見出し画像

ひねくれマスコット講座 ~可愛いだけじゃあ、ないんだぜ~

1.2月はマスコット強化月間です

 突然ですが、選挙、行かれましたか?

 ひょっとするとこの場合は、「投票しましたか?」とお伺いするほうが正しいかもしれません。

 お察しの通り、この「選挙」とは、衆参両院のそれや、地方統一選ではありません。そうです、春の奇祭、「Jリーグマスコット総選挙」の季節がやって参りました。

 マスコット総選挙とは、2013年より開催されている、マスコットたちの人気投票です。今年は過去最多55体のマスコットが、「センター」の座を目指し、しのぎを削ります。

 10年ほど前、インターネットミームとして流行した「選挙、選挙、明るい選挙~♪」という歌がありましたが、このような投票行動を促す歌が作られるほど、「選挙」とは重要なイベントです。憲法において「国民主権」の原則を定めている日本において、選挙に行って票を投じることは、国民として果たさなければならない義務なのです。

 (「明るい選挙」の歌がわからない方は、親御さんに聞くか、Youtubeなどで「明るい選挙」と検索してみてください。しばらく頭から離れなくなります。)


 極論を言ってしまえば、選挙というのは会場に行って票を投じれば、それで全てが終わります。しかし、票を投じるためには、判断基準が必要です。ここに、選挙というイベントの重要な側面があります。「我々一般市民が、政治について考えるきっかけを与えられる。」という意義です。

 常日頃より国会中継を見ながらこの国の未来を考えている――そんな人は、そう多くないでしょう。しかし選挙というイベント、言い換えると「どの候補者/党」に投票しようかを考えることによって、我々は否が応でも、この国の未来を考えるきっかけを与えられているのです。


 さらに噛み砕いて話をしましょう。選挙というイベントがあることで、我々はポップに「政治」というテーマについて語らうことができます。

 代表的なものとして、テレビ東京系列の選挙特番において「池上無双」と称される、池上彰氏の解説が挙げられます。この番組では「政治」というお堅いテーマを扱っているはずなのに、当選者紹介テロップに「好きな食べ物:ぶり大根」「米は大のあきたこまち派」などと書かれることで、いわゆる「お堅さ」が取り払われているのです

 「お堅さ」のベールが剥がれると、政治家の先生の話し方、考え方、さらには人柄、パーソナリティにまで目が向くことになります。その瞬間、テレビに映っている無機質な「政治家」という人物は、その「人柄」という新たな文脈をまといます。その経験を通して私たちは、普段興味を持つことのない「政治」というイベントに、肩の力を抜いて向き合うことができます


 気づけばマスコットの話から、大幅に硬派な話になってしまいました。そろそろパーキングエリアを出ましょう。本線に戻ります。


 最近では、イベントそのものの意義に対して賛否が寄せられている「マスコット総選挙」も、本当に大切なことは、我々の投票行動そのものや、その結果得られる順位ではありません。

 具体名は出しませんが、マスコット総選挙の結果で「順位が○○位より下であれば(ネガティブな罰ゲーム)をやらせます。」という、罰的な目標設定を与えるクラブが、過去にはいくつか見受けられました。

 しかし私は、そのやり方をあまり好みません。マスコット総選挙が、議員の選挙と決定的に異なる点は、結果がさほど重要ではないというところ。そこに無理やり意味を持たせるというのは、少々近視眼的なように思えます。

 このイベントの意義は、普段はサッカーというドラマの脇役にすぎないマスコットという存在が、主役になれるということ、その一点に尽きると思います。「選挙運動」を口実に、マスコットに活動のきっかけを与えていること。それこそがまさに、このイベントの肝なのだと思うのです。


2.「ワンクラブマン」からの脱却

 恐縮ですが、少しばかり私の話をします。

 そもそも私が今このようにして、文章を書いたり、様々なクラブのサポーターの友人がいたり、各地に遠征するほど熱心なサポーターになったりしているのは、ひとえにマスコットのおかげなのです。

 ここより先の内容は、旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌「OWL magazine」購読者向けの有料コンテンツとなります。月額700円(税込)で、2019年2月以降のバックナンバーも含め、基本的に全ての記事が読み放題でお楽しみ頂けます。ご興味のある方は、ぜひ購読頂ければ幸いです。

ここから先は

4,548字 / 6画像
スポーツと旅を通じて人の繋がりが生まれ、人の繋がりによって、新たな旅が生まれていきます。旅を消費するのではなく旅によって価値を生み出していくことを目指したマガジンです。 毎月15〜20本の記事を更新しています。寄稿も随時受け付けています。

サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?