Neurologyの臨床の幅を広げる医学書 おすすめ15選
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・脳神経内科医として経験を積み始め、さらに成長を目指すあなたへ。
専門医取得を目指す中で、臨床の視野を広げ、「neurology力」を機能拡張してくれる書籍たちをご紹介します。日々の診療に役立つ知識と洞察が詰まっており、次のステップへ進むための力強いガイドとなるでしょう。
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脳神経内科を専攻すれば、王道のような本はいくつか持っていると思います。代表的なものは過去の記事で紹介しました
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今回は、もうちょっと臨床の幅を広げるために、「ちょい足し」的なテーマで臨床に役立つ医学書を紹介します。
・脳神経内科クリニカルアップデート
まずはこちら
「Medixpost」という医師限定のコミュニティーから生まれた書籍で
主に脳神経内科医が参加しているプラットフォームで、その中で生まれた人気記事を厳選し、書籍化したものです
例えばパーキンソン病での薬剤調整など
脳神経内科医たちが自らピックアップした最新のトピックや、ピットフォールが満載なので、脳神経内科医としては関心のど真ん中的。
いわゆる「教科書」では書き切れないようなテーマや内容があるのも本書の特徴ですね。
『良い点』
・脳神経内科医にとって興味のある話題ばかり
・最新のトピックが多い
・エキスパートの経験談も多彩
【気まぐれ評価も参考に】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★★★
・通読向き:★★★★☆
・辞書向き:★★★☆☆
・コスパ :★★★★☆
(注:てんかんのパートで私も分担執筆しています)
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パーキンソン病関連
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・パーキンソン病とともに楽しく生きる
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ここからはジャンル別で紹介します
まずはパーキンソン関連ですが、1冊目は入門書としてオススメのこちら
パーキンソン病の診察って、脳神経内科ではマスト中のマスト
まずはパーキンソン病とパーキンソン症候群の鑑別を正しくできるようになる必要があり、さらにPDと診断した後の治療マネジメントも大事です
実際に、脳神経内科医がパーキンソン病を診ないことはまずないので、避けては通れないジャンルといえます。またパーキンソニズムの評価自体は神経症候学の基本でもあるので、ちゃんと整理したいところですよね。
今回紹介する本は水野先生という界隈のレジェンドの先生が患者さん向けに書かれた書籍です。結構、専門的なことも書かれているんですが患者さん向けであるため、とてもわかりやく、研修医上がりの脳神経内科なりたての先生にはちょうどいい内容で、パーキンソン関連の本質の理解に繋がります
『良いところ』
・わかりやすいし、本質的かつ専門的なことが学べる
・パーキンソン病の始めの1冊としてオススメ
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★★★☆
・専攻医に:★★★★★★★
・通読向き:★★★★★
・辞書向き:★★★☆☆
・コスパ :★★★★★
・エキスパートに学ぶパーキンソン病・パーキンソニズムQ&A
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次はこちら
京都大学のパーキンソン病グループの先生方が執筆された本ですね
症例ベースに専門医の思考プロセスが学べます
2017年の発売なので、ちょっと時間はたっていますが
パーキンソン病を専門としている先生たちが、日常臨床で気をつけているチップスが豊富にあるので、とても参考になります
前述の入門書(パーキンソン病とともに生きる)などとの組み合わせで、臨床を強化できると思いますよ
ちなみにこの手のジャンルの対抗馬の書籍が2つあります
順天堂大脳神経内科ではこうしている 最新 パーキンソン病診療
パーキンソン病治療Controversy
どちらの書籍も私は持っていないので(見せてもらったことはありますが)コメントはできません。順天堂の方が2021年で、controversyが2024年の発売と新しいですね。いずれにしてもこのレベルの本の中から1冊選んでおくと良いと思います👍
・非定型パーキンソニズムー基礎と臨床ー
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次は個人的にはかなりオススメのこちら
パーキンソン病の診断においては、パーキンソン症候群の鑑別力がとても大事。変性疾患とはいえ、進行しますので早期診断が求められます。ですが病初期の鑑別が難しいこともしばしば。
またCBS、PSP、MSAなどそれらの疾患自体も決して均一ではありません
この難しさは勉強すればするほど、経験を積めば積むほど実感します
そして若手の頃は自分で診断したことがないので、とっつきにくい領域でもあるでしょう。そんな中で本書は、PD以外の臨床と基礎について過不足なく、またわかりやすくまとめています。編集の下畑先生は数々の書籍の執筆や編集をされており私もいくつか購入しておりますが、個人的には下畑先生が手がけた本の中でのナンバーワンが本書です。理由は2つ。実際に自分の臨床でかなり役立っている。また後にも先にも類書がない。オススメです。
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★☆
・通読向き:★★★☆☆
・辞書向き:★★★★★(臨床での随時の再確認にベスト)
・コスパ :★★★★☆
卒後5年くらいたって、臨床の深みをさらに求めるならマストバイ
MSA, PSP, CBSなどの鑑別に十分な自信がなければニーズにマッチします
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てんかん領域
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では次にジャンルを変えててんかん分野での書籍を紹介していきます
1冊目はこちら
・改訂2版 ねころんで読めるてんかん診療: 発作ゼロ・副作用ゼロ・不安ゼロ!
