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Akzidenz Grotesk(最後の鋳造)を購入した話

ドイツの活字鋳造所が廃業

以前に訪問したドイツの活字鋳造所=Gerstenberg(ゲルステンベルグ)活字鋳造所が、鋳造工さん(ゲルステンベルグさん)が高齢のため、廃業するとの話を聞きました。日本でも同じように活版印刷関連会社の廃業・引き継ぎ問題が起こっていて「世界中どこも似た状況だぁ」と嘆きつつも、うだうだ言っても仕方がないので、最後にとStempel Garamond(ステンペル・ギャラモン)を購入していました。

もうこれで新しい鋳造の活字は購入できないなぁと思っていたら、ふとtwitterで流れてきた投稿に遭遇。

ドイツの活字研究家の人の投稿。ありがとうtwitter。海外の情報がリアルタイムでみれる。すごい。しかもゲルステンベルグで鋳造していると書いてある。

ゲルステンベルグはステンペル社を後継した鋳造所。Akzidenz Groteskはベルトルド社のものです(もともとは違う会社のものですが、それはさておき)。同じドイツとはいえ、ステンペルになぜAkzidenz Groteskが??? ゲルステンベルグは、クリングシュポール活字鋳造所など他の鋳造所が廃業する際に母型を受け継いだ話は聞いていましたが、ベルトルド社の話は一切でてこなかったので、問い合わせてみると、

H. Berthold AGの母型はライプチヒの印刷博物館(Museum für Druckkunst Leipzig)にあり、母型をレンタルしてGerstenbergで鋳造しています。

なんと! 母型のレンタル! 日本ではない発想! 
もしかすると鋳造できるところがゲルステンベルグしかないので、昔ではありえなかったことが、今だからできるようになったことなのかもしれませんが、かなり斬新。(日本でもそんなことあったのかな?)

Akzidenz Groteskは大好きな書体だし、もうゲルステンベルグさんのところでも鋳造できなくなるということもあり「これはなにかの縁、ここで買わないわけにはいかないでしょう!」ということで無理言って引退前の最後の最後で鋳造をお願いしました。

さぁ鋳造 と、その前に問題発生!

実際に話しをすすめていくと、イレギュラー対応なのでいろいろと問題が発生

母型が傷んでいたり、なくなったりしていて、サイズ、ウェイトによって完全版のAkzidenz-Groteskのストックがありません。

ここらへんがデジタルフォントではありえない話です。さらに

母型を借りることは複雑で料金がかかります。またゲルステンベルクさんはワークロードの限界にきています。正確に注文しなければいけません。

なるほど、なるほど。
フォントスキーム(Aとかaの量)や、購入したいサイズ、ウェイトの状況を確認。購入したかったけれど、完全版の母型がなく鋳造できないものもあり(涙)、注文内容を詰めていきました。
さらにすすめていくと

Akzidenz-Grotesk Roman Bold 10 pt は、kleines Bild と großes Bild があります。

?? 何? ドイツ語わからん。

おおよそは、小さいフィギュアと大きいフィギュア(小さい文字と大きい文字)という意味です。

あぁ! なるほど! x-hight違いがあるのか! すごい。
とはいえ、デジタル版のAkzidenz Groteskでそんなこと見たことない・・・。ということで古いベルトルド社の見本帳を調べてみる

あった!! ほんとだ10ptが2種類ある!!!

これだけみても金属活字の豊かさがわかる。10ptは本文用として広く使われていたのだということもわかりますし、2種類つくるだけのニーズもあったんだと思います。特にドイツ語は単語の文字数が多い言語なので、より詰めて組みたいということもあったのかと思います。2種類あることはゲルステンベルグさんもご存知なかったとのこと(マニアック!)。見本帳を見る限りデジタル化されているものはx-hightが高いgroßes Bildがベースになっているようです。
本当は「両方買いたい!」とは思いつつも予算的に断念。。。(母型のレンタル料と活字の日本への配送料がえぐい)

あとはドイツ語用の文字などキャラクターをどうするのかを相談

この表だけで貴重だよなぁ。こうして21世紀にメールでやりとりして、実際に金属活字が購入できるってすごいことです。それがもうできなくなるなんて、、、寂しい限り、、、

ドイツから活字が到着!

ということでどうにか鋳造が完了し発送。1週間程度ですぐに到着。DHL早やすぎ。

このあたりの海外の配送物ってなんか味があっていいですよね。

しっかり&なかなかワイルドな梱包

荷解きすると、

でてきたー。わかっていたとはいえまぁまぁのボリュームです、、、

ということで、いざ開封の儀!

今回鋳造できた最大サイズ60pt。でかい、重い!

Akzidenz Groteskといえば、このストレートレッグのR。だいすき。

金属活字は、あたりまえっちゃあたりまえですが、サイズごとに活字が必要になります。こう見るとフォントのもともとの意味「活字の書体・サイズのひと揃え=フォント」ということがよくわかります。

みっちり。ほんとはここまで大きいフォントスキームは必要ないんですが、ゲルステンベルグさんのところでは小さいフォントスキームはないそうで、必ずこのボリュームになると。そのあたりもドイツの組版を基準にしてるんでしょうね。

このままだと使いにくいので活字棚にいれないといけないのですが、ちょっと前に棚も購入してます。これは日本のアンティークショップで購入。ベルギー・ブリュッセルのVAN LOEY-NOURIという鋳造所のもの。

とはいえ、棚も購入後ほったらかしなので、掃除するところからしないといけない(そんな時間あるのか?)

さぁ、これで何を刷ろうかなー。わくわく。


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