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奥手な長毛サビ猫の「ショコラ」。保護猫の心を解かした“距離感”の秘密

「多様性の時代」なんて何かにつけて言われる。会社の飲み会の誘いに「すみません。先約があって...…」と断れば、「いいと思いますよ!個人の自由ですし」と“全然よくなさそう”に返される。

“全然よくなさそう”に感じるのは、その人が、心から私の意思を尊重してくれてると感じられないからだと思う。そういうのが、ちょっとした言動を通して表にでて、その結果私に伝わってくる。

一方で、保護猫のショコラのインタビューを通して、「心から意思の尊重を受ける」という行為の一端を知った気がした。ショコラのお世話をするボランティアの方々とショコラとの関係を通して、人間関係を築くコツも学べる気がする。

養鶏場で保護された、長毛サビ猫の「ショコラ」

ーー 今回は、てんしんらんまんな★ラッキー(以下、ラッキー)にいるショコラの話をいろいろ聞いていってもいいですか?

ある養鶏場が廃業して取り壊しになってしまうときに、住み着いていた猫たちに餌やりしてた方から「このコたちをなんとかしたい」と相談を受けました。

養鶏場にいた猫たちはラッキーで保護して――その時はショコラ以外にも長毛の子が多かったです。

ショコラは触らせてくれはするんですけど、ショコラ自身からあんまり寄っていかないので、まだこのシェルターで暮らしていますね。

ちなみにショコラはですね、真っ黒に見えるんですが、こう見えて黒猫ではなくサビ猫です。

黒猫に見えるけど実は"サビ猫"

ーー ほんとうだ!実は僕、ショコラのバディ*です(笑)。

そうなんですね!推してくださり、ありがとうございます!
バディ*:neco-noteで猫と月額契約を結んだ会員

ーー ショコラはサビの長毛で、女の子ですよね。年齢は何歳ぐらいですか?

だいたいですが、たぶん3〜4歳ぐらい。いってても5歳くらいなのかなと思います。

あ!触らせてはくれるんですよ。こんな感じで。

ーー 全然喜んでなさそう...…(笑)。

嫌なんですよね。毛玉ができてるから取りたいんだけど「やめろ!」って感じで(笑)。

ーー 舌をペロペロさせてて、緊張が伝わってきますね。

ちょっと奥手な女のコ

ーー ショコラはどんな女の子なのか聞かせてもらってもいいですか?性格とか。

ショコラはいつも押入れの中によく居るような、おとなしい子ですね。爪研ぎとかボランティアさん手作りのハウスにも。

キャットタワーや家具に登って、上の方に潜んでいる感じで……。そんなに自分からぐいぐい来るタイプではないですね。

ーー ちょっと“奥手”な感じのね。人間も、触らせてはくれるんですね。

一応触らせてはくれますね。ちょっと触りづらいんですけど、触れてしまえば諦めるというか(笑)。

長毛だから、本当は毛玉を頻繁に取ってあげたいんですけどね。

ちゃんとブラッシングしないと、夏は長毛が薄くなるんです。保護された最初の年の夏はしょぼっしょぼになっちゃって。「どうしたの...…?」みたいな(笑)。

ちゃんとケアしたので、今年の夏は結構いい感じに過ごせました。栄養状態の問題なのかなとは思うんですけど。

ーー ご飯はよく食べるんですか?

よく食べますね!

ーー その言い方だと結構がっつくタイプ?(笑)。

ショコラと一緒の部屋で過ごす他の猫たちが、ご飯が大好きで。だから「早く食べないとご飯がなくなっちゃう!」と、ショコラも必死で食べるみたいな(笑)。

ーー もうなんかショコラは早くどっか行ってくれって顔してますね。ご飯ガッツキメンバーとかとの関係性はどんな感じですか?

なんか、つかず離れずって感じ?いい感じに他の猫ともこの部屋にいますね。この部屋にいる4匹の猫たちは仲良しですね。

隣が同じく保護猫のベンツの部屋なんです。で、猫のお世話してる間にその部屋を解放してると、ショコラも探検しに来るので、意外と好奇心旺盛ですね。

ーー なんだと!こう見えて?!

猫同士だと仲良くできるタイプだと思いますよ(笑)。

ボランティアさんと一緒に解けて、解かされて

ーー 人間はちょっとまだお断りだけどみたいな?

「人間は一定の距離を保ってね」って感じで(笑)。

ーー まあそうだよね〜。

でも触れるので、まだいいですね。ブラッシングはさせてくれるようになったから

次は爪切りをさせてくれるといいなって感じで。

ーー ブラッシングができるようになったんですね。

そう。ボランティアさんたちがみんな必死で毛玉を取ろうとしてくれて。

ーー すごい!ボランティアの力!

ボランティアの人がどんどんショコラの心を溶かしていくんですよね。普段の様子もよく見てくれたりして。

ここまでやると嫌なのかな?とか、これ以上いくと嫌がっちゃうよねっていうところを汲み取って、嫌なラインは避けてくれます。

あんまりやりすぎると人を見ただけで逃げちゃうようになるので……。ショコラとの距離感のとり方はみんなうまくやってくれてます。

ーー もう親じゃないですか!ボランティアの方。

みんなもそんな気分だと思いますよ。

ーー すごいね。いい環境です。

あんまり居心地よくしすぎても、ラッキーから出てくれないと困っちゃうので難しいのですが。

ーー そこは、難しいバランスですよね。

「なんだお前」って顔がまた、たまらない

ーー ちょっと話を戻しますが、ショコラの保護の経緯をあらためておしえてください。

養鶏場に住み着いていた猫たちに餌やりボランティアをしてた方からの依頼で、保護しました。

その養鶏場に住み着いてた猫は長毛の子が多かったんですけど、みんなとても外猫とは思えないキレイさで。ピカピカなんですよ。養鶏場の卵をたまにもらってたみたいで。卵は栄養満点なんですね(笑)。

ーー なるほどね。いいものというか、たまに栄養があるものを食べて育ってはいるんですね。

外猫だし、ボロボロで長毛の猫ならなおさら結構汚い子が多いかと思ってたんですが、みんなピカピカでしたね。

ーー その保護の当時の様子も少しお伺いしたいんですが、ショコラは保護当時はどんな様子だったんですか?