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次にジャンルを変えててんかん分野での書籍を紹介していきます
1冊目はこちら、てんかん領域の人気書籍、いわゆる『ネコてん』
寝ころんで読めるシリーズの中でもトップクラスであろう人気書籍ですね
てんかん診療に苦手医師がある先生は、一読をおすすめします
ある程度、てんかんの知識と経験があると臨床の内容としては少し物足りないかもしれませんが、中里先生の軽快なトークを楽しむこともできます。
『良い点』
・とにかくわかりやすい
・てんかんに苦手意識が強ければマストバイ
【気まぐれ評価も参考に】
・研修医に:★★★★★★★★
・専攻医に:★★★★★★
・通読向き:★★★★☆
・辞書向き:★★☆☆☆
・コスパ :★★★★☆
・PNES(心因性非てんかん発作)臨床講義
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同じく、てんかん関連で強化しておきたい分野は「心因性」です
つまり非てんかん性心因性発作(PNES)は臨床でも困ることが多いです
PNESって、脳神経内科的にはわかっているようで、あまりちゃんとわかっていなく。しかもちゃんとした本がこれまでになかったんですよね。そんな需要を見事にマッチさせたのが本書
谷口先生というPNESのエキスパートと、兼本先生という界隈のレジェンドという最強ダッグでのクロストークが主体ですが
PNESの概念など本質的なところも非専門医にもわかりやすく講義してくれていますし。文献的なデータも豊富です。脳神経内科医として一通りの研鑽を終えた段階だと、臨床力にかなり機能拡張できると思います👍
『良いところ』
・読みやすい
・PNESの概念と対処法がわかる
・精神科医以外が読むメリットがある
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★☆☆☆(精神科希望なら全然あり)
・専攻医に:★★★★☆(中堅以上にはさらにオススメ)
・通読向き:★★★★★
・辞書向き:★★★☆☆
・コスパ :★★★★☆
(注:本書は中外医学社さんから献本をいただきました)
ですが、もらっていなければ自分で確実に買っていたと思いますし
2023年発売の脳神経内科領域の書籍での個人評価としてはトップクラスです==================================
・ベッドサイドの神経の診かた 改定18版
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続いても、てんかん関連で、今度はロングセラー本
てんかんの教科書って、あるようでちゃんとなかったりします。
本書は前述のレジェンドである兼本先生の単著で、てんかん診療のバイブル的な立ち位置の書籍です。
ハンドブックですので、基本的な事項から、症例提示、薬剤選択のエッセンスまで豊富に収載。かなり分厚いのですが、5000円もしないのでコスパがかなりいいと思います。強いて言えば、兼本先生の文章は時に難解なことがあるのですが、少なくともこの書籍はかなり優しくまとめてくれています。この値段なら、てんかんを診療するあらゆる方にオススメです。
『良いところ』
・圧倒的に豊富な臨床経験に裏付けられた単著
・教科書的な知識の整理も過不足なくある
・なんと言っても安いし、コラムも面白い
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★★☆☆
・専攻医に:★★★★★
・通読向き:★★★★☆
・辞書向き:★★★★☆
・コスパ :★★★★★★★★
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・てんかん専門医ガイドブック 改訂第2版-てんかんにかかわる医師のための基本知識
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次は、若手にもオススメしたい専門書
「てんかん専門医ガイドブック」
てんかん専門医を取るために必要な本であり、関連学会が編集しています。ただ、内容としては実は基本的なところ多くて、専門医を目指している人のための本ではあるんだけど、そうじゃない脳神経内科医が読んでもかなり充実していると思います。
・発作症候
・薬剤
・各てんかん症候群のまとめ
・脳波や画像の評価
などなど、基本からアドバンスドまでしっかり記載されてあり、割と読みやすいですね。脳神経内科医である程度はキャリアを積んでいるものの「てんかんはちょっと自信ありません」という方には意外とぴったりかもしれません。 もちろん、てんかん専門医の試験を受ける方はマストバイです
『良いところ』
・発作症候学や発作分類など基本に忠実
・薬剤の情報も多くて臨床に役立つ
・かなりのボリュームですが、結構、安い
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★☆(卒後5-7年目くらいだとちょうどいい)
・通読向き:★★★☆☆
・辞書向き:★★★★★
・コスパ :★★★★☆
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・はじめての脳波トリアージ: 2ステップで意識障害に強くなる
