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『ひそやかな花園』 角田光代

「・・・でも重要なのはそこじゃない。善きことは、その子が生まれてからじゃないと与えられない。だってその子は私たちと違う世界を生まれたときから持っていて、その世界では何がしあわせか、わからないでしょう」

『ひそやかな花園』P338

紗有美パートが一番印象に残っているけど、あえて樹里の場面からこの一文を選んだ。

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同じ境遇を抱えて、本来なら気持ちを共有できるはずなのに、それぞれ違う生き方をしてきたことで考え方も違ってくる。同じ出来事でも受け入れて前に進める人と、そうじゃない人がいる。

紗有美パートは読んでいて辛かった。今の自分に一番近い気がして、客観的に自分を見るとこんなウジウジした人間に見えるんだなと思うとモヤモヤした。

守られた場所で生きるのも一つの幸せではあると思うけど、そこに収まる自分を好きになれず、何かを求める。でも自分から刺激を得るために外に出ることはできない。まさに鏡に映った自分を見てるみたい。

だけど紗有美は、最後に自分がどうして求めているものが手に入らないのか気づくことができた。すぐには変わることはできないかも知れないけど、人は大人になっても変わる努力はできるんだと教えてくれた。

誰かと比べてしまったら自分の幸せなんてちっぽけかも知れないけど、自分の世界の幸せを見つけて生きていきたいと思えた。

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