「ガトーは自分から捕獲機に入ってきた」と以前話しましたけど、たぶんショコラはその中でも後の方に保護されたんじゃないかな。基本的にみんな捕獲機で捕獲してるんで。

ーー エサやりさんもいて、養鶏場に寝床もあってってなると、なかなか捕獲機が大変そうなイメージですけど、どうでしたか?

エサやりさんしかご飯をあげてない状態だったので、ご飯をストップすれば捕獲器に入ってくれるって感じだったのかな、とは思いますね。

ーー 先ほどのショコラの性格からも、ショコラは先住の猫の有無は特に関係なく譲渡は進められそうなんですかね?

おそらく大丈夫だと思います。ショコラは先住の猫がいなくても問題ないし、先住の猫がいても仲良くやっていけそう。相手のペースに合わせることのできるコなんじゃないかな。たぶん、人にも猫にも一定の距離で接するタイプなのかなって思います。

ーー ならよかった!でも、子供はちょっと苦手そうというかうるさく感じそうですね。

そうですね……。ぐいぐい来られるのは嫌かもしれないですね。割とほっといてほしいタイプかも(笑)。

ーー ベタベタしなくてもいてくれるだけっていう関係も猫らしくていいかなと思いますけど、ツンデレっぽい感じもあったりしますか?

あんまりしないかな〜!そんなにじゃれに来ることもないかな..。おもちゃを見せてみても「なんだお前」って顔してます(笑)。

ーー なんかよりおしとやかな感じだね。

ちょっとお姉さんな感じですね。

幸せの白い「おひげ」で繋がって

幸せの白いおひげ

ーー そんなショコラ。小林さん的にどんな推しポイントがあったりします?

ショコラはほんと見た目がゴージャス。白い幸せのおひげが1本だけ生えてるけど。

ーー 見たいです!

幸せのおひげ、見つけてほしいですね!耳毛も長いんですよ〜!

ちょうど紅葉をバックに撮影したショコラの写真をneco-noteにアップしてたんです。それがまた絵になります。

ーー 絵になるねー!そうだよね。なんかショコラはさ、本当に絵になる猫っていう感じするよね!

そうですね。なんかほんと見てるだけで幸せを感じる。

ーー たしかに。なんかいいな〜!でも、サビ猫ってやっぱり頭がいいというか。

静かで頭がいい感じがしますね。やっぱそこはちょっと男のコとかミケ猫とは違う感じがしますね。ミケ猫はひたすら強い感じがするんですけど、サビ猫は優しいというか、静かで賢い感じがします。すべて見透かされてる感じというか。

ーー 他は怪我とか病気もないですか?エイズとか白血病は……?

そうですね。健康体です。エイズも白血病も陰性です。

ーー ではもうご縁があればすぐにでも!という感じですね。なんか単純にみんなもうちょっとゆっくり接する機会があればね...。

そうですね。里親会だけではなく、個別に興味ある方には個別対応していますので、ぜひお声掛けいただきたいですね。

卒業してほしいようなしてほしくないような気分です。ただ、このコたちの幸せを思うと卒業してもらうのが一番だと思うので。


尊重の先にある“自由”

ヒトの話であれば「十人十色」という主張をすんなり飲み込めるのに、かたや犬や猫の話になると「十匹十色」という事実がすっかり念頭から抜けてしまう人がいて不思議に思う。

「人に全然懐かなくて」「噛み癖がひどくて」「イタズラがひどくて」。そうした理由で猫との共同生活をやめる人がいる。

どれも飼い主さんにとっては大変な困りごとだと思うのだけど、そんなの人間との共生ですら同じようなことは起きる。なんなら人間の方が言葉が通じるぶんタチが悪い。冒頭の飲み会の話はほんの一例。

ここで、sympathyとempathyの話を少し挟みたい。どちらも日本語に訳すとき「共感」と訳され、ほとんど区別されることはないが厳密にはそれぞれ異なる意味合いをもつ。

“sympathy”は、「思いやりや自分を軸として相手の立場・心情に同調する」といった意味をもつ。一方で、“empathy”は「相手の立場に立ち、相手の心情や状況を理解しようとする力、あるいはその技術」といった意味合いがある。

ショコラのお世話をしているボランティアの方々は、きっとこのempathyの技術を高いレベルで有していることがインタビューからよく伝わった。

そして、「個人の自由」「多様性」「個性」そういった類のモノを心から受け入れるというのは、きっとempathyを体得し、相手を尊重して初めて達成できるんじゃないかと思う。

そうした時間をもってして得られた関係は、簡単に揺らがない。

ショコラの人間にはどこか一線引くような態度も、もしかしたらショコラなりの尊重の表現方法なのかもしれない。empathyを働かせて、ショコラのショコラなりの色を知れたなら、それを尊重し、ショコラの“自由”を守る努力ができた時が、黒色の体毛の中の一本の白いヒゲを見つけられる時だと思う。

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