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「猫の保護はしない」人や猫がつながるneconowaの“新しい活動の形”とは

「neconowa(ネコノワ)」は“保護猫の相談所”として、猫と出会った人の悩みや不安を聞いて保護猫活動のサポートをしている団体です。保護猫活動をとおして、人と人のつながりやコミュニティを作りたい――そう語るのはneconowa代表の本谷(もとや)さん。

「保護猫活動」と聞くと、猫を保護して治療やお世話をし、飼い主を探すことを想像する方も多いでしょう。しかし、neconowaは猫を保護することはせず、保護猫相談所として地域の交流を活性化させ、人と人のつながりをつくっているといいます。

今回は、neconowaをつくったきっかけや、保護猫活動で大切にしている考え方をお伺いしました。

保護猫活動のあり方に違和感を覚える

―― neconowaの活動について、簡単に教えてください。

neconowaは、主に茨城県水戸市で"保護猫相談所”として、猫を保護した方にアドバイスやノウハウを提供している団体です。

たとえば「猫を助けたくて保護したけど、どうしたらいいかわからない……」という人に対して、保護猫団体に丸投げするのではなく、個人でできる取り組みをお伝えしています。

また、どうしてもというときに限って、子猫のミルクボランティア活動などを地域の小学生やボランティアさんと一緒に行なっています。

―― 直接猫を助けるのではなく、猫を保護した人をサポートしているんですね。本谷さんがneconowaを始めたきっかけは、何だったのでしょうか?

過去に、うつ病を患ったことがあったんです。会社を休職していた時期に「何もしていない」「誰ともつながっていない」ことが恥ずかしかったし、すごく罪悪感もあって……。

何かできることをしたいと思ったとき、小さいころから猫が友達なくらい猫好きだったこともあり、預かりボランティア(※)に足を踏み出したんです。それから会社に復帰して、預かっていた猫も私が飼うことになったので、ボランティアは終了しました。

預かりボランティアとは🐈
保護猫団体から猫を預かり、譲渡先が見つかるまで一緒に暮らす人たちのこと

参考:「犬猫の“里親”になる。フォスターとつくる保護猫団体の新しいかたち」

それから約3年後、ジモティーで保護猫カフェをやりたいという呼びかけを見てお手伝いしたことがきっかけで、もう一度ボランティア活動を始めました。保護猫活動に関わるなかで「この活動のあり方は違うな」と思うことが多々あったんです。

―― どういう点で、違和感を覚えたのでしょうか?

一番は「猫でビジネスをしようとしている」ところですね。ビジネスが悪いというわけではありませんが、1匹30〜40万円で永年預かりするというような、売買に近い形をとっていることもあって。

そのときに、私は「ビジネス目的で保護猫活動をしているわけではない」と気づいたんです。今後のボランティアの形を考えたとき、保護した人が責任を持つという意識が低いことを問題視していたのもあり、保護猫活動をサポートするほうにシフトしました。

―― 現場で保護活動をしている方々の負担が大きい、という話はよく聞きますね…。

そうなんです。保護主から「ボランティアをやりたい人が保護すればいい」という言葉が出てくるレベルなんですよね。でも猫を保護したのは私たちではないし、助けたくて保護していると思うので「命の丸投げはしないでください」と、お伝えさせていただいています。

neconowaでは預かれないけど、保護主の方と関係が終わる形もとりたくなかったので、相談所として長く細くサポートさせていただく形をとっています。

“ラフな保護猫活動”をテーマに掲げる

―― 本谷さんが猫の相談を受けるときに気をつけていることはありますか?

「私たちは経験値が豊富で、私たちの言うことは正しいので、いうことを聞いてください」みたいな言葉を使う“ネコボラマウント”だけは、とらないように意識しています。

私自身も過去にちょっと嫌な思いをしたことがあったんです(笑)。無理のない範囲でラフに活動できるのがいいと思っているので、押し付けにならないように注意しています。

ボランティアのハードルが高すぎて「保護猫の活動に関わっちゃいけないんだ」と思われてしまうと、貴重な仲間を手放すことになるし、もったいないと思うんですよね。

―― 一方的に価値観を押しつけて関わる相手を選別するのではなく、興味を持ってくれた方との関わり方を考えるコミュニケーションって大切ですよね。具体的にneconowaで行っている、ラフな活動の内容をお聞きしたいです。

いま小学生のボランティアが2名いるのですが、neconowaのLINEグループに入ってもらっているんです。グループLINEで保護猫活動でかかった病院代などをシェアすると「こんなにかかるの?!」とびっくりしたらしくて。

―― 子どもからすると驚く金額ですよね(笑)。

けど、LINEで保護猫にかかるリアルな金額を知ったことで、自分のお小遣いを寄付してくれたんですよ。「私は、お母さんとお父さんが食べさせてくれるから大丈夫。だからお金は寄付できる」って。

小学生ボランティア作「由’s 新聞」

―― すごい!保護猫活動がお金について学ぶ原体験になっているんですね。

私たちはたくさんの猫を救うというよりは、少数だけど人にきっかけを与えたり、保護猫に対する意識を持ったりする基盤を作る役割を担っていると思っていて。人や小さなコミュニティを育てるための投資が、ボランティアのあり方だと考えているんです。

小さいモデルケースができれば、その成功体験を活かして多くの人たちも巻き込んでいけるので。

たとえば、先日「息子が仔猫を拾ってきた」という相談が来たんです。その日はボランティアさんが空いていなかったので「今日だけ、お世話をがんばってください」とお伝えしたら、中学生の男の子が「3時間おきのミルク、がんばります」といってお世話をしてくれたみたいで。

次の日にミルクボランティアさんの手が空き、お世話をスムーズに引き継ぐことができたこともあり、猫風邪で目も開かなかった仔猫の状態もすごくよくなったんです。写真や動画を送って報告したら「僕なんかでも猫を救えた!」と、写真などをすぐに保存してたらしくて(笑)。

―― 中学生も保護猫活動の一端を担えるんだなあ。0か100かだと思っていたんですが、複数人がステップバイステップで担っていけば、猫の保護に参加するハードルがとても下がりそうですね…!

はい。それが“ラフな保護活動”のあり方だと思っています。私自身、猫に救われたところがあるので、他にも救われる人がきっといるだろうし、猫も生きやすくなるだろうし。

保護数や活動規模が大きい団体もありますが、小さな個人ボランティアや少人数のチームの形での保護猫活動だからこその臨機応変さやスピード感でできることがあります。そういった活動を通して、人や街を育てていきたいと考えています。

―― レベルの高い保護猫活動が求められることも多いなかで、neconowaは無理のない活動をしているのが面白さであり、強みだと感じました。ありがとうございました!

🐈 🌱

neconowaは猫の保護を目的にするのではなく、保護猫活動をとおして人々に学びやつながりを提供する新しい活動のあり方を見出しています。

「猫の保護=ハードルが高い」と思われがちですが、1人がすべてを抱え込むのではなく、地域のコミュニティで分担して活動していることで“ラフ”に楽しく猫助けをしているneconowa。

猫に救われたところがあるから、他にも救われる人がきっといる――そう語る本谷さんの活動は、猫にも人にも優しい地域づくりの一端を担っていると感じました。


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