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⑩採用ミスマッチは存在しない

発達障害疑いの後輩が半年間の紹介予定派遣として入社してきて2か月目、私は直属の上司に彼の雇用をとどまるようにお願いをした。理由は発達障害であるからではなく、業務に適していないと思ったためだ。

その当時の直属の上司 ―― 後にパワハラでチームを去る彼は、後輩のできなさを十分認識していた。遠隔地から企画書の作成や作業を後輩に依頼しており、その未熟な出来栄えに苦労していたからだ。上司は言った。

「彼ができない事は認めるが、社長面接まで通したので覆せない」

私は、その時元パワハラ上司が後輩の雇用を中止する気がないと思った。元上司は数年前から私のいる拠点に転勤願を出しており、こちらの拠点に転勤するために必要な組織構成のメンバーとして後輩が入ってきたためだ。
そのため元パワハラ上司の言葉を真に受けなかった。何度か訴えて雇用を中止したほうが会社のためだ。それぐらいに考えていた。

しかし、数年後、後輩がトラブルを起こしまくった結果、他の上司になぜ彼を採用したのか聞いてみたところ、もともと元パワハラ上司は後輩を推していなかったことが分かった。別の経験豊かな候補者を推していたとのこと。新しく採用する社員をネコ路地の上に据えようとしていたらしい。そのため、私よりも年齢が上で、元パワハラ上司の言うことを聞きそうな男性社員を入れようとしていたとのこと。

しかし、会社としては、社員年齢を下げたかったため、同時に応募していた「マネージメント経験がある」後輩を採用したとのこと。そして、その採用には技術的な確認がなされていなかった。元パワハラ上司も実務を理解していないからだった。大手飲料メーカーの業務を担当していた彼が、ブランド力でノーチェックで会社に入ってきたのだった。
そして、後輩の技能が期待値以下だと分かった紹介予定派遣中でも変えることができない元パワハラ上司。

採用ミスマッチ。一言でいうとなんて簡単。

そしてそれをなかったことにする風通しの悪さ。
そういう会社で生き残ってきた元パワハラ上司と、そのしわ寄せに困る私、私の反応に驚く後輩。

今になってみるとやや滑稽だが、大体のことは認めなければ存在しない。そんな風潮はニュースでも散見されるし、こんな身近でも起きていた。


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