「食ったな?」から始まる関係人口
長引いた授業後の気怠さをおして、K先輩から誘われた「新米試食会」なるイベントに遅れてでも参加したのが事の発端であった。元来味にうるさい人間である。大層美味な米があると聞けばどんなものかと試したくなるのは自然であって、慣れない街の雑居ビル、急な階段を登った先で、どこの誰とも知らぬ人間ばかりの空間に飛び込む羽目になったと悟っても、私はもう引き返すわけにはいかないのだった。
「コロナ明け」にして満員の空間、あてがわれた先輩と離れた卓では、数粒の米を残すのみの鉄瓶だけが私を待ってい