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【イベント開催レポート】well-beingを高めるグリーンインフラ×スマートシティのあり方とは
2025年1月24日に、IISEの進めるソートリーダーシップ活動の一環として官民共創連携HUBにて、「well-beingを高めるグリーンインフラ×スマートシティのあり方とは」に関するイベントを開催しましたので、その開催レポートをお送りします。
・主催:グリーンインフラ研究会 /一般社団法人スマートシティ社会実装コンソーシアム(グリーンインフラ×ICT WG)
・共催:内閣府SIPスマートインフラマネジメントシステムの構築e-1 「魅力的な国土・都市・地域づくりを評価するグリーンインフラに関する省庁連携基盤」
・協力:株式会社国際社会経済研究所(IISE)
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ネイチャーポジティブとスマートシティ・グリーンインフラ
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最初に、国際社会経済研究所(IISE)の篠崎裕介から、近年注目される「ネイチャーポジティブ」という概念について紹介がされました。
2022年の生物多様性COP15で採択された「昆明モントリオール生物多様性枠組み」の中で企業に自然との関係について情報開示を要請することが盛り込まれ、お金の流れをネイチャーポジティブへ変えていくトレンドが強くなっている
日本政府も「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を発表、企業が自然と調和したネイチャーポジティブ経営に移行し企業価値創造を高めるとを後押ししている
世界経済フォーラム(WEF)は、都市と自然が調和しながら発展する未来の都市モデルとして「BiodiverCities」を提唱。従来のインフラと比較してコストパフォーマンスが高いグリーンインフラを活用を強調。日本においては、国土交通省が「グリーンインフラ推進戦略2023」を策定し、グリーンインフラを推進している
用語:ネイチャーポジティブ
ネイチャーポジティブとは、「2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに完全な回復を達成する」という自然のための世界目標
スマートシティにおける緑地活用とウェルビーイング
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次に、スマートシティ社会実装コンソーシアムの土屋俊博氏から、スマートシティとウェルビーイングの関係について紹介がされました。
スマートシティの社会実装加速
全国の自治体では、デジタル技術を活用しながら住民の幸福度向上を目指す取り組みが進んでいるウェルビーイング指標の活用
地域ごとに異なる幸福度を定量化し、政策や都市開発に反映させる試みが行われている。活用されている地域幸福度指標の中で「自然景観」「自然の恵み」「環境共生」が因子として組み入れられている緑地とウェルビーイング
都市部の緑地は、住民の健康や地域コミュニティの活性化に貢献する重要な要素。渋谷区初のPark-PFI事業「北谷公園」では、地域とともに公園の使い方を考える中で、社会関係資本を豊かにするロジックモデルとデータの使い方の実現に着手している
グリーンインフラの施策動向
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続いて、国土交通省 総合政策局環境政策課 課長補佐 高森 真人 氏より、グリーンインフラ政策の動向について紹介がありました。
グリーンインフラの重要性
都市部におけるグリーンインフラの普及は、防災・減災、生物多様性保全、都市の快適性向上など、多様な効果をもたらす
2023年に発表された「グリーンインフラ推進戦略2023」では、官民連携を通じてあらゆる分野・場面でグリーンインフラを普及・ビルトインする方針が示されている
「グリーンインフラの事業・投資のすゝめ」を発表。グリーンインフラの経済効果の見える化を通じた都市開発・まちづくりにおける投資促進に資する情報を発信している
グリーンインフラの普及・ビルトインに向けて
グリーンインフラの評価
どの程度の経済的・環境的メリットがあるのかを数値化し、政策に反映させるため、内閣府SIP3「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の中のサブ課題e-1「魅力的な国土・都市・地域づくりを評価するグリーンインフラに関する省庁連携基盤」とも議論しながら検討資金調達の仕組みの整備
グリーンインフラ官民連携プラットフォームの金融部会にファイナンスチームを設置。民間資金を呼び込むための制度設計をすすめている
用語:国土交通省の「グリーンインフラ」の定義
社会資本整備や土地利用等のハード・ ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・ 都市・地域づくりを進める取組
心理学者の考えるWell-being
ここからは、内閣府SIP3「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の中のサブ課題e-1「魅力的な国土・都市・地域づくりを評価するグリーンインフラに関する省庁連携基盤」において、グリーンインフラとWell-beingの関係について研究を行っているお二人から心理学者の視点からウェルビーイングについて掘り下げました。
ウェルビーイングの理論と概念
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神戸大学 国際人間科学部 助教 打田 篤彦 氏は、Well-beingの基本概念と理論について説明しました。心理学では、Well-beingには ヘドニア(Hedonia) と ユーダイモニア(Eudaimonia) の二つの側面があるとされています。
ヘドニア: 瞬間的な快楽やポジティブな感情(例えば、美味しい食事や楽しい会話)
ユーダイモニア: 長期的な人生の充実感や意味の追求(例えば、社会貢献や達成感)
打田先生は、「Well-beingを高めるためには、この二つのバランスが重要だ」と強調しました。また、WHO(世界保健機関)の定義を紹介し、「健康とは単なる病気の不在ではなく、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指す」と説明しました。
さらに、Well-beingのレベルは、人生の出来事によって一時的に上下するものの、長期的には元の水準に戻る傾向がある、という「セットポイント理論」があることを指摘しました。