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救急脳波を学びたいならこちら
自分で書いているのであれですが、救急系の脳波の領域で、本書より分かりやすくかつ実践的な本って多分もう出てこないと思います
『良いところ』
・知識ゼロから始められる
・脳波の細かいところは理解しなくても大丈夫だとわかる
・意識障害の脳波みたら、どういうアクションに繋げるべきかがわかる
睡眠障害や精神科領域
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3つ目のジャンルとして、睡眠障害や精神障害などから紹介します。脳神経内科医としてもカバーしておきたいが、ニッチな領域の書籍たちです
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・睡眠専門医がまじめに考える睡眠薬の本
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まずはこちら、河合真先生の本ですね
世には睡眠関連の、特に睡眠薬の使い分け的なあんちょこ本はたくさんありますが。この本はちょっと違います。
なぜかというと、タイトルにある通り『睡眠という概念について真面目に考えた上で薬をどうするか』、それがわかる本だからです。特に以下の目次の中での第2-3章が必読でした。
正直、睡眠薬の使い分けについては、ある程度の知識と経験があるので特段困っていませんでしたが、この本を読んでちゃんと理解できていなかった概念が整理でき、処方の在り方やアセスメントの幅が広がったように思います。
『良いところ』
・読みやすい、でも本質として大事なことが書かれている
・『河合節』のエッジの効いた文章が気持ちいい
・睡眠に関する臨床の幅が広がる
ついでに河合先生の本でもう一つ紹介しておきます
・24時間医学で考える脳神経内科 〜患者の1日を通して診る〜
24時間という視点で患者や病態を捉えるという新しい着眼点の本
つまり、睡眠医学の観点で「脳血管障害」、「てんかん症候群」、「認知症」、「パーキンソン病」、「不随意運動」などを新たに定義し直すというチャレンジです。ニューロパチーなどのセクションもあって「睡眠ってこんなにも関わるのか」と新しい学びが豊富でした。
正直、なくても困らない本です。ですが、読んだ人とそうでない人では臨床で差が出るでしょう。そういう類の本であり、ワンランク昇格したい方にはオススメ。
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・機能性神経障害診療ハンドブック 脳神経内科,精神科,総合診療科のギャップを埋め
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機能性神経障害(FND: functional neurological disorder)の初めての本
機能性神経障害(FND)は最近注目されているトピックで、昔でいう「ヒステリー」などの病態です。臨床ではよく「心因性」などと表現されることが多いと思います。
ちなみに、昔は神経学と精神医学は一つの学問領域だったみたいでして。20世紀になってからはそれぞれ別々に発展してきましたが、やっぱり神経学と精神医学は完全には切り離せないところがたくさんあり、そのようなボーダーラインに注目したのが本書
機能性神経障害(FND)の診断は陽性所見をとりに行くことが大事である、というのが最近のトレンドだと思いますが。その診察スキルアップにはもってこいの書籍でしょう。
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★☆(卒後5-7年目くらいだとちょうどいい)
・通読向き:★★★☆☆
・辞書向き:★★★★☆
・コスパ :★★★★★
ボリュームはかなりあるので、この値段であればお得感はありそうです。
ただ、カバーする領域が広すぎて、ちょっと中途半端に浅くなっているところもあると思いました。ここまで広くカバーするのであれば1万円以上の価格にして、清書感のある書籍にしても良かったような気がしますが。改定2版に期待を込めて。
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新書:あの症例どうなった? 専門医に紹介した不思議な発作と神経症状たち
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『脳』の問診力の強化をコンセプトとしたテキスト
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・23症例のケースシリーズをベースに
・Clinical Note:てんかん診療に強くなるためのNoteが29個
・Lecture:神経診察のミニレクチャーが18個
・コラム:てんかん関連のコラム18個
・全344ページとまあまあのボリューム
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たとえば、こんな主訴って困りませんか?
