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新たな価値を創発する

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今月は中島が投稿致します。

前回(7月)の投稿では、「経営チームをつくる」ということをテーマにしました。少し唐突感があったかもしれませんが、私がお伝えしたかったのは、「失われた30年」では「日本企業に何が起こっていたのか」を分析した上で同じ轍を踏まぬよう、そして、これからより一層多様化を極める経営課題に立ち向かえるようにするためには、「経営チームをつくる」ことが必要なのではないか、という投げかけでした。

現に「経営幹部を何とかしたい」というご相談は増えていますし、そのことをテーマにしたプロジェクトが、ここ最近増えてきています。ですから、この「経営チームをつくる」というテーマをもう少し深掘りしていきたいと思います。

あくまでも「経営チームをつくる」のは手段です。
これからの時代、経営チームをつくって一体何をすればいいのでしょうか?

それは、「新たな価値を創発する活動に挑む」ということです。

というのも、これまでのコンサル経験から企業の新たな価値を生み出す力が弱まっているのではないかと感じます。

かつての右肩上がりの時代は、内需拡大で成長する時代でした。前年うまくいったことを繰り返していけば売上が伸びる時代でした。そんな時代を経てきた後遺症として、「前例踏襲」「前年踏襲」がはびこり、組織の思考停止状態を引き起こしてしまったのではないでしょうか。その結果、企業の新たな価値を生み出す力が弱まってしまったと感じるのです。

今回は会社組織が思考停止状態からどう抜け出し、新たな価値を創発する活動へ挑んでいけばいいのか、ということについて考えてみたいと思います。

思考停止の症状

組織OSをアップデートするプロジェクトを長年経験していきました。プロジェクトを実施していると様々なところで、「前例踏襲」「前年踏襲」に出くわします。その最たるものが「前年実績に基づく、無難な目標設定」です。例えば、「今年度の売上予算は、前年度実績の5%アップ」というようなケースです。

このような場合、目標値の意味を訊ねても、「これまでもそうしてきたから」、「まあ、こんなもんかなと思いまして」という回答が返ってくることが多いのです。これはまさに思考停止状態と言えるでしょう。というか、そもそも思考を働かせようとしていない、という表現の方が適切かもしれません。

この他にも症状はさまざまあるでしょうが、このように思考停止状態に陥ってしまっている組織は少なくないように感じます。こうなってしまうと、もはや簡単には抜け出せない状態と言っても過言ではないでしょう。

思考停止状態から脱却するには?

では思考停止状態から脱却するにはどうすればいいのでしょうか?

思考停止状態なので、思考を働かせるようなきっかけをつくる必要があります。そのきっかけが、「お客様に提供する価値」に目を向けさせること、です。以下の図を使って説明したいと思います。

これはビジネスの仕組みを表した図です。とても基本的なことですが、「お客様に価値を提供し、そしてお客様がその対価を支払う」ということを表しています。

ですから、企業として一番大切なのは、「お客様に価値を提供する」部分であり、その価値を絶えず高めることなのです。

対価(売上や利益)を得ることはあくまでも結果であり、その結果を得るためには相手に価値を提供する、という原因づくりが必要です。売上や利益等の数字(結果)にばかり目が向き、原因づくりを怠ると、痛い目を見ます。というのも、提供している製品・サービスの価値が高まっていないからです。世の中には競合他社もいますから、もしかすると相対的に価値が落ちていることも少なくないでしょう。

いわゆるこれこそが「茹でガエル」状態です。気がついた時には「業績が下降の一途」なんてこともあり得ます。

そうならない為にも、お客様に提供している価値をどう高めればいいのか? そこに、思考を働かせるよう仕向けていきます。

さて、皆さんの会社では、この価値を高める活動がどのくらいできているでしょうか? どれくらい思考を働かせることができているでしょうか?

是非、自社や自部門が提供している価値を高められているのかを今すぐ点検してみることをおすすめします。もし、そのような取り組みに至っていないということであれば、外部の力を使うのも一つの手ですので、弊社にお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

新たな価値を創発するには?

そして、この「提供している価値を高める」取り組みについて、「既存製品・サービスの価値を高める」取り組みから「新たな価値を創発する」取り組みへ昇華させていくには、段階を踏んで活動していくことが大切です。「アンゾフの成長マトリクス」というイゴール・アンゾフ氏が提唱した事業拡大の戦略を模索するフレームワークを活用して説明してみたいと思います。

このフレームワークについて簡単に説明しますと、4つの成長戦略があります。

1つ目の既存製品×既存市場は「市場浸透戦略」と呼ばれています。今までの市場に、既存の製品やサービスを投入して、売上高や市場シェアの拡大を目指す戦略です。

2つ目の新規製品×既存市場は、「新製品開発戦略」と呼ばれています。今までの市場に、新しい製品やサービスを投入して、売上を拡大しようとする戦略です。

3つ目の既存製品×新規市場は、「新市場開拓戦略」と呼ばれるものです。既存の製品やサービスを新しい市場に投入して、売上高や市場シェアの拡大を目指す戦略です。

4つ目の新規製品×新規市場が「多角化戦略」です。新しい市場に新しい製品やサービスを投入する戦略です。

これまでプロジェクトを行ってきた経験から新たな価値を創発できていない企業は1つ目の戦略のボックスつまり「既存製品×既存市場」の中に留まってしまっていました。もっと言うなら、既存市場全体に既存製品を浸透させようとしている(新規顧客開拓をしている)ならまだ良く、既存製品を既存顧客へ販売する活動に留まってしまっている企業さえありました。これで良しとしてしまっていては、企業は確実に衰退の一途を辿るでしょう。

では一体どうすればいいのでしょうか?

まずは、1つ目のボックスから出ようとすることです。つまり、新製品開発(2つ目)なのか、新市場開拓(3つ目)なのか、またはその両方なのか、いずれかへ向かうような取り組みを推進するようにします。しかし、それは簡単なことではありません。現場だけに任せておいてもまず進まないでしょう。

ですからこれは経営チームとして取り組む必要があります。というのも、自社の将来にはどういう製品・サービスが必要なのか? どういう市場へ入り込んでいく必要があるのか? を会社の将来を見据え、全社視点で考える必要があるからです。

そこでセクショナリズムが存在するようでもやはりうまくいきません。それらの状況を打破するためにも、経営陣が一丸となって前へ進んでいく必要があるのです。それが「経営チームをつくる」ことを推奨している所以でもあります。

最後に

さて、今回もいかがでしたでしょうか。

一度、思考停止状態に陥ってしまった企業が新たな価値を創発していくことはそう簡単なことでありません。多くの企業が苦しんでいる症状のようにも感じます。だからこそ、それを社員に任せるのではなく、経営幹部自ら新たな価値の創発に挑んでいく必要があると感じます。

そして、その為には、経営幹部の皆さんが今の自分の仕事に対して、強い責任感を持っていらっしゃるのは間違えないでしょうが、それに満足することなく、自社の将来に対しても強い責任感を持ち、真の当事者になることが必要ではないでしょうか。

皆さんの会社では、新たな価値を創発するために、どんなことに挑戦しますか?

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