また、Easterlinのパラドックスでは、経済成長と主観的幸福感は必ずしも比例しないことが指摘されています。経済と幸福の関係は国よってコスパがかなり違い、太い線よりも下に位置づいている国は、コスパが悪いとも言えます。
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縦軸は主観的幸福度、横軸は一人あたりGDP
コスパを高めていくための手がかりとして、Legatum Prosperity Indexという国別の繁栄指数ランキングが紹介されました。日本は以下のようにSocial Capital(社会資本)が低く、日本においてWell-beingを高めていく一つのヒントになると指摘しました。
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人と環境との相互作用
最後に、well-beingについて考えていくときのモデルとして人と環境との相互作用のモデルが紹介されました。人々は、自分の周囲の文化や環境との相互作用の中で暮らしています。このときに、その中でうまく適応できているとWell-beingが高まる、と考えられます。
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ウェルビーイングの測定
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では、私たちはどのようにウェルビーイングを測っていくのか、佛教大学 教育学部 臨床心理学科 講師 箕浦 有希久 氏から紹介されました。
心理学では、幸福感を数値化するために「心理尺度」という方法が使われます。例えば、「あなたはどの程度幸せですか?」といった質問を10点満点で評価してもらうことで、主観的な幸福度を測定できます。しかし、このような質問には回答誤差がつきものです。見栄を張る人もいれば、控えめに答える人もいるため、本当に正しい数値を得るのは簡単ではありません。
そこで、心理学者は「無作為化(ランダム化)」を活用します。多くの人にアンケートを取ることと、個人の感じ方の違いについても、一つの要素を複数の異なる切り口で聞くことで誤差を打ち消し、より正確なデータを導き出します。
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一方で心理尺度は自覚的で主観的なものしか測れず、単一項目尺度は個人の査定には向かず、集団の査定しかできない、という心理尺度の限界も紹介されました。
SIP3の研究では、グリーンインフラに支えられたWell-beingの構成要素を特定し、それらをいくつかの質問で高い信頼性で測定できる総合的な尺度の開発を目指して研究を進めています。
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パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、グリーンインフラ研究会事務局/いであ株式会社の幸福 智 氏のモデレートのもと「グリーンインフラをどのように整備すれば、コストを抑えながらWell-beingを最大化できるのか?」「グリーンインフラに支えられたWell-beingの構成要素でポイントとなるものは?」「自己肯定感の低い日本に適したWell-beingの測り方はあるのか?」という問いが投げかけられ、以下のようなポイントが挙げられました。
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・都市の緑地とWell-being: 研究によると、GDPが高い国では都市の緑地がWell-being向上に寄与しますが、GDPが低い国ではそうではないというデータがあります。これは、単に緑を増やすだけでなく、人々が積極的に関わることができる仕組みが必要であることを示唆している。
・地域住民との協働: 公共の緑地を住民が管理することで、コミュニティのつながりが強まり、Well-being向上に貢献する可能性があります。例えば、アメリカのデトロイト市では、住民が荒廃した空き地の管理に関わる仕組みが良好な結果を生んでいます。
・自然への畏敬の念とレガシー動機: 我々はつい「明日までの仕事どうしよう」といった短い時間軸のことに心をとらわれてしまいがちだが、何万年かけて作られた自然景観や何百年と生きる樹木のような人間の枠を超えた自然の時間軸を意識することで生まれる畏敬の念や、自分の利益ではなく、後世の人たちのために何かを遺したいという感情(レガシー動機)、がグリーンインフラに支えられたWell-Beingのポイントとなるだろう。
・中庸の徳: SIP3の研究の中で参照しているWell-beingの考え方の視点の中に中庸の徳がある。高ければ高いほど良いということではない考え方。そこが評価されれば、東洋的な考え方において、中庸の徳が充実していると捉えられるようになるだろう。
グループディスカッション
セミナーの最後に行われたグループディスカッションでは、参加者が各話題提供を振り返り、ウェルビーイングやグリーンインフラの活用について意見交換を行いました。以下に、各グループで挙げられた主な気づきやアイデアをまとめます。
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🌿 ヘドニアとユーダイモニアの活用
ヘドニア(短期的な幸福)とユーダイモニア(長期的な充実感)の概念が印象的だった
建設業界では、ユーダイモニアを高める建築の可能性について、コンシューマー向けのビジネスでは、ヘドニアの方がビジネスと結びつきやすそうだといった議論があった
事例ベースの話ももっと聞いてみたい
🌳 グリーンインフラとウェルビーイング
ネイチャーに関する情報開示は投資家を通してお金の流れを変えていくことだ、ということ再認識した
都市の緑地整備だけでなく、木材の活用やバイオフィリックデザインの視点も聞いてみたい
📊 データ活用と評価
公園や緑地がウェルビーイングに与える影響をロジックモデルで模式化する研究が進められているとの情報が共有された
人材開発のきっかけとして、ネイチャーポジティブやグリーンインフラを活用して、その活用を高度化していけるのではないか、という議論があった
最後に
本イベントを通じて、「グリーンインフラ」と「スマートシティ」がWell-beingに与える影響について多角的に議論されました。
自然とまちの共存を目指し、グリーンインフラの推進が必要
心理学の知見を活かし、より精度の高い幸福度測定が重要
Well-beingの向上には、緑地の整備だけでなく、住民の関わりが重要
今後、官民連携を通じて、持続可能な都市づくりと幸福度の向上が両立できる社会の実現が期待されます。
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