「よくわからない意識障害」
「変な動きや震え」
「なんかぼーっとしてた」
「夜中の行動異常」
「心因性との鑑別に苦慮するイベント」
「何度も繰り返す発作」
これらの重量級の主訴に対して、どうやって問診や診察を進めると効率が良いでしょうか? それを学ぶテキストを目指してみました。また本書の後半では、てんかん患者のマネジメントについても収載されています
https://note.com/nec283/n/n7a995276e489
末梢神経障害
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4つ目のジャンルとしてニューロパチーを紹介します
メジャーなテーマではあるものの意外に書籍は少ないかもしれません
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・末梢神経障害: 解剖生理から診断,治療,リハビリテーションまで
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末梢神経障害のちゃんとした本
今まで、末梢神経障害に特化したこのレベル本ってなかったんですね
かなりボリュームがありますが、13000円くらいで個人的にはコスパがかなりいいと思います。
買った当初は、ヘーっと思うことが結構ありまして、神経内科専門医を取得してもやっぱり勉強不足なところは誰でもあるもので。知らないことが多いかったですね。
・末梢神経と筋のみかた (ビジュアルガイド)
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ニューロパチーの診察においては、機能解剖は超重要
神経の機能解剖について、末梢神経と筋に特化したガイド本です。脳神経内科を目指す若手へ:必携の医学書ガイド10選でも紹介しましたが、初学者必携のアイテムだと思います。
若手のうちは、常にこれを持ち歩いて
ベッドサイドで、あるいはNCSなどの電気生理検査を行う時に
常に参照しながら覚えると良いでしょう
神経レベル、つまり神経の高位診断については、ついでに個人的なオススメがもう一つあります↓↓
整形外科医のための神経学図説
私が持っているのはこの新しい「第二版」ではなく以下の新装版(古いほう)だけなのですが、イラストが多くて、脊髄や神経根のレベル評価が学べます。外来においておくと良さそうですね。
・神経伝導検査の本
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神経伝導検査(NCS)の本はたくさんありますが、どれから入ればいいでしょうか?
まずはポケットマニュアルか筋電図ナビなどの入門書で十分だと思います。
この手の領域は、まずは最低限の知識だけ押さえて、あとは数をこなすだけ
つまり、座学だけではなかなか上達しません
ポイントは3つです
・神経診察の基本がまず大事
・電気生理の最低限の知識
・あとはひたすら数をこなし、上級医にもチェックを受ける
・神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために
こちらは最初の通読としてはハードルが高いかもしれません。ですので、まずは入門書を一つ手に取って、NCSなどの経験を積んでから購入すると効率がいいと思います
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まとめ: 結局、どれがいいのよ?
今回紹介した書籍の中から独断と偏見で3つだけ選びました
ズバリ、この3つ
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・PNES(心因性非てんかん発作)臨床講義
・非定型パーキンソニズムー基礎と臨床ー
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理由は、自分が実際に読んでみて学びが多かったこと、そして、その後に何度も見直すことが多かったという点です。
参考になりましたか?
皆さんの臨床の、特にneurology力の機能拡張になるといいですね
救急脳波を学びたいなら
脳波の知識ゼロから始められる、非専門医の先生にとって「とりあえず、最低限の脳波の知識を学びたい、意識障害のファーストタッチとしての判定ができるようになりたい」にマッチした実践型書籍
脳波判読を基本から学びたい
脳波判読の基本から応用まで
判読手順の基礎を知りたい
てんかんの診療をブラッシュアップしたい
脳波レポートを作成できるようになりたい