスピエ(ベルガマス組曲)」へと流れ、すべて暗譜。ミスタッチはほぼゼロ。
子ども達はボンボンと相変わらずうるさくしていましたが、
私は唖然としました。
「上手すぎるでしょ」

なんか、一気に買う気が失せてしまいました。
新品のYAMAHAのグランドピアノ
どんなレベルの人が買ってもイイのですが
今の私の腕前じゃ、このお母さんの足元にも及ばない。
「こんなに上手な人がいるんだ」と思うと、なんだか急にピアノが欲しくなくなり、音楽への情熱が一瞬で冷えたような感覚。

「私って万年上達しないのかも」
「この先ずっとイマイチな演奏を続けるのかも」
「そもそも、クラシックのピアノって同じ曲を何百年も楽譜通りに弾いて、何が良いって言うの?弾けるようになる快感以外何かあるの?」
「ヨーロッパに居た人じゃないと、絶対に作曲家の思いなんか分からないわ、もっとヨーロッパ文学も読まないと」

完全にメンタルが弱って、脳内が不穏な空気に包まれてきました。
とっても虚しくなりました。

「ああ、もういいや。今はグランドピアノ、要らない」

気づけば、私は「え~っと、これ下さい」と言いながら、
KAWAIの中古、アップライトを指さしていました。

もはや、YAMAHAの明るいキラキラした音色すら、自分には相応しくない、弾きこなせない・・・と思ってしまいました。
まぁ、この点には色々と自分なりに思いはありますが、年をとってからKAWAIの音がなんか好きです。丸みがあって、しっとりしていて。


■ 終わりに


購入したワクワク感、幸福感は残念ながら特にありません。
ただ、
「まぁとりあえず、アコースティックピアノで練習が出来るようになるから良かったな」という感想です。
このピアノには「赤毛のアン」と名付けようとブツブツ独り言を言いながら帰路につきました。

これからの5年間は「アン」と共に練習することに決めました。
その先には、満を期してグランドピアノを迎える目標があります。
まずは、練習しよう。

毎日、ピアノと過ごす時間は本当に楽しいのは事実です。
ピアノと猫が一人暮らしの孤独を支えています。
ピアノ上達の過程は地道ですが、
私の生きている時間を記録してくれるように感じます。
次回は、「アン」について書きます。

小さい頃
TVで観ていた「赤毛のアン」

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