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(たぶんお互いに)結婚相手を間違えた話
昔の私は大変にモテた。
もしかしたら自慢に聞こえるかもしれないが、ほんとうのことなので、ここは潔く言ってしまおう。大変に、は言い過ぎのような気もするが、モテたのだ。
ただし、モテ期は人生に3回あるなどと聞くが、残念ながら2回しかない。
その2回に集中しすぎだったのだ。
どうせならもっと平均的にならしてモテたかったものである。
1度目は中学生のころだった。
中学の2年・3年の2年間で10人くらいから告白されるわけだが、その頃からどうにも選択を誤ってしまう節があった。
そう、「その頃から」ここが重要だ。
しかし所詮は中学生。
今の子たちは知らんが、当時の中学生のお付き合いなんて恋愛ごっこのようなものだった。貴重な1度目をこの時期に消費したのは、今思い返すと勿体なかった。
そして選択を誤っているから、いつだって「あ、この人じゃないな」と気づき、こちらからお付き合いを解消してしまっていた。
なら受けるなよ。である。まったく失礼な話だ。
その後、女子高に進学したため、男っ気のない生活を送っていたのだが、この頃はライブハウスに入り浸りヘドバンかましているような女の子だったため、お決まりのように5歳年上のバンドマンに片思いをしていた。
ちなみにこの方とは未だに交流があるのだが、もうバンドマンではなく、立派に社長業をされている。がんばれ!社長!
高校卒業後は所謂フリーターになり、バイト先の同僚とお付き合いしたりしなかったりしたものの、職場が変わるたびに1人か2人好きになってくれる方がいた程度でモテたというほどではなかった。
そして、24歳のころである。
ここで人生最大のモテ期が到来したのだ。
23歳で最愛のミュージシャンが亡くなり、どん底で病みに病んでいた私。
少しずつ、普通に日常生活を送る「フリ」ができるようになってきた頃だった。
当時働いていた職場で、同時期に8人(だったと思う。たぶん)の方から結婚を前提にお付き合いを申し込まれた。その中に、元夫が紛れ込んでいたのである。
もうお気づきだろう。
そう、私はまたしても選択を誤ったのだ。
元夫は優しい人ではあった。私には。
希望はなんでも聞いてくれた。
でもこれは結婚して少し経ってから気づくのだが、これは別に優しさで希望を聞いてくれていたわけではなく、自分が希望を言った結果、何か問題が起きたときに「だから言ったじゃん!」などと言われるのが嫌だから全て私に丸投げしていただけだったのだ。
一事が万事、それはもう徹底して決めることから逃げていた彼。
家を買う時ですら、一度も内見をせず、すべての決定権を私に渡してきた。
当然、内見・申し込み・ローンや役所の手続きなどもすべて私一人で対応した。
彼は極度の面倒くさがりなのだ。
引き渡しの日だけはご本人様がいなければ絶対にダメです。と不動産屋さんに言われたため、渋々足を運んでいたが、あれ、放っておいたら引っ越しの日まで物件を見ないつもりだっただろう。
彼の銀行のキャッシュカードも通帳も印鑑もクレジットカードも実印も、全て私が管理をしていた。俺は稼いでくるだけ。みたいなことを言っていたが、それは、赤字になっても俺のせいじゃない。という責任逃れである。と、今なら思う。
でもこれ、結婚当初はそれがかっこいいと思っていた私にも非はあるのだ。
彼だけが悪者なわけではない。
それに、全てを私任せにしてはいたが、その代わり文句を言ったことは一度としてなかった。
まあ、文句を言ってしまって「じゃあ貴方がやって」と言われるのを恐れていたのだとは思うが。
だいたい、私は元来怠惰な人間で、決め事は相手に任せたいタイプなのだ。
あれ?これって、つまりは元夫と私は同類ということになるな。と書いていて今更ながら気が付いた。
なるほど。合わないわけである。
そうか。私は12歳年上の彼に引っ張ってもらいたかったのか。
若いころは、どの職場でもどちらかというと「強い女性」というスタンスを貫いていた私。
しかしどうやら、プライベートでは強い男性に付いていきたい派だったらしい。なんだか恥ずかしいのは何故だろうか。
いやこれ、目から鱗である。
あの頃、もっと素直に「決め事に参加して欲しい」「家事に参加して欲しい」と伝えていたら、あんな風に疲れたりせずに上手く続いていたのだろうか。
まあ、今更ではあるが。
これからの私はどうなんだろう。
今の彼は完全に引っ張ってくれるタイプだ。
付き合う時の強引さを思い出せば言わずもがなである。
でも任せっぱなしで良いのかな?
逆に、あの頃の私のような不満が彼の方に出てきはしないだろうか。とふと不安になった。
私もあの頃よりは面の皮が厚くなったので、ここは素直に聞いてみようか。
ちなみに元夫は再婚はせず、今は体調を崩しているらしい。
どうやら、離婚後アル中になったらしいのだ。
共通の知り合いには、お前に捨てられて病んだ。などと言われた。
確かに一方的に離婚を切り出したのは私だが、それを私のせいにされても困るというものだ。知ったこっちゃない、というのが本音である。
ただ、一度はともに生きた人である。
できれば健康で幸せではいてもらいたい。
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